タイムリープの短編小説

時を超えて、君を愛す

ある雨の日、薫は古ぼけた日記を見つけた。それは彼女の曾祖母が若い頃に書いたものだった。ページをめくるごとに、彼女は1910年代の東京へと誘われる。その日記には、時代を超えた一途な恋が綴られていた。

「薫」という名前が何度も登場する。それは偶然にも薫自身の名前であり、曾祖母の初恋の人の名でもあった。彼女は自分と同じ名を持つ過去の人物に強く惹かれるようになる。

ある晩、薫は夢の中で1920年の東京にタイムスリップする。そこで彼女は青年「薫」と出会う。彼は驚くほど自分と似た悩みを抱えており、二人はすぐに意気投合する。夢から覚めた薫は、それがただの夢ではなく、何か特別な繋がりを感じていた。

日が経つにつれて、彼女は夢の中で青年薫と会うことが日常となる。時間が異なるにも関わらず、二人の間に芽生えた感情は現実のものと変わらなかった。

しかし、夢の中での出会いが重なるうち、薫は自分がタイムスリップを続ける理由を知ることになる。それは、曾祖母の失恋の後悔を解消し、歴史を修正するためだった。曾祖母は青年薫と結ばれることなく、他の人と結婚してしまったのだ。

薫は自分の幸せと曾祖母の願い、どちらを取るべきか葛藤する。現実世界で彼女を待っているのは優しくて理解ある恋人。しかし、タイムスリップの旅が続くうちに、過去の薫に対する感情が深まっていく。

ある夜、曾祖母の日記の最後のページを読んだ薫は、重大な決断を下す。彼女は夢の中で青年薫と結ばれることを選ぶ。その瞬間、タイムスリップは終わりを告げ、薫は現代に戻される。

目覚めた薫の手元には、青年薫との写真が残されていた。それは彼女の心の中での選択が、時間を超えた真実だったことを証明していた。

現実に戻った薫は、過去との深い絆を胸に新たな一歩を踏み出す。彼女は過去を通じて学んだ愛という感情を大切にしながら、自分自身の人生を豊かに生きていくことを誓う。

結局、時間を超えた恋は、彼女にとって最も真実の愛だった。そして、それは過去だけでなく、未来にも希望をつなぐものとなった。