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第四章(最終章)
第60話 アブソリュートビジョン
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今日で折り返しの5日目になる。
彩月の容態は少しずつ快復傾向に有るがまだまだ熱は38度代で無理は出来ない状況だ。でも熱が落ち着いた事にホッと胸を撫でおろす。
「大切な時に……ゴメンね……」
彩月が涙を溢し力無く声を出す。
「今はさ、ゆっくり療養だよ」
「でも私がやらなきゃ行く事も帰る事も……」
「……俺達は彩月に頼り過ぎていた。此方の方こそゴメン……。何とかするとは断言出来ないけど俺達でやれるだけの事はするから彩月はしばらくゆっくりしてて」
そっと頭を撫でる。
「……そうだね……。先ずは良くならないとね」
俺は彩月の頬にキスをした。
「うん。先ずは良くなる事。もう少し寝てなね」
「はい」
彩月は少し頬を赤らめ力弱いながら微笑み布団に顔を埋めた。
俺達は朝から岡本さんを加え遠距離索敵を実施。イメージトレーニングの成果も有り索敵距離は3千万を越えた……。しかしUNとの距離はまだまだ埋まらない現実が俺達を暗くする。
「みんなゴメン……」
その距離の差に俺はみんなに謝った。クソッ。全然ダメだ。結局何も出来ていない!
「いや、光斗は頑張った。岡本さんも、姫川さんも頑張ってくれた」
如月君が慰めの言葉を掛けてくれるが悔しさで涙が出てくる。ちくしょう!
「……言いにくいが今日が最後の日だ。本来なら明日には帰還だが姫川さんの体調が回復する迄は此処で待機になる」
「それじゃ、その間に……」
「今、UNとの距離は推定約2億5千万キロ、向こうは1日辺り約2400万キロ近付いて来る。後2~3日で2億キロ内に入って来る」
「俺達の索敵目標距離は2億キロって事か……」
「イメージのシンクロハーモライズはかなり良い成果を上げている。そこで岡本さんにも魔力供給に加えイメージのシンクロもして貰う。最初は大変だけどサツキサンのフォローが有るから安心して欲しい」
「分かった……。やってみる」
岡本さんと何度かイメージシンクロトレーニングをし、今はテーブルセットの椅子に座り休憩をしていた。休憩中に如月君は地球の新藤君と電話連絡をしている。岡本さんもスマホをいじっている事から中川君にでもメールを作っているのだろう。
ぶるぶる。ぶるぶる。
俺のスマホが誰かからの着信でバイブしている。画面を見ると葵さんだった。城で何かあったのか?
「もしもし?」
「ライト様~!」
アルフィーナ王女だった。
「ライト様、そちらは大丈夫ですか!彩月様の容態は!いつ此方に帰られますか!」
矢継ぎ早に質問が飛んでくる。
「あっ、う、うん。俺は元気だよ。彩月も回復傾向に向かってる」
「其れではしばらくしたらお帰りになられるのですね」
「……そ、そうだね。少し日程は遅れるけどね。えっとルミナ様やセシリちゃんは元気?」
俺はウソを付いたのかもしれない。状況的に帰還は五分五分だ。
「ライト様。必ず帰って来てください……。あの娘達もライト様の帰りを心待ちにしていますよ」
「うん。分かってる」
「マスター」
うぉ!サツキサンが突然回線に入って来た。
「私もアルフィーナ王女様とお話しが有りますので回線を回して下さい」
「えっ、あ、あぁどうぞ」
「-----」
あれ?回線は繋がったままだけど声が聞こえない?秘匿回線?
しばらくアルフィーナ王女とサツキサンの会話は続いたようだ?
「ライト様!」
突然アルフィーナ王女の声が聞こえた。
「急用が出来ましたのでこれで失礼します!!」
ガチャ。プープープー……。
なに?
「サツキサン。何かあったの?」
「いえ。特には」
「何の話ししてたの?」
「女の子同士のお話しを根掘り葉掘り聞きたいとは、相変わらずマスターはスケベですね」
えっ?俺スケベなの?しかも相変わらずなの?
◆
「「「シンクロハーモライズ!索敵!」」」
岡本さんを交え索敵を行う。如月君のイメージが重なり視界にレールが浮かび上がる。俺は其のレールを走る新幹線をイメージして遥か遠くのUNの黒雲を目指した。
何度かレールを見失いそうになるが、都度サツキサンと岡本さんのサポートで何とかレールの上をキープする。しかし段々と辺りは白い霧に包まれ俺は完全にレールを見失う。
此処までか………。
意識が朦朧とした俺を、手を握っていた如月君と岡本さんが支えてくれた。
「あ、ありがとう如月君、岡本さん。サツキサン、索敵距離は?」
「3532万キロです」
「………」
足りない。全然足りない。俺は床を殴りつける。
クソッ!クソッ!クソォッ!
「光斗、まだ時間は有る。心を折るな」
如月君が俺の背中に手を当て励ましの言葉をくれた。俺に足りないものが有る。
其れはきっと………
「マスターには愛が足りません」
「……………。俺は、俺は愛してる!彩月も!アルフィーナも!セシリも!ルミナも!みんなも!みんなが暮らす世界も!地球も!全部愛してる!其れでも足りないのか!其れでも俺に愛が足りないのか!!!」
俺はサツキサンを両手で握り大声で叫んだ。涙が出てくる。止めどなく涙が出てくる。
「誰も救えない! 何もかも救えない! 俺がみんなを壊す! 俺が世界を壊す! 俺が! 俺がァ! 俺がァーーーッ!!!」
ダメなのか、もう俺が全てを殺してしまう…………。
「!?」
背中から俺を優しく抱き締めてくれる人がいる……。
泣き叫ぶ俺に暖かく手を差し伸べてくれる人がいる……。
振り向かなくても分かる。彩月だ……。
「光斗君……。光斗君に愛が足りないなら私の愛を光斗君にあげるよ」
そっと俺に囁く……。
振り返り見た彩月も大粒の涙を流していた。でも其の顔は優しい笑顔で俺を迎えてくれた……。
「私は世界で一番光斗君が大好き。光斗君が好きなものは私も大好き。だから私の好きは光斗君のモノだよ。愛してる……。光斗君を心から愛してる!」
彩月はそっと優しく俺の唇に唇を重ねた……。
涙が出てくる……。心が暖まる涙が……。
唇が離れ彩月は笑顔で言った。
「光斗君が言った事を光斗君は忘れてるよ。私達は1人では力が足りない。だから地球はシンクロハーモライズをくれた。愛だってシンクロハーモライズ出来るんだよ(ニコ)」
俺はバカだ!
大バカだ!!!
愛はいつだって複数形だ!1人じゃ愛は成立しない!当たり前の事を忘れていた!
俺は彩月を抱き寄せ今度は俺からキスをした。
ありがとう!ありがとう!ありがとう!俺に愛をくれて!俺を愛してくれて!
「光斗、男の俺が言うのも変だけど俺も愛してるぞ」
「あはっ、そうだな」
「私の一番は敦士だけど、光斗も愛してるよ」
「ありがとう。岡本さん」
ピロ~ン
サツキサンの画面に新着メールの案内が表示された。サツキサンが開封する。
【ライト様 愛してます。必ず帰って来てください 。アルフィーナ】
ピロ~ン
【大好きなライトお兄ちゃん。早く帰って来て。セシリ】
ピロ~ン
【我も愛してるぞ。ルミナ】
ピロ~ン
【裏メイド隊の心はライト様のものです。メイア】
ピロ~ン、ピロ~ン、ピロ~ン、ピロ~ン、ピロ~ン、ピロ~ン………
次々にメールが届く。茜音さん、葵さん、新藤君、白山先生、高山さん、相沢君、渡辺さん、南秦さん、中川君、山梨さん、芳川さん、楠木君、オタトリ君(オタトリ君でまとめるな~) 、笠原君、真山さん………クラス全員からメールが届く……。
ピロ~ン、ピロ~ン、ピロ~ン、ピロ~ン、ピロ~ン、ピロ~ン………
サツキサンの画面がメールウィンドウで埋め尽くされていく。
国王様、お妃様、王子様、大将軍、宰相様、オリヴィア様、オリバーさん、アイシャさん、ガルバーニさん、テレシアさん、キャサリンさん、カーシャさん、アリスさん、リン、ミミアさん、カレンさん、宿屋のおかみさんと旦那さん………。
みんなが俺に愛をくれる。世界はこんなにも愛で満ちている……。
アルフィーナ王女が、メイアさんが、クラスのみんなが王都内を駆け回り俺に愛を届けてくれた。
俺は涙が止まらない。この膨れ上がる心のぬくもりを生涯忘れる事はないだろう。
みんなありがとう!!!
「サツキサン。ありがとう」
「イエス、マスター」
サツキサンの笑顔が見えた気がした。
この世界に来てサツキサンがいなかったら俺は此処までこれなかったろう。
「サツキサン、愛してるよ!」
「イエス、マスター。マスターの私に対する重すぎる愛により愛のステータスが規定値を越えました」
いやいや、この流れはサツキサンだけじゃないよね?
「新しいアプリをダウンロード出来ます。アプリをダウンロードしますか?」
「イエスだ!サツキサン!!!」
「新しいアプリをダウンロードしました。新しいアプリの名はアブソリュートビジョン【絶対索敵】」
◆
子供の頃に家族で行った高原のキャンプ場。
「お父さん!流れ星だ!」
「お兄ちゃんだけズルい~!貴美も見たかったぁ」
「光斗は運がいいな」
「お母さ~ん、貴美も見たいぃ~」
「お母さんも一緒に探してあげるね」
家族4人で見上げた星空。星の世界がこんなにも広く、遠い世界だとは、あの頃は考えもしなかった……。
父さん、母さん、貴美。俺にはあの宇宙が遠くて、遠くて、とても遠くて挫けそうになったよ。でも彩月が、如月君が、岡本さんが、アルフィーナが、みんなが俺を支えてくれた。俺に力を与えてくれた。
俺は父さん達の為にも此の世界で生きると決めた。それは俺の友達も同じ思いだ。だからみんなの為に、みんなの家族の思い為に、絶対にあの宇宙に届いてみせるよ!
◆
俺は右手で彩月の手を握る。左手で岡本さんの手を握る。2人は如月君の手を握った。
「「「「シンクロハーモライズ!」」」
「「「アブソリュートビジョン!!!」」」
俺達の視界にレールが見える。
レールを走るのは光だ!
いや光をも越える眩い光だ!
其の光は瞬く間に広い広い宇宙を駆け抜け、遥か遥か遥か遠くに思えた黒雲をも駆け抜け、暗い暗い黒雲の中にある銀色の小さい星を捉えた!
「「「「見つけたァァァァァーーーッ!!!」」」」
「UNの索敵が完了しました」
「「「「ヤッッッタァァァァァァーーーーーッ!!!」」」」
俺達は握り閉めていた両手を高々と上に上げ叫んだ!
泣いている。俺も、彩月も、如月君も、岡本さんも。
俺達はガッチリ抱き合った。泣きながら抱き合った。みんな嬉しさで声も出ない。さっきまで其処にいた絶望は霧散して消えた。今はただただただ嬉しい!!!
彩月の容態は少しずつ快復傾向に有るがまだまだ熱は38度代で無理は出来ない状況だ。でも熱が落ち着いた事にホッと胸を撫でおろす。
「大切な時に……ゴメンね……」
彩月が涙を溢し力無く声を出す。
「今はさ、ゆっくり療養だよ」
「でも私がやらなきゃ行く事も帰る事も……」
「……俺達は彩月に頼り過ぎていた。此方の方こそゴメン……。何とかするとは断言出来ないけど俺達でやれるだけの事はするから彩月はしばらくゆっくりしてて」
そっと頭を撫でる。
「……そうだね……。先ずは良くならないとね」
俺は彩月の頬にキスをした。
「うん。先ずは良くなる事。もう少し寝てなね」
「はい」
彩月は少し頬を赤らめ力弱いながら微笑み布団に顔を埋めた。
俺達は朝から岡本さんを加え遠距離索敵を実施。イメージトレーニングの成果も有り索敵距離は3千万を越えた……。しかしUNとの距離はまだまだ埋まらない現実が俺達を暗くする。
「みんなゴメン……」
その距離の差に俺はみんなに謝った。クソッ。全然ダメだ。結局何も出来ていない!
「いや、光斗は頑張った。岡本さんも、姫川さんも頑張ってくれた」
如月君が慰めの言葉を掛けてくれるが悔しさで涙が出てくる。ちくしょう!
「……言いにくいが今日が最後の日だ。本来なら明日には帰還だが姫川さんの体調が回復する迄は此処で待機になる」
「それじゃ、その間に……」
「今、UNとの距離は推定約2億5千万キロ、向こうは1日辺り約2400万キロ近付いて来る。後2~3日で2億キロ内に入って来る」
「俺達の索敵目標距離は2億キロって事か……」
「イメージのシンクロハーモライズはかなり良い成果を上げている。そこで岡本さんにも魔力供給に加えイメージのシンクロもして貰う。最初は大変だけどサツキサンのフォローが有るから安心して欲しい」
「分かった……。やってみる」
岡本さんと何度かイメージシンクロトレーニングをし、今はテーブルセットの椅子に座り休憩をしていた。休憩中に如月君は地球の新藤君と電話連絡をしている。岡本さんもスマホをいじっている事から中川君にでもメールを作っているのだろう。
ぶるぶる。ぶるぶる。
俺のスマホが誰かからの着信でバイブしている。画面を見ると葵さんだった。城で何かあったのか?
「もしもし?」
「ライト様~!」
アルフィーナ王女だった。
「ライト様、そちらは大丈夫ですか!彩月様の容態は!いつ此方に帰られますか!」
矢継ぎ早に質問が飛んでくる。
「あっ、う、うん。俺は元気だよ。彩月も回復傾向に向かってる」
「其れではしばらくしたらお帰りになられるのですね」
「……そ、そうだね。少し日程は遅れるけどね。えっとルミナ様やセシリちゃんは元気?」
俺はウソを付いたのかもしれない。状況的に帰還は五分五分だ。
「ライト様。必ず帰って来てください……。あの娘達もライト様の帰りを心待ちにしていますよ」
「うん。分かってる」
「マスター」
うぉ!サツキサンが突然回線に入って来た。
「私もアルフィーナ王女様とお話しが有りますので回線を回して下さい」
「えっ、あ、あぁどうぞ」
「-----」
あれ?回線は繋がったままだけど声が聞こえない?秘匿回線?
しばらくアルフィーナ王女とサツキサンの会話は続いたようだ?
「ライト様!」
突然アルフィーナ王女の声が聞こえた。
「急用が出来ましたのでこれで失礼します!!」
ガチャ。プープープー……。
なに?
「サツキサン。何かあったの?」
「いえ。特には」
「何の話ししてたの?」
「女の子同士のお話しを根掘り葉掘り聞きたいとは、相変わらずマスターはスケベですね」
えっ?俺スケベなの?しかも相変わらずなの?
◆
「「「シンクロハーモライズ!索敵!」」」
岡本さんを交え索敵を行う。如月君のイメージが重なり視界にレールが浮かび上がる。俺は其のレールを走る新幹線をイメージして遥か遠くのUNの黒雲を目指した。
何度かレールを見失いそうになるが、都度サツキサンと岡本さんのサポートで何とかレールの上をキープする。しかし段々と辺りは白い霧に包まれ俺は完全にレールを見失う。
此処までか………。
意識が朦朧とした俺を、手を握っていた如月君と岡本さんが支えてくれた。
「あ、ありがとう如月君、岡本さん。サツキサン、索敵距離は?」
「3532万キロです」
「………」
足りない。全然足りない。俺は床を殴りつける。
クソッ!クソッ!クソォッ!
「光斗、まだ時間は有る。心を折るな」
如月君が俺の背中に手を当て励ましの言葉をくれた。俺に足りないものが有る。
其れはきっと………
「マスターには愛が足りません」
「……………。俺は、俺は愛してる!彩月も!アルフィーナも!セシリも!ルミナも!みんなも!みんなが暮らす世界も!地球も!全部愛してる!其れでも足りないのか!其れでも俺に愛が足りないのか!!!」
俺はサツキサンを両手で握り大声で叫んだ。涙が出てくる。止めどなく涙が出てくる。
「誰も救えない! 何もかも救えない! 俺がみんなを壊す! 俺が世界を壊す! 俺が! 俺がァ! 俺がァーーーッ!!!」
ダメなのか、もう俺が全てを殺してしまう…………。
「!?」
背中から俺を優しく抱き締めてくれる人がいる……。
泣き叫ぶ俺に暖かく手を差し伸べてくれる人がいる……。
振り向かなくても分かる。彩月だ……。
「光斗君……。光斗君に愛が足りないなら私の愛を光斗君にあげるよ」
そっと俺に囁く……。
振り返り見た彩月も大粒の涙を流していた。でも其の顔は優しい笑顔で俺を迎えてくれた……。
「私は世界で一番光斗君が大好き。光斗君が好きなものは私も大好き。だから私の好きは光斗君のモノだよ。愛してる……。光斗君を心から愛してる!」
彩月はそっと優しく俺の唇に唇を重ねた……。
涙が出てくる……。心が暖まる涙が……。
唇が離れ彩月は笑顔で言った。
「光斗君が言った事を光斗君は忘れてるよ。私達は1人では力が足りない。だから地球はシンクロハーモライズをくれた。愛だってシンクロハーモライズ出来るんだよ(ニコ)」
俺はバカだ!
大バカだ!!!
愛はいつだって複数形だ!1人じゃ愛は成立しない!当たり前の事を忘れていた!
俺は彩月を抱き寄せ今度は俺からキスをした。
ありがとう!ありがとう!ありがとう!俺に愛をくれて!俺を愛してくれて!
「光斗、男の俺が言うのも変だけど俺も愛してるぞ」
「あはっ、そうだな」
「私の一番は敦士だけど、光斗も愛してるよ」
「ありがとう。岡本さん」
ピロ~ン
サツキサンの画面に新着メールの案内が表示された。サツキサンが開封する。
【ライト様 愛してます。必ず帰って来てください 。アルフィーナ】
ピロ~ン
【大好きなライトお兄ちゃん。早く帰って来て。セシリ】
ピロ~ン
【我も愛してるぞ。ルミナ】
ピロ~ン
【裏メイド隊の心はライト様のものです。メイア】
ピロ~ン、ピロ~ン、ピロ~ン、ピロ~ン、ピロ~ン、ピロ~ン………
次々にメールが届く。茜音さん、葵さん、新藤君、白山先生、高山さん、相沢君、渡辺さん、南秦さん、中川君、山梨さん、芳川さん、楠木君、オタトリ君(オタトリ君でまとめるな~) 、笠原君、真山さん………クラス全員からメールが届く……。
ピロ~ン、ピロ~ン、ピロ~ン、ピロ~ン、ピロ~ン、ピロ~ン………
サツキサンの画面がメールウィンドウで埋め尽くされていく。
国王様、お妃様、王子様、大将軍、宰相様、オリヴィア様、オリバーさん、アイシャさん、ガルバーニさん、テレシアさん、キャサリンさん、カーシャさん、アリスさん、リン、ミミアさん、カレンさん、宿屋のおかみさんと旦那さん………。
みんなが俺に愛をくれる。世界はこんなにも愛で満ちている……。
アルフィーナ王女が、メイアさんが、クラスのみんなが王都内を駆け回り俺に愛を届けてくれた。
俺は涙が止まらない。この膨れ上がる心のぬくもりを生涯忘れる事はないだろう。
みんなありがとう!!!
「サツキサン。ありがとう」
「イエス、マスター」
サツキサンの笑顔が見えた気がした。
この世界に来てサツキサンがいなかったら俺は此処までこれなかったろう。
「サツキサン、愛してるよ!」
「イエス、マスター。マスターの私に対する重すぎる愛により愛のステータスが規定値を越えました」
いやいや、この流れはサツキサンだけじゃないよね?
「新しいアプリをダウンロード出来ます。アプリをダウンロードしますか?」
「イエスだ!サツキサン!!!」
「新しいアプリをダウンロードしました。新しいアプリの名はアブソリュートビジョン【絶対索敵】」
◆
子供の頃に家族で行った高原のキャンプ場。
「お父さん!流れ星だ!」
「お兄ちゃんだけズルい~!貴美も見たかったぁ」
「光斗は運がいいな」
「お母さ~ん、貴美も見たいぃ~」
「お母さんも一緒に探してあげるね」
家族4人で見上げた星空。星の世界がこんなにも広く、遠い世界だとは、あの頃は考えもしなかった……。
父さん、母さん、貴美。俺にはあの宇宙が遠くて、遠くて、とても遠くて挫けそうになったよ。でも彩月が、如月君が、岡本さんが、アルフィーナが、みんなが俺を支えてくれた。俺に力を与えてくれた。
俺は父さん達の為にも此の世界で生きると決めた。それは俺の友達も同じ思いだ。だからみんなの為に、みんなの家族の思い為に、絶対にあの宇宙に届いてみせるよ!
◆
俺は右手で彩月の手を握る。左手で岡本さんの手を握る。2人は如月君の手を握った。
「「「「シンクロハーモライズ!」」」
「「「アブソリュートビジョン!!!」」」
俺達の視界にレールが見える。
レールを走るのは光だ!
いや光をも越える眩い光だ!
其の光は瞬く間に広い広い宇宙を駆け抜け、遥か遥か遥か遠くに思えた黒雲をも駆け抜け、暗い暗い黒雲の中にある銀色の小さい星を捉えた!
「「「「見つけたァァァァァーーーッ!!!」」」」
「UNの索敵が完了しました」
「「「「ヤッッッタァァァァァァーーーーーッ!!!」」」」
俺達は握り閉めていた両手を高々と上に上げ叫んだ!
泣いている。俺も、彩月も、如月君も、岡本さんも。
俺達はガッチリ抱き合った。泣きながら抱き合った。みんな嬉しさで声も出ない。さっきまで其処にいた絶望は霧散して消えた。今はただただただ嬉しい!!!
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