花火の思い出

ちちまる

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花火と時の彼方へ

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港町の小さな丘からは、毎年夏の終わりに行われる花火大会の全景が見渡せた。今年も多くの人々がその光景を楽しみに集まっていた。中でも高校生の晴香と彼女の幼なじみである大輔は、いつもと変わらない場所に座っていた。しかし、晴香にとって今夜はただの花火大会ではなかった。彼女は、失った時間を取り戻すため、ある計画を胸に秘めていた。

「大輔、ねえ、もしも時間を戻せるとしたら、何をしたい?」晴香がふと訊ねる。

「時間を戻せるって、どういうこと?」大輔は彼女の真剣な表情に少し驚きつつも答えた。「うーん、もう一度、おじいちゃんと釣りに行きたいな。あの時はもっと大事にすればよかったっていつも思ってるから。」

晴香はそっと微笑んだ。彼女のタイムリープの計画は、大輔にとっても意味があるものになりそうだった。

夜空を彩る花火が最高潮に達する頃、晴香は大輔の手を引いて、丘の裏に隠された古びた神社へと連れて行った。そこには晴香が何ヶ月もかけて集めた古代のお札やアーティファクトが並べられていた。

「これ全部、何のために?」大輔が訊ねる。

「タイムリープするためよ。今夜の花火が終わるまでに、私たちは過去に戻って、おじいちゃんに会ってくるの。」晴香の声は決意に満ちていた。

二人は神社の中で儀式を始めた。晴香が集めたアイテムと特別な呪文で、時間の扉を開く。突然、周囲の空気が震え、時間が逆行する感覚に包まれた。

目を開けると、二人は五年前の港町にいた。大輔のおじいちゃんが生きている時代だ。街の様子は今とは少し違い、懐かしさを感じさせる。

「これが、あの時の…」大輔は感慨深げに辺りを見回した。

晴香と大輔は大輔のおじいちゃんの家へと急ぎ、幸いにもおじいちゃんは家にいた。一日だけの限られた時間だったが、大輔はおじいちゃんと心ゆくまで釣りを楽しんだ。晴香は二人の幸せな時間を温かく見守る。

夕方になり、再び花火大会の日に戻る時間が迫っていた。おじいちゃんとの別れは涙なしではいられなかったが、大輔は心から感謝の言葉を伝えた。

「おじいちゃん、今日は本当にありがとう。また会いに来るからね。」

晴香と大輔は再び儀式を行い、現代へと戻る。神社の中で目を覚ますと、外ではまだ花火が上がっていた。タイムリープに成功し、二人は無事に戻ってこれたのだ。

「晴香、ありがとう。今日は一生忘れないよ。」大輔は深く感謝し、晴香に抱きついた。

「うん、私も。大輔と一緒に過去へ行けて本当に良かった。」晴香の目には涙が光っていた。

花火が終わり、夏の終わりが近づく。しかし、晴香と大輔にとっては新たな始まりの予感がしていた。時間を超えた冒険は彼らの絆をさらに深め、これからの日々をより豊かなものにしていくことだろう。

花火の光が彼らの新しい章のスタートを告げるように、静かに夜空で輝き続けた。
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