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第一章
しおりを挟む◆瓦解と誓い
「……ハッ!」
冷たい石床の感触と、首筋に走る不吉な熱で意識が浮上した。
視界が晴れると、そこは薄暗い処刑場だった。周囲の喧騒が遠く感じる。
何が起きた? 僕は確か、自分の部屋で……。
「汚らわしい!」
甲高い声に顔を上げると、そこにいたのは叔母のセシリアだった。僕の父の妹だ。僕の両親が事故で急逝した後、侯爵家を乗っ取り、僕を使用人以下の扱いに貶めた張本人。
「平民の血を引くお前が、王子殿下の婚約者だなんておこがましいのよ。悪行が露見した今、その命で償いなさい!」
叔母の隣で、従兄弟のルイスがニヤニヤと醜く笑っている。僕がやったことになっている悪事の数々は、すべてこいつが仕組んだことだ。
そして、そのさらに隣。僕の婚約者であったはずの第三王子は、僕を一瞥もせず、まるでゴミを見るような目でルイスの肩を抱いていた。
記憶が急速に繋がる。両親の死、叔母夫婦の横暴、ルイスの捏造、王子の心変わり。
最後は、ルイスが第二王子と浮気した上、第二王子と共謀して王太子殿下を暗殺しようとした内容を悪役に仕立て上げた僕に全て濡れ衣を着せたのだ。
「違う……僕じゃない……っ!」
声にならない叫びは、周囲の民衆の罵声に掻き消された。彼らは真実など知りもしないくせに、僕を「悪役」として糾弾する。
「さようなら、無能なアレン」
処刑人の剣が振り下ろされる直前、僕は叔母夫婦の嘲笑、ルイスの勝利の笑み、王子の無関心、そして無知な民衆の顔を焼き付けた。
(絶対に……絶対に許さない。お前たちを、地獄に落としてやる)
強烈な憎悪が僕の魂を燃やす。
視界が真っ赤に染まり、次の瞬間、意識は深い闇へと落ちた。
◆奇跡の朝
「アレン! アレン、しっかりして!」
聞き慣れた、懐かしい声。
硬い石床ではなく、柔らかいベッドの感触。僕は飛び起きた。
「……母様?」
目の前にいたのは、死んだはずの母様だった。優雅な金髪、そして僕と同じ碧眼。
その傍らには、穏やかな笑みを浮かべた父様もいる。
「急に倒れるなんて、どうしたんだい? アレン」
「ああ、よかった。顔色が悪いわよ……」
夢か? いや、温かい。血の通った手の感触だ。
僕は泣きながら両親に抱きついた。わけも分からず驚く二人だったが、すぐに僕を優しく抱きしめ返してくれた。
周りを見渡すと、以前の叔母夫婦が連れてきた殺気立つ使用人ではなく、僕の味方をしてくれていた懐かしい顔ぶれが、涙ぐみながら僕を見守っていた。
どうやら僕は、両親が死ぬ前の時間へ戻ってきたらしい。
(今度こそ……今度こそ、僕が全員を守る)
愛する両親と、忠実な使用人たち。彼らを守り、あいつらを破滅させるためなら、僕は喜んで復讐の鬼になろう。
◆封印された絆
復讐には力が必要だ。僕一人の力では、侯爵家を虎視眈々と狙う叔母達には勝てない。
ふと、回帰前の記憶が蘇る。
僕の母様は、この国の貴族ではなかったはずだ。
「そういえば……昔、叔母様たちが『あの女の兄貴からの手紙、全部捨ててやったわ』と笑っていたっけ」
僕は父様と母様に問いかけた。
「母様。母様の……僕の叔父様に会ってみたい」
その瞬間、両親は凍りついた。
そして、母様は戸惑いながら驚くべき事を語り出した。
僕の母様は、隣国の王族だったのだ。しかも、父様との結婚は当時の隣国国王――母様の父に大反対されていた。
当時の母様には別の婚約者がいた。それも、なんとこの国の現国王だ。
この国の国王陛下は当時、側近として使えていた父様と共に婚約者であった母様に会いに行っていた。その時、国王陛下の側近だった父様に母様が惹かれた。その気持ちを母様はこの国の国王陛下に話すと、国王陛下も別に好きな人がいる事を明かした。その為に当人同士はすんなりと婚約解消を納得したが、両国の両親が大反対。
最終的に、「今後一切、母様は隣国王家と関わらないこと」、そして**「この国の国王陛下は跡継ぎを3人以上儲けること」**を条件に、渋々認められた過去がある。
だからこそ、母様は兄である隣国国王とは一切連絡が取れなかった。
「アレン、それは無理な相談だ。私たちは国境を越えられない」
父様の言葉に、僕は静かに頷くふりをした。
(いいえ。この力なら)
僕の体の中に、以前にはなかった強大な魔力が宿っている。
両親が寝静まった夜、僕は一人で中庭へ出た。回帰前には使えなかったはずの『転移魔法』。魔力を集中させ、イメージを描く。
景色が歪み――僕は隣国の王都へと降り立った。
◆真実の玉座
隣国の王都は活気に満ちていた。しかし、僕には余裕がない。
誰を頼ればいい? どうすれば王に会える?
人混みの中、誰かの肩にぶつかった。
「おっと……大丈夫かい?」
声をかけてきたのは、豪華な衣装を身にまとった銀髪の青年だった。見惚れるほど美しく、そしてどこか母様に似た雰囲気がある。
「あ、すみません。……あの、国王陛下に会うにはどうすればいいですか?」
思わず尋ねた僕に、青年は一瞬驚いた顔をした後、目を鋭くした。
「国王に? 何の用だ」
僕は迷ったが、すべてを話すことにした。回帰したことは夢物語のようだが、これまでの人生で起きたことを、すべて隠さずに話した。
青年は黙って最後まで聞き、そして冷たい表情から一転して、温かい笑みを浮かべた。
「面白い。……いいだろう、僕が会わせてやる」
青年に手を引かれ、歩き出す。周囲の兵士や貴族が、青年の顔を見て慌てて頭を下げ声をかける。
その時、僕は彼が誰だか気づいた。
僕を案内してくれたこの青年こそが、この国の皇太子であり、僕の従兄弟だったのだ。
国王陛下との謁見の間。
壇上に座る男性を見て、僕は言葉を失った。
母様と同じ髪色に瞳。しかし、その眼光は母様よりも遥かに鋭い。
「お前が……我が妹の子だと言うのは本当か?」
国王陛下が重々しい声で問いかける。
「はい」と答えたものの、僕には証明する術がない。困り果てたその時、陛下の指示で宮廷魔導師長が呼ばれた。
彼は僕を一目見るなり、驚愕に目を見開いた。
「この魔力……間違いありません。王妹殿下のご子息です」
騒つく謁見の間を無視して彼が震える声で続けた内容は次の瞬間、謁見の間を凍りつかせた。
「それと……この魔力量。我が国の建国以来、唯一記録されている、陛下と王妹殿下の曽祖母様――『聖女様』と同じレベルです。そして……時を遡る**『回帰の力』**もお持ちです」
その言葉に、国王陛下も、皇太子である従兄弟も、その場にいた誰もが硬直したのだった。
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