夏の思い出

ちちまる

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夏の肝試し

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夏休みのある日、郊外の古びた神社で「肝試し」が開催されることになった。主催は地元の中学校の生徒会で、夏の風物詩として毎年恒例のイベントだった。

「今年は特に怖い仕掛けを用意したから、楽しみにしてて!」
生徒会長の慎也は、参加者たちにそう告げながら、密かに微笑んだ。彼と生徒会のメンバーは、数週間前から夜な夜な神社で仕掛け作りに励んでいたのだ。

イベント当日、夕暮れ時に集まったのは、学年の勇気ある(あるいは好奇心旺盛な)生徒たち。中でも、一番の怖がりながらも興味津々なのは、転校生の美咲だった。彼女はこの夏、町に越してきたばかりで友達も少なく、何とかしてクラスに溶け込もうとしていた。

「大丈夫、美咲。一緒に行こうよ!」
彼女の隣にいた隼人は、そう言って励ます。隼人はいつもクラスで面倒見の良い男子で、美咲も安心して彼についていくことにした。

夜が深まるにつれて、神社の境内は薄暗く、幻想的な雰囲気に包まれていった。慎也たちが用意した仕掛けは、一層その雰囲気を盛り上げる。偽のお札が風に舞い、足元では突然、軽い霧が発生し、参加者たちの足を止めさせた。

「きゃっ!」
美咲が小さく悲鳴を上げると、隼人がすぐに手を取って「大丈夫、ただの仕掛けだから」と笑った。美咲はそれに少し笑い返し、二人の距離はぐっと縮まった。

神社の最深部に設けられた「最後の試練」の場所に到達した時、そこには大きな鳥居があり、その下に何かがぼんやりと見えた。

「これが最後の仕掛けかな?」
隼人が言うと、美咲は恐る恐るその形を認識し始めた。それは大きなお面をかぶった何者かが静かに立っているのだった。

突然、お面の者が動き出す。美咲は思わず隼人の背中に隠れた。しかし、その者が口を開いた瞬間、場の空気が変わった。

「よくぞここまで来た!勇気を見せた二人には特別な賞を用意してある。」

声の主は生徒会長の慎也だった。彼はお面を取り、にっこりと笑った。実はこれが生徒会の「最後の試練」、肝試しの最後に用意されたサプライズだったのだ。

美咲はホッと一息つき、隼人と顔を見合わせて笑った。二人がそうしている間に、慎也は小さなトロフィーを二人に手渡した。

「肝試しを通じて、勇気と友情を深めた証だよ。」

イベントが終わり、帰り道、美咲は隼人に感謝の言葉を述べた。

「今日は本当にありがとう。おかげで少しは友達もできたかな。」

隼人はにこりとして、「うん、これからもよろしくね。友達としてだけじゃなくて、もっといい関係になれたらいいな」と言い、美咲の手を握った。

美咲は少し顔を赤くして頷いた。肝試しはただのイベントではなく、二人にとって大切な一歩となった。夏の夜は更に深まり、新たな関係の芽生えを告げていた。
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