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さくらんぼの季節の約束
しおりを挟む深紅に色づくさくらんぼが夏の訪れを告げる町、それはユウとマイが育った場所だった。二人は子供の頃からの親友で、毎年さくらんぼの収穫が始まると、果樹園で一緒に遊びながら実を摘んでいた。
ユウは大学卒業後、地元の果樹園で働き始め、マイは都会でグラフィックデザイナーとしてキャリアを築いていた。彼らの生活は異なる方向に進んでいたが、さくらんぼの季節だけは毎年、必ず町に戻ってきて一緒に過ごすという約束があった。
「今年も美味しいさくらんぼがたくさんだね。」ユウが収穫したばかりのさくらんぼをマイに差し出すと、彼女はそれを受け取りながら微笑んだ。
「本当に。毎年この時期が楽しみで。ユウとの時間も、もちろん。」
彼女の言葉にユウは心を動かされた。いつしか友情以上の感情を抱き始めていた彼は、その感情をどう伝えればいいのか悩んでいた。
ある日、二人で果樹園を散歩している時、ユウは勇気を出してマイに自分の気持ちを打ち明けることにした。
「マイ、実はずっと前から言いたいことがあるんだ。僕、マイのことが好きだ。もう友達以上の感情を持っている。」
マイは驚きながらも、ユウの目をじっと見返した。
「ユウ、私もよ。でも、私たちの距離って、どうなるの?私は都会で仕事があり、ユウはここで...」
彼女の言葉に、ユウは深く考え込んだ。確かに彼らの現実は簡単ではなかった。しかし、ユウは決心していた。
「マイ、俺たち、距離があっても大丈夫だと思う。さくらんぼの季節には必ずここで会えるし、他の時期もお互いを信じて頑張れば、何とかなるはずだ。」
その言葉にマイは涙を浮かべながら頷いた。
「私もそうしたい。ユウ、信じているから。」
二人はさくらんぼの木の下で抱き合い、これからの未来を約束した。それからの日々、マイは都会で働きながらも、ユウのいる町を頻繁に訪れるようになった。ユウも彼女の都市の生活を支えるため、オンラインで果物を販売するビジネスを立ち上げ、彼女のデザインスキルを生かして彼のビジネスを助けた。
やがて、彼らの距離は心の距離を縮めることで克服され、二人はそれぞれの夢を追いながらも、一緒にいる時間を大切にした。さくらんぼの季節は毎年彼らにとって特別な時期となり、そのたびに彼らの愛はより深まっていった。
最終的にマイは都会の生活を手放し、ユウのもとに移り住む決断をした。町での新たな生活の中で、二人は共に果樹園を大きくし、地域社会に貢献することで、さらに多くの人々とのつながりを深めていった。
そして何年も後、二人はその果樹園で結婚式を挙げた。式の日、彼らはさくらんぼの木の下で改めて誓いを交わし、これからも共に生きることを誓った。さくらんぼの赤い実が彼らの愛の証として、毎年彼らのもとに幸せを運んできたのだった。
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