タイムリープの短編小説

ちちまる

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時を越えた手紙

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夕暮れ時、風に舞う桜の花びらがひらひらと降り注ぐ中、絵里は祖母の遺品整理で見つけた古い手紙を手にしていた。その手紙の束は見慣れぬ筆跡で、誰かへの強い思いが込められたものだった。手紙は祖母の若い日の恋人からのもので、その文面からは時間を超えた切ない愛が伝わってきた。

絵里がその手紙を読んでいると、突然、手紙の束から古ぼけたペンダントウォッチが滑り落ちた。それは明らかに古く、しかし緻密に作られた美しいもので、彼女の心を奪った。絵里はその時計を手に取った瞬間、不思議なほどの眩暈を感じ、目を開けると、昭和の時代にタイムスリップしていた。

目の前に広がるのは戦後の復興期の日本、その活気ある日常が絵里を圧倒した。彼女は偶然、手紙の主である青年、慎也と出会う。慎也は祖母が若い頃に心を寄せていた人物で、絵里は慎也が持つ温かな眼差しや優しさに惹かれていく。

慎也と過ごすうちに、絵里は彼が過去に残してしまった祖母への未練を知る。手紙はすべて未送信のものだったのだ。彼女は慎也を励ますため、そして祖母の若い日の姿をもっと知るために、彼と共に過去を紐解いていった。

絵里は慎也と共に多くの時間を過ごし、次第に彼に対する深い感情を抱くようになる。しかし、彼女はこの時代には留まることができず、やがて現代に戻る必要があることを知っていた。その別れの時が近づくにつれ、絵里の心は苦しみでいっぱいになる。

「慎也、私は未来に戻らなくてはならないの。でも、あなたのことは決して忘れないわ。この時計を持って、私たちの時間をいつまでも心に刻んでおくね。」

「絵里、君がいてくれたから、僕は過去の後悔に囚われずに済んだ。ありがとう。どうか未来で幸せになってくれ。」

二人は別れを告げ、絵里は現代に戻った。彼女の手元には、慎也からの最後の手紙が残されていた。それを読みながら、絵里は彼との出会いが自分の人生をどれほど豊かにしたかを感じ、涙を流した。

絵里は現代でその手紙を大切に保管し、祖母と慎也の物語を家族に語り継いでいく。そして、時を超えた愛の証として、そのペンダントウォッチをいつも身につけていた。時間が流れるごとに、絵里は慎也の言葉を胸に、前を向いて歩いていった。彼らの愛は、時間を超えて未来へと続いていくのだった。
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