夏の思い出

ちちまる

文字の大きさ
1 / 11

かき氷の記憶

しおりを挟む

暑い夏の日、街の小さなかき氷屋『氷結の夢』は、色とりどりのかき氷で賑わっていた。この店の特別なかき氷は、見た目だけでなく、その味も人々の心を掴んで離さない。店の主人は、かき氷を通じて多くの人々の心を温かくする魔法を持っていたと言われていた。

ある日、この店にふたりの若者が訪れた。一人は、明るく社交的な性格の陸、もう一人は、静かで内向的な美穂だ。二人は大学で出会い、友人として時を過ごしていたが、陸は密かに美穂に想いを寄せていた。

「美穂、何色にする?」

陸の質問に、美穂は店内を見渡し、静かに答えた。

「青いレモンがいいな。」

青いレモンのかき氷は、この店の名物で、見た目の美しさと爽やかな味で知られていた。二人は店の奥の席に座り、かき氷を待ちながら、夏の風物詩について話をした。

やがて、かき氷が運ばれてきた。鮮やかな青い氷に、レモンのスライスがトッピングされている。美穂は目を輝かせ、初めて見る色のかき氷に感動した。

「わあ、綺麗…!」

陸は美穂の反応に心を弾ませ、自分も同じかき氷を注文していたことを嬉しく思った。二人は静かにかき氷を楽しみながら、夏の日差しを感じていた。

食べ進めるうちに、美穂は陸に向かって言った。

「陸、ありがとう。こんなに素敵な場所を教えてくれて。」

陸は少し照れくさい笑顔を浮かべながら、美穂の方を見つめた。

「美穂、実はね、ずっと言いたかったことがあるんだ。」

美穂は陸の真剣な眼差しに、心の中で何かが動いたのを感じた。

「美穂、僕は…僕はずっと君のことが好きだったんだ。」

この言葉に、美穂は驚き、そして、何かを悟ったように優しい笑顔を見せた。

「陸、私も…私もずっと、あなたのことを…」

かき氷の冷たさとは対照的に、二人の間には暖かな空気が流れていた。青いレモンのかき氷は、彼らの特別な記憶となり、これからもずっと彼らの心の中で輝き続けるだろう。

かき氷を囲んで始まった新たな物語は、『氷結の夢』の小さな奇跡の一つとして、町の人々に語り継がれることになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

痩せたがりの姫言(ひめごと)

エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。 姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。 だから「姫言」と書いてひめごと。 別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。 語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

M性に目覚めた若かりしころの思い出 その2

kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、終活的に少しづつ綴らせていただいてます。 荒れていた地域での、高校時代の体験になります。このような、古き良き(?)時代があったことを、理解いただけましたらうれしいです。 一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

処理中です...