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第四章(最終章)
第57話 暗黒の兆し
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3月になると暖かな日も織り混ざり、所々の日陰に解けずに残る雪はあるものの、気候は春を迎える準備に入っていた。
夜の気温はまだまだ寒いなか、セナス王子と新藤君は時間を見つけては天体観測をしていた。
その日は月も雲も無く絶好の天体観測日和だった。
「今夜は木星が綺麗に見えるな」
城のバルコニーに望遠鏡を設置し2人は星空を眺めていた。
「私にも見せて下さい。あっ」
王子が望遠鏡に触った時に僅かにズレてしまった。王子は望遠鏡を覗き木星を探す。
「……新藤様。星が消えています。宇宙に黒く穴が空いたように見えます」
「み、見せて下さい王子様!」
新藤君は望遠鏡を覗き呟く。
「……ブラックホールか?」
「あの全てを飲み込みむというブラックホールですか?」
「い、いえ。望遠鏡で見えるブラックホールはありません」
「ではあれは?」
◆
俺と如月君は新藤君に呼ばれバルコニーに来ていた。
「分かるか?如月」
「なんだ有れは?」
「ブラックホールでも、暗黒星雲でもあり得ない」
「其れは分かっている。だから有れは何なんだ!」
「光斗、索敵出来るか?」
「え、イヤイヤ無理でしょ?あんな星の彼方とかあり得ないから」
「星の彼方では無い可能性もある。宇宙は比較対象が無いから距離感が掴みにくいんだ」
「其れでも俺1人じゃ無理っしょ」
◆
新藤君は岡本さんと高山さんも呼び出し、俺は岡本さんとシンクロハーモライズによる超超距離索敵を行っていた。
「「もう無理~」」
2人して尻餅ちを付きバルコニーに大の字で寝転ぶ。
「サツキサン、何れくらい行った~?」
「イエス、マスター。32万3296Kmです。」
「おお、スゲー、宇宙も索敵出来てるじゃん。てか宇宙だと伸び率ハンパないね!」
「イエス、マスター。大気が無い為に索敵物が減少し、其の分のエネルギーが距離に影響しています」
「頑張れば月のウサギも索敵出来そうだね」
黒雲迄は届かなかったが、宇宙も索敵出来る事は分かった。
「光斗、岡本さん、ありがとう。高山さん、望遠鏡であの黒雲を見て、黒雲と周囲の星を紙に転写してくれ」
「ア、うん、やってみる」
◆
3日後、俺達は会議室で新藤君から宇宙に見えた黒雲について話し合いをしていた。
メンバーは俺、新藤君、如月君、高山さん、岡本さん、サナス王子に加えアルフィーナ王女、彩月、メイアさん、白山先生の面々だ。
「あの黒雲はそう遠くない距離に有ると思われる。この3枚の写真を比べると、ほんの僅かだが大きく又は近付いて来ているのが分かる。かなり遠い距離に有ればこんな目に見える変化は確認出来ないからな」
新藤君は3枚の写真を並べ説明する。此の3日間に高山さんが写した写真だ。
「此れの正体は?」
俺の質問に新藤君は
「未だに不明だが星間ガスの類いだと思う」
「だが暗黒星雲の可能性はゼロだろ」
如月君が新藤君に突っ込みを入れるが、俺には2人のやり取りがマッタク分からない。
「あの~、星間ガスとか暗黒星雲って何ですか?」
彩月は俺と同じく『?』の顔になっている。だよね~。
「女の子には分かりにくかったかな?」
いえ、男の子も分かりません。
「宇宙には、分子とかがガス状となった物や、塵とかが多く集まった物を星間ガスといい、黒く見える其れの集まりを暗黒星雲って言うんだ」
如月君が説明をしてくれる。変わって新藤君が
「暗黒星雲の大きさは1兆キロ~1000兆キロ有る。太陽系の大きさが約100億キロだから、そんなものが来てるとしたら何とかしようとは全く思わない」
「暗黒星雲ってのは真っ黒って訳ではなくて薄い部分もあって後ろの星が透けて見えたりもする。今回の黒雲はそういった箇所が全く無いから暗黒星雲の可能性は低いんだ」
「「「「はあ……?」」」」
「ブラックホールでも無いとおっしゃってましたよね?」
セナス王子の問いに
「ブラックホールは直径10キロ程度の小さい星なんです。太陽より遥かに大きい恒星が寿命を迎え圧縮された超重力星。もし見える距離にブラックホールが有れば太陽系は超重力によって飲み込まれています。だからブラックホールでは有りないんです」
如月君が説明しているが、この2人何でそんなに詳しいの?
新藤君がみんなの顔を見る。
「よって正体不明な星雲をUnknown Nebula=UNとして話しを進めていく。俺達は宇宙研究家ではないので詳細を知る必要は無いが、地球や太陽、他の惑星等に影響が有るかは知っておく必要がある」
「それで何をすればいいんだ?」
「光斗と姫川さんでUN迄の距離を測定して欲しい」
「でも俺の索敵は届かないけど」
「三角測量で測定する」
「あっ、成る程」
「2人は城の頂点にUNが来る頃に、赤道ー城ー北極のラインで赤道と北極で角度測定をして欲しい」
「あの~、三角測量って何ですか?」
セナス王子の問いに今度は彩月さんが答えた。
「セナス王子様、三角測量はこの国でも使われている測量方法です。例えば川に橋を渡したい時に、川幅は何れくらい有るのか計測しないといけないとします」
彩月さんは机の上の黒板にチョークで川を描く。
「川の向こう岸に1本木が有りました」
木を描き加えAと書いた。
「この木Aと此方ら側のこの場所の川幅を計ります」
彩月さんは木の対岸の此方ら側に◯を描く。
「この◯とAに対して垂直に交わる線を底辺とした仮想三角形を作ります。例えば底辺の長さ10mとした時の底辺両端から頂点Aに向かった角度を測定し(川岸迄の角度を着けた線を引く)、その両端からその角度で引いた線が交わる場所が木の場所Aになります。この三角形の高さが底辺10mに対して何mになるかを求めれば川幅の長さが分かります」
「おお、成る程」
セナス王子も出会った頃に比べてだいぶ勉強に興味を持つようになってきた。
変わって新藤君が説明を引き継ぐ。
「天体の様に遠い場所の場合、例えば城の端と端で角度を出そうとするとどちらもほぼ90度の様な角度が出てしまいます。よって今回は地球の半分を使って角度を求める事としました」
しかし俺が突っ込みを入れる。
「でも地球は丸いから数字的におかしくならないか?」
「球面三角法で補正するから大丈夫だ。ね、先生」
急に振られた白山先生がワタワタしている。
「球面三角法ねぇ…、ゴメン、先生そっち系苦手なのよね~」
「……という訳で測定の方は頼む。高山さんも同行して両端から見たUNの写真を撮ってくれ。多少は立体的イメージが掴めるかもしれない。如月は素材班と合流して宇宙用の素材を作って欲しい」
「宇宙拠点建造物と宇宙服だな」
「ああ。いずれは宇宙からのアクションが必要になる可能性が有るからな。先行して準備が必要だ。素材班だけじゃ宇宙用の素材イメージが湧かないだろうから如月がサポートに入ってくれ」
「了解だ」
◆
翌日の午後、俺、彩月、高山さんでの正体不明星雲=UN(Unknown Nebula)観測の結果について話し合うため会議室に前回と同じ面々に加え、国王様、宰相、大将軍が揃っていた。
「UN迄の距離はおよそ5億キロ。火星軌道と木星軌道の中間辺りだ。移動速度は時速約100万キロ。大きさは幅5600万キロ、高さ1400万キロの帽子を2つ鍔で重ねた形。この形状から中心には何らかの天体が有ると推測される。また帯状の雲の様なものがUNから流れている。其の長さは長いもので1億キロ程度と推測される」
「捕捉だけど、地球の直径は約1万3千キロ、太陽で140万キロ、地球から太陽迄の距離が1億5千万キロだから、UNははっきり言ってとてつもなくデカイ」
如月君が補足してくれた。つまりUNの最大長は地球から太陽迄の距離と同じ事になる。デカ過ぎだろ!
「で、近付いてるの?」
「ああ。約20日程度でニアミス或いは衝突の可能性が有る」
俺の問いに新藤君は答えた。
「宇宙の果てに有る物が僅か20日で来ると言うのか!」
国王様が驚きの声を上げる。宰相も大将軍も驚愕の面持ちで新藤君の言葉に耳を傾けている。
「私達の知る移動する星で、速い星は時速480万キロという星も有ります。もしこのクラスだった場合、5日で地球に到達していました」
えっ、そうなの?私達って新藤君と如月君だけじゃね?
「光斗、宇宙に行ってUNの解析が必要だ。姫川さん、岡本さん、如月の3人も一緒に行ってくれ。タイムリミットととして往復で10日。解析が出来なくても戻って来てくれ」
「其の時はどうするんだ?」
如月君も分かってて聞いたのだと思う。悲しそうな顔だ。
「俺達の知る最大火力を作ってアイツにぶつける」
……其れはダメだ。其れはこの世界に不要な物だ。絶対アイツを索敵してやる!
◆
3日後、素材班は宇宙に行くための準備として、スペースハウスと宇宙服の作成を完了させた。
俺達は城の一角に有る大型倉庫内で相沢君からの説明を受けていた。
「此方に有る3つがスペースハウスだ」
其れは5m×5m程度の金属の箱だった。
「此れに使われている金属にはオタトリの耐熱、耐寒、耐圧、山岸さんのミラーによる宇宙線の反射、藍原の温調等々が融合されている」
「オタトリでまとめるな~!」
オタトリ君の声はスルーされ
「中は1気圧に設定して有る。狭いながら3部屋2.5階構造になっていて、1階は出入り口及びエアロックを兼ねている。中2階は生命維持装置、食料庫、お手洗い、宇宙服ハンガーと2階に至る通路、2階はリビング兼作戦ルーム。残念ながらグラビティコントロールのスキルは誰も持っていないので無重力には慣れるしかないな。これと同じものが2棟有り、計3棟を宇宙に持って行ってほしい」
「何で3つも?」
「2つは予備。宇宙に行ったら宇宙に慣れる為とスペースハウスの状態確認の為、姫川さんのテレポートで地球に戻れる距離で半日程度は滞在していてほしいかな。其の間で何かあった時は予備ハウスに移動(テレポート)してくれ」
「続いて宇宙服の説明をします」
相沢君に代わり白山先生が説明を始めた。
「宇宙服もスペースハウスと同じ融合が施されています。船外活動はプランの中には無いので手足の可動域は少なめにして服内の気圧を1気圧に設定して有ります。非常事態用の宇宙服と考えて下さい。非常時は中2階のハンガーに吊るしてある宇宙服に足から入り手を通してヘルメットを被り首周りの安全ロックをして完了です。私達のテストでは約1分で着れました。宇宙に出たら着用の練習をして下さい。生命維持装置は概ね5時間です。姫川さん、みんなの事宜しくお願いします」
「はい。先生」
「其からこれ」
白山先生が俺に小さなケースを手渡してくれた。
「サツキサンの宇宙服です」
ケースですよね?服じゃないですよね?
「サツキサン、みんなのヘルスチェックとハウスの環境チェックはお願いね」
「イエス、白山先生。提案ですが私の宇宙服のデザインがシンプル過ぎですのでハートやお花のデコデコをお願いします」
「……。分かりましたサツキサン」(苦笑)
デコケースが欲しかったのサツキサン?
宇宙に行く俺達を除くクラス全員で最終チェックや食料等の積み込みをする。その間に俺達は宇宙服の試作品を使って着用の練習をしていた。岡本さんが首にある安全ロックで苦労しているのを俺、彩月、メイアさんで眺めているとアルフィーナ王女、ルミナ様、セシリちゃん、オリヴィア様が近付いて来た。
「大丈夫なのですか?」
「今現在はかなり遠いからな~」
「そうではなくて、宇宙に行く事が……」
王女を始め彼女達の顔に不安の色が浮かんでいた。
「まぁ、みんなを信じてるから大丈夫だよ」
笑って見せるがやはり心配そうだ。
「宇宙からは絶対帰って来るから」
王女の頭を撫でながら言っては見るものの、全然効果は無いようだ。そりゃそうだろう。地の果てを通り越して地球の外に行くんだから。俺も不安は有るけどワクワク感も有る。
「私が光斗君を絶対守るよ。絶対みんなの処に連れて帰る」
「サツキ様……」
「サツキぃ~」
「サツキお姉ちゃん~」
4人は彩月に抱き合いながら泣き始めた。
「ありがとう、みんな。」
絶対帰って来ないとな!
夜の気温はまだまだ寒いなか、セナス王子と新藤君は時間を見つけては天体観測をしていた。
その日は月も雲も無く絶好の天体観測日和だった。
「今夜は木星が綺麗に見えるな」
城のバルコニーに望遠鏡を設置し2人は星空を眺めていた。
「私にも見せて下さい。あっ」
王子が望遠鏡に触った時に僅かにズレてしまった。王子は望遠鏡を覗き木星を探す。
「……新藤様。星が消えています。宇宙に黒く穴が空いたように見えます」
「み、見せて下さい王子様!」
新藤君は望遠鏡を覗き呟く。
「……ブラックホールか?」
「あの全てを飲み込みむというブラックホールですか?」
「い、いえ。望遠鏡で見えるブラックホールはありません」
「ではあれは?」
◆
俺と如月君は新藤君に呼ばれバルコニーに来ていた。
「分かるか?如月」
「なんだ有れは?」
「ブラックホールでも、暗黒星雲でもあり得ない」
「其れは分かっている。だから有れは何なんだ!」
「光斗、索敵出来るか?」
「え、イヤイヤ無理でしょ?あんな星の彼方とかあり得ないから」
「星の彼方では無い可能性もある。宇宙は比較対象が無いから距離感が掴みにくいんだ」
「其れでも俺1人じゃ無理っしょ」
◆
新藤君は岡本さんと高山さんも呼び出し、俺は岡本さんとシンクロハーモライズによる超超距離索敵を行っていた。
「「もう無理~」」
2人して尻餅ちを付きバルコニーに大の字で寝転ぶ。
「サツキサン、何れくらい行った~?」
「イエス、マスター。32万3296Kmです。」
「おお、スゲー、宇宙も索敵出来てるじゃん。てか宇宙だと伸び率ハンパないね!」
「イエス、マスター。大気が無い為に索敵物が減少し、其の分のエネルギーが距離に影響しています」
「頑張れば月のウサギも索敵出来そうだね」
黒雲迄は届かなかったが、宇宙も索敵出来る事は分かった。
「光斗、岡本さん、ありがとう。高山さん、望遠鏡であの黒雲を見て、黒雲と周囲の星を紙に転写してくれ」
「ア、うん、やってみる」
◆
3日後、俺達は会議室で新藤君から宇宙に見えた黒雲について話し合いをしていた。
メンバーは俺、新藤君、如月君、高山さん、岡本さん、サナス王子に加えアルフィーナ王女、彩月、メイアさん、白山先生の面々だ。
「あの黒雲はそう遠くない距離に有ると思われる。この3枚の写真を比べると、ほんの僅かだが大きく又は近付いて来ているのが分かる。かなり遠い距離に有ればこんな目に見える変化は確認出来ないからな」
新藤君は3枚の写真を並べ説明する。此の3日間に高山さんが写した写真だ。
「此れの正体は?」
俺の質問に新藤君は
「未だに不明だが星間ガスの類いだと思う」
「だが暗黒星雲の可能性はゼロだろ」
如月君が新藤君に突っ込みを入れるが、俺には2人のやり取りがマッタク分からない。
「あの~、星間ガスとか暗黒星雲って何ですか?」
彩月は俺と同じく『?』の顔になっている。だよね~。
「女の子には分かりにくかったかな?」
いえ、男の子も分かりません。
「宇宙には、分子とかがガス状となった物や、塵とかが多く集まった物を星間ガスといい、黒く見える其れの集まりを暗黒星雲って言うんだ」
如月君が説明をしてくれる。変わって新藤君が
「暗黒星雲の大きさは1兆キロ~1000兆キロ有る。太陽系の大きさが約100億キロだから、そんなものが来てるとしたら何とかしようとは全く思わない」
「暗黒星雲ってのは真っ黒って訳ではなくて薄い部分もあって後ろの星が透けて見えたりもする。今回の黒雲はそういった箇所が全く無いから暗黒星雲の可能性は低いんだ」
「「「「はあ……?」」」」
「ブラックホールでも無いとおっしゃってましたよね?」
セナス王子の問いに
「ブラックホールは直径10キロ程度の小さい星なんです。太陽より遥かに大きい恒星が寿命を迎え圧縮された超重力星。もし見える距離にブラックホールが有れば太陽系は超重力によって飲み込まれています。だからブラックホールでは有りないんです」
如月君が説明しているが、この2人何でそんなに詳しいの?
新藤君がみんなの顔を見る。
「よって正体不明な星雲をUnknown Nebula=UNとして話しを進めていく。俺達は宇宙研究家ではないので詳細を知る必要は無いが、地球や太陽、他の惑星等に影響が有るかは知っておく必要がある」
「それで何をすればいいんだ?」
「光斗と姫川さんでUN迄の距離を測定して欲しい」
「でも俺の索敵は届かないけど」
「三角測量で測定する」
「あっ、成る程」
「2人は城の頂点にUNが来る頃に、赤道ー城ー北極のラインで赤道と北極で角度測定をして欲しい」
「あの~、三角測量って何ですか?」
セナス王子の問いに今度は彩月さんが答えた。
「セナス王子様、三角測量はこの国でも使われている測量方法です。例えば川に橋を渡したい時に、川幅は何れくらい有るのか計測しないといけないとします」
彩月さんは机の上の黒板にチョークで川を描く。
「川の向こう岸に1本木が有りました」
木を描き加えAと書いた。
「この木Aと此方ら側のこの場所の川幅を計ります」
彩月さんは木の対岸の此方ら側に◯を描く。
「この◯とAに対して垂直に交わる線を底辺とした仮想三角形を作ります。例えば底辺の長さ10mとした時の底辺両端から頂点Aに向かった角度を測定し(川岸迄の角度を着けた線を引く)、その両端からその角度で引いた線が交わる場所が木の場所Aになります。この三角形の高さが底辺10mに対して何mになるかを求めれば川幅の長さが分かります」
「おお、成る程」
セナス王子も出会った頃に比べてだいぶ勉強に興味を持つようになってきた。
変わって新藤君が説明を引き継ぐ。
「天体の様に遠い場所の場合、例えば城の端と端で角度を出そうとするとどちらもほぼ90度の様な角度が出てしまいます。よって今回は地球の半分を使って角度を求める事としました」
しかし俺が突っ込みを入れる。
「でも地球は丸いから数字的におかしくならないか?」
「球面三角法で補正するから大丈夫だ。ね、先生」
急に振られた白山先生がワタワタしている。
「球面三角法ねぇ…、ゴメン、先生そっち系苦手なのよね~」
「……という訳で測定の方は頼む。高山さんも同行して両端から見たUNの写真を撮ってくれ。多少は立体的イメージが掴めるかもしれない。如月は素材班と合流して宇宙用の素材を作って欲しい」
「宇宙拠点建造物と宇宙服だな」
「ああ。いずれは宇宙からのアクションが必要になる可能性が有るからな。先行して準備が必要だ。素材班だけじゃ宇宙用の素材イメージが湧かないだろうから如月がサポートに入ってくれ」
「了解だ」
◆
翌日の午後、俺、彩月、高山さんでの正体不明星雲=UN(Unknown Nebula)観測の結果について話し合うため会議室に前回と同じ面々に加え、国王様、宰相、大将軍が揃っていた。
「UN迄の距離はおよそ5億キロ。火星軌道と木星軌道の中間辺りだ。移動速度は時速約100万キロ。大きさは幅5600万キロ、高さ1400万キロの帽子を2つ鍔で重ねた形。この形状から中心には何らかの天体が有ると推測される。また帯状の雲の様なものがUNから流れている。其の長さは長いもので1億キロ程度と推測される」
「捕捉だけど、地球の直径は約1万3千キロ、太陽で140万キロ、地球から太陽迄の距離が1億5千万キロだから、UNははっきり言ってとてつもなくデカイ」
如月君が補足してくれた。つまりUNの最大長は地球から太陽迄の距離と同じ事になる。デカ過ぎだろ!
「で、近付いてるの?」
「ああ。約20日程度でニアミス或いは衝突の可能性が有る」
俺の問いに新藤君は答えた。
「宇宙の果てに有る物が僅か20日で来ると言うのか!」
国王様が驚きの声を上げる。宰相も大将軍も驚愕の面持ちで新藤君の言葉に耳を傾けている。
「私達の知る移動する星で、速い星は時速480万キロという星も有ります。もしこのクラスだった場合、5日で地球に到達していました」
えっ、そうなの?私達って新藤君と如月君だけじゃね?
「光斗、宇宙に行ってUNの解析が必要だ。姫川さん、岡本さん、如月の3人も一緒に行ってくれ。タイムリミットととして往復で10日。解析が出来なくても戻って来てくれ」
「其の時はどうするんだ?」
如月君も分かってて聞いたのだと思う。悲しそうな顔だ。
「俺達の知る最大火力を作ってアイツにぶつける」
……其れはダメだ。其れはこの世界に不要な物だ。絶対アイツを索敵してやる!
◆
3日後、素材班は宇宙に行くための準備として、スペースハウスと宇宙服の作成を完了させた。
俺達は城の一角に有る大型倉庫内で相沢君からの説明を受けていた。
「此方に有る3つがスペースハウスだ」
其れは5m×5m程度の金属の箱だった。
「此れに使われている金属にはオタトリの耐熱、耐寒、耐圧、山岸さんのミラーによる宇宙線の反射、藍原の温調等々が融合されている」
「オタトリでまとめるな~!」
オタトリ君の声はスルーされ
「中は1気圧に設定して有る。狭いながら3部屋2.5階構造になっていて、1階は出入り口及びエアロックを兼ねている。中2階は生命維持装置、食料庫、お手洗い、宇宙服ハンガーと2階に至る通路、2階はリビング兼作戦ルーム。残念ながらグラビティコントロールのスキルは誰も持っていないので無重力には慣れるしかないな。これと同じものが2棟有り、計3棟を宇宙に持って行ってほしい」
「何で3つも?」
「2つは予備。宇宙に行ったら宇宙に慣れる為とスペースハウスの状態確認の為、姫川さんのテレポートで地球に戻れる距離で半日程度は滞在していてほしいかな。其の間で何かあった時は予備ハウスに移動(テレポート)してくれ」
「続いて宇宙服の説明をします」
相沢君に代わり白山先生が説明を始めた。
「宇宙服もスペースハウスと同じ融合が施されています。船外活動はプランの中には無いので手足の可動域は少なめにして服内の気圧を1気圧に設定して有ります。非常事態用の宇宙服と考えて下さい。非常時は中2階のハンガーに吊るしてある宇宙服に足から入り手を通してヘルメットを被り首周りの安全ロックをして完了です。私達のテストでは約1分で着れました。宇宙に出たら着用の練習をして下さい。生命維持装置は概ね5時間です。姫川さん、みんなの事宜しくお願いします」
「はい。先生」
「其からこれ」
白山先生が俺に小さなケースを手渡してくれた。
「サツキサンの宇宙服です」
ケースですよね?服じゃないですよね?
「サツキサン、みんなのヘルスチェックとハウスの環境チェックはお願いね」
「イエス、白山先生。提案ですが私の宇宙服のデザインがシンプル過ぎですのでハートやお花のデコデコをお願いします」
「……。分かりましたサツキサン」(苦笑)
デコケースが欲しかったのサツキサン?
宇宙に行く俺達を除くクラス全員で最終チェックや食料等の積み込みをする。その間に俺達は宇宙服の試作品を使って着用の練習をしていた。岡本さんが首にある安全ロックで苦労しているのを俺、彩月、メイアさんで眺めているとアルフィーナ王女、ルミナ様、セシリちゃん、オリヴィア様が近付いて来た。
「大丈夫なのですか?」
「今現在はかなり遠いからな~」
「そうではなくて、宇宙に行く事が……」
王女を始め彼女達の顔に不安の色が浮かんでいた。
「まぁ、みんなを信じてるから大丈夫だよ」
笑って見せるがやはり心配そうだ。
「宇宙からは絶対帰って来るから」
王女の頭を撫でながら言っては見るものの、全然効果は無いようだ。そりゃそうだろう。地の果てを通り越して地球の外に行くんだから。俺も不安は有るけどワクワク感も有る。
「私が光斗君を絶対守るよ。絶対みんなの処に連れて帰る」
「サツキ様……」
「サツキぃ~」
「サツキお姉ちゃん~」
4人は彩月に抱き合いながら泣き始めた。
「ありがとう、みんな。」
絶対帰って来ないとな!
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カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
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