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過去からのメッセージ
しおりを挟む美穂は、祖父が亡くなった後、古い日記と一緒に奇妙な時計を見つけた。時計はただのアンティークのように見えたが、日記にはその時計に秘められた力について記されていた。それは過去へと繋がる道具だという。信じがたい話だったが、美穂は試しにその時計を使ってみることにした。
彼女が時計の針を逆回りに動かすと、周囲の景色がぼやけ、気がつくと彼女は昭和の時代に立っていた。その時代の街並み、服装、雰囲気は今の日本とは全く違っており、美穂はその変化に圧倒されつつも、何かを探すようにその街を歩き始めた。
そのとき、彼女はひょんなことから陽一という青年と出会う。陽一はその時代の若者で、彼と美穂はすぐに意気投合し、互いに惹かれあうようになった。美穂は陽一に現代のことを少しずつ教え、陽一は昭和時代の日本の生活や文化を彼女に紹介した。二人の時間は、まるで別世界のように美しく、充実していた。
しかし、美穂は自分が元の時代に戻らなければならないことを知っていた。彼女は陽一に真実を打ち明けることに決めた。彼女が未来から来たと知った陽一は驚き、当初は混乱したが、次第に二人の間に生まれた絆の深さを理解し、美穂の決断を受け入れた。
最後の日、美穂と陽一は手を繋ぎながら町を歩き、お互いの未来について語り合った。陽一は美穂に「君との記憶を、僕は一生大切にするよ。いつか、どこかでまた会えたらいいね」と言い、美穂も涙を流しながら「私も、陽一。この時計を通じて君と出会えたことを決して忘れないわ」と答えた。
美穂が時計の針を元に戻すと、彼女は現代に戻された。手元には陽一からもらった古い写真が残っており、彼の笑顔が彼女を励ましていた。彼女はその後、陽一との思い出を胸に秘め、現代での生活を再開したが、時折その時計を見ては、過去の甘く切ない記憶に浸った。
数年後、美穂はある文献で昔の陽一のことを偶然知ることになる。彼は後に影響力のある作家となり、彼女と過ごした時間をモデルにした小説を残していた。その小説を読む美穂は、陽一が彼女に感じた愛と尊敬を改めて知り、過去と現在、二人の心が時を超えてつながっていることを実感する。美穂は、もしかしたら彼女もまた、陽一への返答として何かを残せるかもしれないと思い始め、自らもペンを取るのだった。
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