ホラー小説のお話

霧の谷の呪い

霧深い谷間にひっそりと佇む小さな村、ミストハーロウ。この村には古くから伝わる呪いがあった。毎年、春の訪れと共に濃い霧が谷を覆い、その霧の中から人々を呼び寄せる声が聞こえるという。声に従った者は決して村に戻ることがなかった。

サラはこの村の外からやってきた若い女性で、失踪した兄を探してミストハーロウを訪れた。村の人々は彼女に警告した。春が近づき、霧が谷を覆い始めるこの時期には、絶対に外に出ないように。しかし、サラにはそれを聞く耳がなかった。兄を探す決意が彼女を動かしていた。

そして、その夜、予告されていたとおり濃い霧が谷を覆い始めた。霧の中から、ほのかに兄の声が聞こえてくるような気がしたサラは、思わず外に飛び出してしまった。霧は次第に濃くなり、やがて彼女は自分がどこにいるのかわからなくなった。

霧の中でサラは不思議な出来事に遭遇する。彼女の前に現れる幻影、消えたはずの人々の声、そして、彼女を導く謎の影。サラはこれらの手がかりを追い、霧の谷の奥深くへと進んでいった。

深い霧の中、サラはついに廃墟と化した古い館にたどり着く。館の中では、兄の姿が見えた。しかし、彼は何かに取り憑かれているかのように奇妙な振る舞いをしており、サラの呼びかけにも反応しない。

やがて、サラはこの館が呪いの源であることを知る。何世紀も前、この地を支配していた貴族が行った禁断の儀式が原因で、谷には邪悪な力が宿っていたのだ。そして、その力は春の霧とともに目覚め、犠牲者を求める。

サラは兄を救い出すため、そして呪いを解くため、古い記録と地元の伝説を頼りに儀式の逆転を試みる。恐怖と戦いながら、彼女は邪悪な力に立ち向かい、ついには霧を晴らす鍵となる秘密を解き明かす。

霧が晴れ、谷は再び平和を取り戻した。サラと兄は無事に村へと戻ることができた。しかし、彼らが経験した恐怖の記憶は、決して消えることはなかった。ミストハーロウの村人たちも、二人が霧の中から戻ってきたことを奇跡と称えた。

サラが解いた呪いの物語は、後世に語り継がれることとなった。しかし、谷を覆う霧が再び濃くなるたびに、人々はかつての恐怖を思い出し、深い敬意をもってその力を畏れるのだった。