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逆時差の恋
しおりを挟む秋の終わり、東京の小さな公園で、梓はふとしたきっかけで古い時計を手に入れた。この時計は外見が美しく、装飾が施されたアンティークで、何となく異国の雰囲気を醸し出していた。しかし、その時計には奇妙な特徴があった。時計の針は逆回りに動いていたのだ。
梓がその時計を手にしてから、不思議な現象が彼女の周りで起こり始めた。ある晩、彼女はその時計を見つめていると、部屋の景色がぼやけてきて、時間が巻き戻っていく感覚に包まれた。気が付くと、彼女は昭和の時代の東京にいた。そこで彼女は幼い頃に亡くなったはずの祖母に出会い、彼女から時計の秘密を聞かされる。
「この時計は、時を越えて大切な人と再会するためのものよ。だけど、使うたびに何かを犠牲にしなければならないの。」
梓はその言葉を胸に、時計を使って過去を訪れるようになった。ある日、彼女が1960年代のカフェでコーヒーを飲んでいると、偶然にもその場にいた青年、隼人と目が合った。隼人は写真家としてその時代を駆け巡っており、梓に興味を持ち、話しかけてきた。
二人はすぐに意気投合し、何度も時間を超えて会うようになった。隼人は梓が未来の人間であることを知りながらも、彼女のことを深く愛するようになる。彼らは時の流れが異なる中で、短い時間を共有することに幸せを感じていた。
しかし、梓が時計を使うたびに、彼女の現代の記憶が少しずつ薄れていくことに気づき始めた。ある日、梓は隼人との最後のデートを決意する。二人は東京の古い公園で会い、最後の時間を過ごす。
「隼人、私はもうこの時計を使うのをやめることにしたの。君との思い出は永遠に私の心の中に残るわ。」
「梓、君と過ごした時間は僕の人生で最も輝かしい瞬間だった。時計の力がなくとも、僕の心の中で君は生き続ける。」
涙を流しながら別れを告げる二人。梓は時計を公園のベンチの下に置き、現代に戻った。戻った彼女の前には、隼人からの手紙が一通。彼が死ぬ前に残した最後の言葉が記されていた。
「梓へ。君との時間は、この世界で最も美しい贈り物だった。ありがとう。いつかまた、どこかで。愛を込めて、隼人より。」
梓は手紙を胸に抱き、時計を通して得た愛と失った痛みを感じながら、新たな日々を歩み始めた。過去との出会いが彼女の未来を形作る中で、彼女は自分の運命を受け入れ、前に進む勇気を見つけたのだった。
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