ホラー小説のお話

ちちまる

文字の大きさ
上 下
6 / 11

霧の中の古びた館

しおりを挟む

ある冬の夜、厚い霧が町を覆っていた。冷たい空気と静寂が混ざり合い、不気味な雰囲気を作り出していた。町のはずれに位置する古びた館は、何十年もの間、訪れる者がなく、廃墟と化していた。

マリアは、その古びた館の噂を耳にし、友人のトムとリナと共に冒険心を抑えきれずに訪れていた。彼らは、地元の伝説に興味を持ち、霧の中を進んでいった。館の大きな扉を開けると、古い木の床がきしむ音が響き渡った。

「ここはやばいぞ…」トムが小さな声で言った。

「大丈夫、ただの古い家よ。」リナが返したが、その声にも不安が隠せなかった。

彼らは、懐中電灯を手に、館内を探検し始める。ほこりで覆われた家具、壁にかけられた古い肖像画、そして突然の風に揺れるカーテン。全てが彼らの心に恐怖を植え付けた。

進むにつれ、マリアは足下の床板が急にぐらついたことに気づく。彼女が驚いていると、突然、床板の下から人の手が伸びてきた。叫び声を上げる間もなく、彼女はその手に引きずり込まれそうになる。

トムとリナは必死にマリアを引っ張り、なんとかその場から逃れた。彼らは息を切らせながら、階段を上がって2階へと逃げ込む。その時、彼らは背後から不気味な声を聞いた。

「ここからは…逃げられない…」

その声は、館にまつわる伝説の真実を物語っているかのようだった。伝説によると、この館はかつてある一族によって建てられ、彼らが行った禁断の儀式のせいで、呪われた存在が閉じ込められているという。

彼らはその声の主を見つけるため、勇気を振り絞って2階を探検する。廊下の突き当たりにある部屋から、かすかな光が漏れているのを見つけた。扉を開けると、部屋の中央には古びた魔術の書が置かれた台座があり、その周りを蝋燭の光が照らしていた。

突然、部屋の隅から影が動き出し、彼らの前に現れた。それは、館の主である一族の末裔を名乗る老婆だった。老婆は彼らに、館を訪れた者は皆、館の呪いに囚われ、永遠にこの場を離れることができなくなると告げた。

マリアたちは恐怖に震えながらも、館の呪いを解く方法を尋ねる。老婆は、彼らが真実の勇気を持って館の秘密を解き明かすことができれば、呪いを解く鍵を手に入れることができると語った。

そして、彼らは館の深奥に隠された秘密の部屋へと向かい、禁断の儀式が行われた場所を発見する。その場所で、彼らは過去の過ちを認め、一族の霊たちに謝罪することで、ついに呪いを解くことに成功した。

館から脱出したマリアたちは、夜明けと共に霧が晴れるのを見ながら、新たな希望と勇気を胸に刻み込んだ。しかし、彼らが去った後も、古びた館はその場に佇み続け、次の訪問者を待っているかのようだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

三鏡草紙よろづ奇聞[次話更新5月18日〜]

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:3

運命の番を見つけることがわかっている婚約者に尽くした結果

恋愛 / 完結 24h.ポイント:13,342pt お気に入り:257

あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7,029pt お気に入り:1,659

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:9,444pt お気に入り:3,098

悪役令嬢の短編小説

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:2,392pt お気に入り:2

処理中です...