タイムリープの短編小説

ちちまる

文字の大きさ
4 / 11

時の狭間で繋がる心

しおりを挟む

ある晩、夢の中で、俊也は不思議な時計を手に入れた。その時計は金色に輝く古風なポケットウォッチで、数字が光に溶けるように変わり、時には逆さまになることもあった。目覚めたとき、その時計は枕元に実際に存在していた。

学校への道すがら、俊也は時計をじっと眺めていた。すると、時計の針が急に早回りし始め、彼の周囲の景色がぼやけ、時が流れる音が耳を打った。気が付くと、彼は20年前の世界にいた。

周囲は見知らぬ風景で、人々の服装も明らかに古かった。彼はそこで、学生服を着た少女、美月と出会う。美月は何かを探しているようだったが、俊也の現れる前には誰も彼女の話に耳を貸してはいなかった。彼女の一生懸命さに心を打たれた俊也は、彼女を手伝うことを決める。

美月が探していたのは、彼女の祖母から受け継がれたという家族の形見のネックレスだった。二人は学校や公園、図書館と探し回り、その過程で次第に互いに惹かれあっていく。美月の素直で明るい性格が、時代を超えた彼の心に新しい光を灯したのだ。

探し物をしている間、俊也は美月に現代の技術や文化について話すことが多くなり、美月はそれに興味津々だった。しかし、ある日、俊也が時計を見ると、針が再び動き出した。時間は彼を現代へと引き戻そうとしていた。美月に別れを告げる時間が迫っていた。

「美月、もしもこの時計がまた僕をここへ連れてきてくれたら、また会おうね。」

美月は涙を浮かべながら笑顔で応じた。「うん、絶対に!」

俊也が目を閉じると、時間の波が彼を包み込み、彼は現代に戻された。ポケットの中には、美月との思い出と、彼女が見つけたネックレスが残されていた。それを手に取り、彼は深い愛おしさを感じながらも、切なさに胸を締め付けられた。

日々が過ぎ、俊也は大学を卒業し、教師となった。ある日、新しく赴任した学校で、彼は美月にそっくりな少女に出会う。彼女の名前は「美月」。祖母から聞いた不思議な話と、伝えられたネックレスを大切にしていると言う。

「俊也先生、私の祖母がよく話していたんです。時計を持った優しい人が、未来から来たって。」

その瞬間、俊也の心は時間を超えた絆で再び繋がったことを実感した。二人の間に流れる空気は、何か特別なもので満ちていた。時間を超え、再び巡り会えた奇跡に、俊也はただ、深く感謝の気持ちを抱いた。彼らの新たな物語が、今、始まろうとしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...