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どこへ行くんですか?
しおりを挟む商談を終えたアレクは玄関の扉を出たところで妹のソニアと二人並んで立っている。
ソニアの着ているメイド服は商館がサービスしてくれたものである。
「さて、これで君は晴れて自由の身だ。では、僕はこれにて失礼するよ」
ソニアに別れを告げてアレクは歩きだす。
ところが、二歩目を踏み出そうとしたとき、身体は前に出ようとしているのに、進むことができなかった。
振り返って見ると、ソニアがアレクの服の袖を掴んでいたのだ。
メイド服を着た猫耳少女が遠慮がちにチョコっと袖を摘まんでいる姿はやはり可愛かった。
それでも構わず、さっきよりも少し強く踏み出す。やはり前に進めない。
振り返ると体重を後ろに預けて必死に袖を摘まんでいるソニアがいた。
「ソニアさん、離してもらえませんかね?」
「どこへ行くんですか、アレクさん」
「君には関係のないことだろ」
「関係ありますよ。姉さんはどうするんですか。アレクさんが迎えに行くって言っておきながら、金貨300枚を調達する目途はあるんですか?」
「もちろん考えてあるさ」
無論、嘘である。あの商談では資金調達する目途までは立てていない。だが、妹にそのことを見抜かれるわけにはいかない。
「だったら、私もついていきます。アレクさんが姉さんを見捨てるような人でないかどうか監視させていただきます。それに、アレクさんが私を購入したんですから、面倒をみてください」
やれやれ、監視をされていては金貨300枚を踏み倒すことはできそうにないな。どうやら資金を調達する目途を考えなくてはいけないようだ。確かに、姉から妹をよろしく頼むと言われていたしな。
こうなったら仕方ない。
「わかったよ。とにかく監視は14日間だけだからな」
こうしてアレクとソニアの14日間の共同生活が始まった。
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