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五月の月の影
しおりを挟む五月の月は、まるで研ぎ澄まされた銀の剣のように、夜のヴェールを貫いていた。
新緑の葉が月光に照らされ、まるで自然のオーケストラのような美しい景色を作り出していた。
その中、小川のほとりで、裕也と彩乃が密やかに手をつないでいた。
二人は幼馴染で、同じ村で生まれ育った。
子どもの頃からの無邪気な日々を共有し、成長する中で互いの変化を寄り添い合って感じ取ってきた。
しかし、最近裕也は彩乃の笑顔に胸が締め付けられるような感覚を覚えるようになった。
それは彼が彩乃に対して抱く、ただの友情以上の気持ちを意味していた。
「彩乃、五月の月、綺麗だね。」
裕也はそっと彼女に話しかけた。
彩乃はゆっくりと頷き、「うん、何となく切なくて、でも温かい気持ちになるね」と返した。
裕也は彩乃の顔を見つめ、勇気を振り絞って告白した。
「彩乃、実は…君のことが好きだ。」
彩乃は驚いたように目を見開いたが、すぐに柔らかい微笑みに変わった。
「裕也…私も同じだよ。でも、友情を壊したくなかったから、この気持ちを隠してきた。」
五月の月の下、二人は互いの気持ちを知り、新しい関係の第一歩を踏み出した。
しかし、裕也には彩乃には言えない秘密があった。
彼はこの夏、遠くの大学へ進学することになっていた。
彩乃との距離が遠くなることを恐れ、彼はこの秘密を彼女に隠していた。
とはいえ、五月の月の下で結ばれた約束は、裕也の心に深く刻まれていた。
彼は彩乃に真実を告げる決意を固め、その夜の出来事を胸に秘めつつ、彩乃の手をしっかりと握った。
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