巫女の恋愛小説

神秘の絆

春の兆しがまだかすかに残る初夏の日、古びた神社で巫女として働く美咲は、ひそやかに心を寄せる人物がいた。その人物は、学生時代の友人であり、今は都会で働く青年・悠斗だ。彼が久しぶりに故郷に帰ってくると聞いた時、美咲の胸は期待で高鳴った。

「久しぶり、美咲。相変わらず、この神社は静かだね。」

悠斗の声に振り返ると、そこには昔の面影を残しつつも、どこか大人びた彼が立っていた。彼の笑顔は変わらず、しかし美咲にはその瞳の奥に秘められた疲れも見え隠れしているように思えた。

「悠斗くん、おかえりなさい。こちらこそ、変わりなくてごめんね。」

美咲は無意識のうちに自嘲気味に笑ってしまう。悠斗はそんな彼女を見て、ふっと柔らかく笑った。

「いや、それがいいんだ。ここに帰ってくると、何か心が落ち着くよ。」

その日は神社で少し時間を過ごした後、二人は近くの川辺を散歩した。春の名残の桜がちらほらと花びらを散らし、水面は静かに輝いていた。美咲は少し緊張しながらも、悠斗との会話を楽しんでいた。

「ねえ、悠斗くん。都会ではどんな生活をしてるの？」

「うーん、忙しいけど、充実してるよ。でも、たまにこの神社の静けさが恋しくなるんだ。」

会話の中で、悠斗が抱える仕事のストレスや、都会の生活に対する疲れが垣間見えた。美咲は心中で彼を励ます言葉を探したが、上手く言葉にできずにいた。そんな彼女のためらいを察したかのように、悠斗が静かに話を切り出した。

「美咲、お前はここで何を感じている？」

「私？私は...この神社が好き。ここで過ごす時間、神様に仕えることが、私にとってとても大切なんだ。」

「そうか、お前らしいな。」

悠斗の言葉に、美咲はほっと息をついた。そして、彼女は勇気を出して、小さな声で自分の気持ちを打ち明けた。

「でも、悠斗くんがいると、もっと特別な気持ちになるよ。」

彼女の告白に、悠斗は少し驚いた表情を見せたが、やがて優しく微笑んで、美咲の手を握った。

「美咲、ありがとう。俺も、お前がいるから、またここに帰って来たいと思うんだ。」

川辺で交わされた言葉は、二人にとって新しい始まりの予感を秘めていた。彼らの関係は、まだ始まったばかりで、これからどのように展開していくかは誰にも予測できなかったが、その瞬間、美咲は自分の選んだ道と悠斗という存在が、自分にとってどれほど大切であるかを改めて感じていた。そして、神社の神秘的な力が、二人の未来に祝福をもたらすことを信じていた。