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第三章
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◆影の命令と王の心
全てを話し終えた僕は緊張していた身体の力を抜き息を吐き出した。
そんな僕を見ていた国王陛下は優しげな目で告げた。
「……一度、この国で体を休めるが良い」
国王陛下はそう言って、僕の頭を優しく撫でた。その手はとても温かく、僕が回帰前、両親が亡くなってから求めていた愛情そのものだった。
「でも、父様と母様が心配しています。一度帰って、無事な姿を見せたいんです」
僕がそう伝えると、陛下はふっと柔らかく笑った。
「その必要はない。私が今から、この手で妹へ手紙を書こう。お前の身の安全と、私の加護を伝える手紙だ。……久しぶりに、妹に言葉を贈れるな」
陛下が執務机に向かう姿を見て、皇太子殿下は僕の肩を軽く叩いた。
「じゃあ、僕はアレンを部屋に案内するよ。少し疲れているだろう?」
皇太子殿下に手を引かれ、僕は国王陛下の私室を後にした。
僕と皇太子殿下が去り、重厚な扉が閉まると、国王陛下の表情は一変した。
先ほどまでの優しい叔父の顔は消え失せ、冷徹な一国の主の顔がそこにあった。
「……影(シャドウ)よ」
陛下が静かに呟くと、部屋の隅にある影が揺らぎ、黒い装束に身を包んだ者が現れた。
「ここに」
「我が妹、ラウラがいる侯爵家へ急行せよ。この手紙を渡し、私がすべてを把握したと伝えろ。……そして、妹夫婦を含め、侯爵家の安全を最優先で守れ」
影は一瞬だけ訝しげな気配を見せたが、すぐに平伏した。
「御意」
影が消え去ると、部屋には再び沈黙が訪れた。
国王陛下は一人、椅子に深く腰掛け、壁に飾られた一枚の肖像画を見つめた。
そこに描かれているのは、今は亡き最愛の妻、王妃の慈愛に満ちた笑顔だった。
「……お前は、いつも言っていたな」
陛下は肖像画に向かって、悲しげに呟く。
「『大切なものは、失ってからじゃ遅いのですよ』と……。本当に、その通りだ」
陛下の碧眼から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
「まさか妹夫婦が……いや、まだ幼いあの子まで、一度は命を落とす運命だったとは……。今回は決して、何があろうとも失わん」
回帰前に起きた出来事。僕の国の国王陛下の側近であった父様と、愛した妹を殺された未来。そして悲しげで怯えた表情をしながらも、瞳の奥には相手を焼き尽くす程の憎悪をたぎらせる初めて会った甥。
その怒りと悲しみを胸に、陛下は固く拳を握りしめた。
全てを話し終えた僕は緊張していた身体の力を抜き息を吐き出した。
そんな僕を見ていた国王陛下は優しげな目で告げた。
「……一度、この国で体を休めるが良い」
国王陛下はそう言って、僕の頭を優しく撫でた。その手はとても温かく、僕が回帰前、両親が亡くなってから求めていた愛情そのものだった。
「でも、父様と母様が心配しています。一度帰って、無事な姿を見せたいんです」
僕がそう伝えると、陛下はふっと柔らかく笑った。
「その必要はない。私が今から、この手で妹へ手紙を書こう。お前の身の安全と、私の加護を伝える手紙だ。……久しぶりに、妹に言葉を贈れるな」
陛下が執務机に向かう姿を見て、皇太子殿下は僕の肩を軽く叩いた。
「じゃあ、僕はアレンを部屋に案内するよ。少し疲れているだろう?」
皇太子殿下に手を引かれ、僕は国王陛下の私室を後にした。
僕と皇太子殿下が去り、重厚な扉が閉まると、国王陛下の表情は一変した。
先ほどまでの優しい叔父の顔は消え失せ、冷徹な一国の主の顔がそこにあった。
「……影(シャドウ)よ」
陛下が静かに呟くと、部屋の隅にある影が揺らぎ、黒い装束に身を包んだ者が現れた。
「ここに」
「我が妹、ラウラがいる侯爵家へ急行せよ。この手紙を渡し、私がすべてを把握したと伝えろ。……そして、妹夫婦を含め、侯爵家の安全を最優先で守れ」
影は一瞬だけ訝しげな気配を見せたが、すぐに平伏した。
「御意」
影が消え去ると、部屋には再び沈黙が訪れた。
国王陛下は一人、椅子に深く腰掛け、壁に飾られた一枚の肖像画を見つめた。
そこに描かれているのは、今は亡き最愛の妻、王妃の慈愛に満ちた笑顔だった。
「……お前は、いつも言っていたな」
陛下は肖像画に向かって、悲しげに呟く。
「『大切なものは、失ってからじゃ遅いのですよ』と……。本当に、その通りだ」
陛下の碧眼から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
「まさか妹夫婦が……いや、まだ幼いあの子まで、一度は命を落とす運命だったとは……。今回は決して、何があろうとも失わん」
回帰前に起きた出来事。僕の国の国王陛下の側近であった父様と、愛した妹を殺された未来。そして悲しげで怯えた表情をしながらも、瞳の奥には相手を焼き尽くす程の憎悪をたぎらせる初めて会った甥。
その怒りと悲しみを胸に、陛下は固く拳を握りしめた。
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