罪を捏造された皇子は冷酷に嗤う

AzureHaru

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隣国の末弟皇子は王弟殿下を手放さない

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第一章 傾国の面影を持つ末子
隣国――
大陸最大の帝国 ヴァルシェル帝国。

その皇帝
アレクシス・ヴァルシェル には、数多くの子供がいた。

第一皇子から始まり、皇女、皇子……
気づけば 十五人。

その 十五番目、最後の子供 が僕だった。

名前は
リュシアン・ヴァルシェル。

僕が生まれた瞬間、宮廷は一瞬静まり返ったという。

なぜなら――

僕の顔が、
かつて大陸を揺るがした美女、

「傾国の美姫」エルセリア先代皇太后

――僕の 曾祖母 に、驚くほど似ていたからだ。

その美貌は
• 王が国を傾ける
• 貴族が争う
• 戦争の原因になる

とまで言われた伝説の女性。

そしてその血を、
唯一濃く継いだのが僕だった。



第二章 守られすぎた皇子
その日から僕は――

徹底的に隠された。

誘拐を恐れた家族は
• 僕の存在を 高位貴族と軍上層部のみ に限定
• 肖像画 禁止
• 外出は 護衛数十人

という 過保護すぎる体制 を作った。

一番僕を可愛がったのは
第一皇子――

レオニード・ヴァルシェル

つまり

次期皇帝であり、僕の一番上の兄様。

兄様はよく言った。

「リュシアン、お前は帝国の宝だ」

「外の男どもに見せる気はない」

それに対し僕はいつも言う。

「兄様、それは過保護です」

すると兄様は笑う。

「まだ足りない」

――そんな家族だった。




第三章 運命の出会い
僕が 16歳 のとき。

帝国に留学してきた人物がいた。

隣国
アルヴェリア王国

その王の弟――

王弟

カイル・アルヴェリア

彼は帝国の軍学と政治を学びに来ていた。

初めて会ったのは
宮廷図書館。

背の高い金髪の青年が
書棚の前で困っていた。

「……読めない」

帝国語の古文書だった。

僕は思わず声をかけた。

「それは古語ですよ」

彼が振り返る。

その瞬間――

僕は、恋に落ちた。

そして彼もまた
驚いた顔をした。

「……君は?」

僕は微笑んだ。

「リュシアンです」

彼はしばらく僕を見つめてから言った。

「君は……危険だな」

「?」

「こんな顔をして笑う人間は、普通じゃない」

僕は笑った。

「殿下もですよ」

その日から僕たちは
よく会うようになった。




第四章 恋人
カイルは強くて、優しくて、真面目だった。

僕の兄様ともすぐ親しくなった。

そしてある日
庭園で言った。

「リュシアン」

「はい」

「君を好きになった」

僕は笑った。

「遅いですね」

「……?」

「僕は最初から好きですよ」

その日

僕たちは恋人になった。




第五章 地獄の試練
しかし――

問題は僕の家族だった。

皇帝
兄様
姉達
兄達

全員が言った。

「認めない」

カイルは真顔で聞いた。

「なぜでしょう」

兄様が答える。

「簡単だ」

「お前にリュシアンは渡せない」

その日

カイルに出された課題は

地獄だった。
• 帝国最強騎士団との模擬戦
• 帝国法の完全習得
• 魔導戦略試験
• 皇族外交試験
• 財政政策論文

そして最後。

兄様が言った。

「リュシアンを守れるか証明しろ」

カイルは即答した。

「命を賭けます」

一年後。

彼は 全て合格した。

その瞬間、兄様は深くため息をついた。

「……仕方ない」

「リュシアンを頼む」

そして

僕たちは 婚約した。




第六章 隣国の夜会
そして――

今日。

アルヴェリア王国での
初めての夜会。

婚約者として
僕は正式に紹介されるはずだった。

だが。

突然、貴族の一人が叫んだ。

「その男は浮気をしている!」

会場がざわつく。

魔道具が起動する。

空中に映像。

そこには

僕が別の男と抱き合う姿。

完全な捏造だった。

周囲の貴族が笑う。

「王弟殿下も見る目がない」

「婚約破棄だ」

「王弟妃は私でもいい」

その瞬間。

僕の腰が
強く引き寄せられた。

カイルだった。

腕が震えている。

怒りで。

「……誰だ」

声が低い。

「リュシアンを侮辱したのは」

僕はそっと彼の腕を撫でた。

「殿下」

「落ち着いて」

彼は歯を食いしばる。

僕は微笑んだ。

そして

断罪した貴族達へ向き直る。

冷たく。

ゆっくり。

言った。

「僕を断罪するということは」

会場が静まる。

「隣国の皇族を敵に回すということで」

微笑む。

「よろしいですね?」

全員が凍った。

僕は続ける。

「申し遅れました」

「僕は」

軽く礼をする。

「ヴァルシェル帝国」

「第十五皇子」

「リュシアン・ヴァルシェルです」

空気が
完全に凍る。

誰かが震える声で言った。

「……皇子?」

僕は嗤った。

「顔を知らないのも仕方ありません」

「僕は帝国でも限られた人しか知らない存在なので」

そして言った。

「ちなみに」

「今日のこの事件」

「帝国の精鋭部隊から事前報告を受けています」

会場がざわめく。

「そして」

僕は王族席を見る。

そこには
• 国王
• 王妃
• 王太子
• 第二王子

全員が
静かに見ていた。

僕は笑った。

「殿下のご家族にも」

「事前に説明済みです」

王太子がため息をついた。

「……あぁ」

「本当なら」

王妃が微笑む。

「帝国の家族がこの国ごと消すところでした」

貴族達の顔が青くなる。

僕は優しく言った。

「安心してください」

「今日は」

そして笑う。

「僕がやります」

僕の後ろで
影が動いた。

帝国の精鋭部隊。

僕は言った。

「嬉々として殿下を奪おうとした方」

「僕に舐めた態度を取った方」

ゆっくり微笑む。

「隣国流のやり方で」

「わからせて差し上げます」

そして最後に言った。

「ちなみに」

「この国の王族の方々のように」

カイルの腕に寄り添いながら

冷酷に笑った。

「僕は慈悲を持っていません」

夜会は

地獄の始まりだった。
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