異世界で『索敵』スキルが最強なの? お前らの悪事は丸っと全てお見通しだ!

花咲一樹

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第四章(最終章)

第58話 超古代神話未来予言説

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 俺達が宇宙に行くのは明日の朝7時を予定している。今夜はある種の決起集会が行われた。ナイトウィングス全員及び国王様を始めとする関係者が大広間に集まっている。

「既に知っておる者も多いと思うが、今この国、この世界に未曾有の危機が迫っておる。わしらには想像さえ付かない宇宙からの大天災じゃ。最悪な時はこの世界の全ての生き物が絶滅するだろう」
「いえ、国王様」

 国王の隣に俺がいて、その俺の隣にいた新藤君が口を挟んだ。

「いえ、国王様。この星、地球が無くなる可能性も有ります。まずあれの本体が天体であった場合、衝突あるいはニアミスでも地球はただでは済まない筈です。更にはあの宇宙の黒雲の成分です。現在は不明ですが、あの黒雲に地球が呑まれた場合、生物が生きていられる保証は何処にも有りません」
「………」

「今、私達には手札がほとんど有りません。情報が少ないからです。よって私達は宇宙、可能であればあの黒雲に迄行き、正体を知る必要が有ります」
「正体が分からなかった場合はどうするんだ」

 貴族の1人が質問をした。

「私達がいた世界の最強最悪な兵器、核ミサイルを作り迎え撃ちます。私達はその為にこの世界に来た……可能性が有ります」

 場内が静まり帰る中、俺が口を開く。

「……いや、核ミサイルは使わない。有れはこの世界に合ってはいけない物だ」
「しかし、光斗……」
「分かってる。俺達が未来の地球に飛ばさた理由の1つが核ミサイルだって事は……」

「えっ、未来の地球!」「……未来」「未来の地球?」

 みんながザワ付き出す。

「ライト様、どういう事ですか?」

 アルフィーナ王女に合わせるかのように中川君も

「光斗!どういう事だ!」
「おかしいと思わなかった?1日が24時間、12×2なんだよ」
「普通にご都合設定かと」

 俺も最初はそう思ったけどね(苦笑)

「1日12時間×2が始まったのは古代エジプトの日時計と12進法から出来ているって事なんだけど、この国はいやこの世界の多くの国が10進法だから時間は10刻みでもいいはずだけど12だ」

「他にもご都合設定が有る」

 如月君が俺に続いた。

「この世界でも1時間を60分、1分は60秒ってプトレマイオスいたの?って感じだし」

 更に新藤君が続いて

「極めつけは暦だな。1年が12ヶ月はいいとして1月が……」

 俺と如月君も声を揃え

「「「1月が春じゃ無い!」」」
「流石に此れは無いだろう。普通に考えれば春を1月だ。しかし、この世界の春は俺達の世界と同じ3月ってあり得ない。現世ではシーザーが1月をJanuaryにしたから1月だった春のMarchが3月になってしまった。これらの偶然が3つ重なれば其れは必然的に世界は同じとなる。つまり未来だ」

「人類はあの戦争後も生き残っていたんですね……」

 葵さんの言葉に泣き出した女子達がいた。

「エルフ族が超寿命種として生きている事から数千年は先の未来だと思う」
「結構悩まされたけど、此の世界は俺達の世界の未来で間違いないと思う」
「何しろ物理的証拠が皆無に等しい。俺達の世界の未来、しかも数千年程度の先であった場合、ピラミッド等の古代遺跡やコンクリート構造物は残っているはずだが、光斗の索敵で探しても見つからない」

 新藤君に続き如月君が説明をする。

「其れならば遥か遠い未来なのか?しかし人間の形は俺達と変わらない。数万年先の未来なら人間も進化して、もう少し違う特徴を持っているはずなんだけど、其れも無い。地理的な根拠としても日本とハワイ島の距離は数十キロしか縮まっていないんだ」

「パラレルワールドって線は?」
「それも考えにくいんだ。仮に此の世界が平行世界であった場合、シーザーの後、約2千年の間で分岐した事になるが、ハイエルフや古代魔法文明の点から2千年は短すぎる。だからパラレルワールドでは無いと結論付けた」

 柿原君の問いに如月君が答えた。

「其処で思いあたったのが、超古代神話未来予言説だ」
「「「超古代神話未来予言説?」」」

 新藤君の言葉にみんなの顔がまた『?』顔になる。

「超古代神話の『リグヴェーダ』、『マハーバーラタ』、『ラーマーヤナ』、『創世記』等では古代に戦車やミサイル、飛行機等があり、更には核戦争で世界は滅んでいる。
 これらの事が太古にあったのではなくて、此の世界がそうであるように、神々と繋がりがあった時代に神から授かった神託であり、未来に起きる予言だったと考える説だ。
 俺達の世界はまさにマハーバーラタのアグネーヤ矢やラーマーヤナのインドラの矢の如く、核ミサイルによって各都市が消え去っている」
 
新藤君に変わり如月君が話を引き継ぐ。

「神が人類に失望し、あの核戦争の後に大洪水を起こした。創世記に出てくる『ノアの方舟伝説』だ。
 神との接触を断って、古代神話での神の神託を無視し、核戦争で滅んだ人類と文明をリセットさせた。
 一部の人類や動植物を除き、破滅の大洪水は巨石文化やコンクリート構造物冴えも無に帰した。
 此の大洪水についてだが光斗のワールドビジョンで数千年前の地層に其の痕跡を見つけている」

 如月君に続き俺からも説明を続ける。

「方舟伝説では神の大洪水から免れた人々は餓えに苦しむ中、数羽の鳥が木の実を拾ってくる。俺達は此の実をアダムとイブが食べた禁断の果実と考えた。
 つまり神の大洪水で生き延びた人々は神から与えられた此の実を食べ、人類は過去の文明を忘却し、新たなる力として魔力を身につけた。
 こうして魔法文明が始まったと俺達は結論を出したんだ。話しは変わるけど此の世界に俺達を呼んだヤツの正体も分かって来た」
「えっ、誰かに召喚されたって事?」

 葵さんの隣に立つ茜音さんが俺の言葉に反応する。

「オタトリ君」
「「「オタトリ君でまとめるな~!」」」
「異世界転移で召喚する側のテンプレは?」

 彼らの意見はスルーして俺は質問する。

「テンプレで言えばやはり王様や王女様とかの王族関係者?」

 と柿原君が王様達を見るが、国王様達は首を横にフルフルしている。

「国王様達は関係なさそうだよね。他には?」
「神様もテンプレだよね。転移や転生ネタにはよく出てくる」

 と工藤君。

「異世界に転移させる理由は?」
「転生は置いといて転移の場合はその国や世界が困っている、か、困ろうとしている。よく有るのは魔王復活とか?最近なら食事系や畑系なんかのスローライフネタも有るけど」

「共通してる事として地上世界がベースだよね。神様ってのは困っている人や世界に手を差し伸べる者だと思う。その神様はこの世界に於ける神だけど宇宙の絶対神では無い。そんな高位な者で有れば逆に人に手を差し伸べたりしない。
 だから地球の神様は宇宙からの驚異には気が付けなかった。だからソイツは神様が気が付くより早く俺達を転移させた。其れも核が落ちる直前のタイミングを選んで」


「何で……」

 彩月が悲痛な声を出した。

「ソイツは地球を守る為に知る限りの最強武器が必要だった。其れが核だった。でもこの時代、そして未来に核を残したくはない。世界がまた破滅する可能性が有るからね。
 だから科学者や軍人ではなく俺達が選ばれた。核の恐怖と絶望が心に刻み込まれたあのタイミングでだ。俺達が核を作っても未来には残さないであろう思惑でだ」
「そんな……酷い……」

「更に俺達の能力を散らす事により容易く核を作れないようにした。シンクロハーモライズを使わないと大きな力は得られない。1人づつでは大きな驚異にはならないように」
「何だよ!俺達はソイツにいいように踴らされてるって事か!」
「いや、ソイツは大切な事を忘れている。例え知識や能力が有っても俺達は核を作れない……。だって俺達はだからだ!」

 俺の声にみんなが静まり帰った大広間の中で不思議そうに俺の顔を見ている。

「プッ、アハ、アハハハー」

 白山先生が口元を隠し笑い出す。
 新藤君が呆れた顔で

「はぁ~、光斗、お前は其れを此処で言うかぁ~」
「そうだな。俺達日本人は核を作れないな」

 如月君の声に合わせて彩月も

「そうよね。私達日本人は核を持てないよね」

 と笑顔で俺に寄り添って来た。

「そして俺達はこの世界に核を持ち込ませない!」

 俺の言葉でみんなも気が付いたようだ。


「そうだ!俺達は核を作らない!」

 中川君が叫ぶ。

「「私達は核を持たない!」」

 茜音さんと葵さんが言う。そして全員が非核三原則を誓った。

「俺達は、「私達は、この世界に絶対に核を持ち込ませない!!!」」

 みんな笑い合い、泣き合い、ハイタッチしあの悲しい惨劇をこの世界に持ち込まない事を決意する。
 俺達の誓いは核を持たない此の世界には意味が無いことかも知れない。でも俺達にとってはとても大切な決意だ。

「光斗さん。其れでそのソイツとは誰の事何ですか?」

 葵さんがソイツの正体について聞いて来た。ソイツは人でも神でもない。ソイツは……。

「ソイツの名前は地球」
「「「地球!」」」

 みんなが一斉に驚く。

「神様より高位に存在する地球の意思。神様では間に合わないと地球は考え俺達を転移させた」

 続いて俺に変わり新藤君が説明する。

「太古に於いて恐竜が絶滅し、人類も多くの文明が滅んできた。俺達の現世も同様にして滅亡した。この滅びは地球の摂理だ。同様に地球が滅ぶのも宇宙の摂理だ。
 地球も宇宙の摂理に従うしかない。しかし人類がそうであるように、地球も滅亡に対し抗う事が出来る。しかし、この世界の人々は宇宙を知らない。
 だからその抗いこそが俺達だ。俺達だって地球が無くなるのを指を加えて見てる訳にはいかない。何としてでも地球を、世界を守りたい。……しかし核を封じた俺達に火力不足は否めないが……」

「マスター」
「ん? 何だい、サツキサン?」
「火力についてご提案が有ります。……ゴニョゴニョ」
「……いやいや、其れは無理だろう」
「そうですか?」
「かなり無理が有ると思うよ」

 そんな俺達に国王様が語りかけてきた。

「ライト。その件は私達に任せてくれまいか。此度の災厄は其方達に任せきりだった。宇宙という怪物相手に何も出来ぬ我が身に口惜しさしか無かった。しかしサツキサンの作戦に我が身が震えた。我々も力に成れるのだ!」
「そうだぜ、ライト!」

 大将軍が俺の肩に肩組みしてきた。

「俺達だって力に成りたいんだ」
「ライト様。私達の世界を守る為に私達の力を使って下さい」

 アルフィーナ王女が俺の手を握る。

「国王様……将軍……アルフィーナ…………」

 涙ぐむ俺に代わり新藤君が答えてくれた。

「分かりました。国王様達の助力是非とも宜しくお願いします」

「我が身、我が国の威信に掛けて必ず成して見せようぞ!!!」

 こうして地球滅亡の時を前に空前絶後の史上最大の作戦が動き出した。
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