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おみくじの恋文
しおりを挟む毎年、新年が明けると多くの人が神社で一年の運勢を占うためおみくじを引く。その年も、杏里と洋介は地元の神社でおみくじを引くことにした。二人は高校の同級生であり、卒業後も良い友人としての関係を続けていた。
寒い元日の朝、杏里は洋介と待ち合わせ、一緒に神社へと向かった。彼女は内心、この日をとても楽しみにしていた。なぜなら、彼女はずっと洋介に対して特別な感情を抱いており、新しい年になったことを機に、その想いを伝えたいと考えていたからだ。
神社に到着し、二人は参拝を済ませた後、おみくじコーナーへと向かった。杏里は「大吉」を引くことを願いながらおみくじを引いたが、出てきたのは「凶」だった。一方、洋介は彼女とは対照的に「大吉」を引き、嬉しそうに笑った。
「凶かぁ、ちょっと気をつけないとね」と杏里が落ち込んでいると、洋介は励ますように言った。「大丈夫、僕がついてるよ。何かあったらいつでも頼ってね。」
杏里は洋介の優しさに心を打たれたが、自分が引いた「凶」という結果に不安を感じ、その場で気持ちを伝えることができなかった。
その後の数週間、杏里の頭の中は洋介への想いでいっぱいだった。しかし、彼女が引いた「凶」のおみくじが頭から離れず、恋愛運が悪いのではないかと思い悩んでいた。
ある日、杏里は再び神社を訪れることにした。一人で静かに参拝し、もう一度おみくじを引いた。今度は「中吉」が出て、その中には「新たな出会いがあるかもしれない。勇気を持って一歩を踏み出せ」と書かれていた。
心が少し軽くなった杏里は、洋介に会って気持ちを伝える決心を固めた。彼女は洋介をカフェに誘い、二人でお茶をしながら、思い切って自分の気持ちを打ち明けた。
「洋介、実はずっと前からあなたのことが好きだったの。新しい年になって、もう隠しておくのはやめたいと思って。」
洋介は少し驚いた表情を見せたが、すぐに優しい笑顔に変わり、「杏里、ありがとう。実は僕も、ずっと君のことを考えていたんだ。おみくじに振り回されることなく、僕たちの気持ちはきっと良い方向に進むよ」と答えた。
二人はその日から、友人以上の特別な関係となり、共に多くの時間を過ごすようになった。おみくじがきっかけで始まった杏里と洋介の物語は、それぞれの不安を乗り越え、新しい愛の形を築いていった。そして、毎年元日には二人で神社を訪れ、おみくじでその年の運勢を占うのが恒例となった。それは彼らにとって、新たな年と共に歩む愛の確認の瞬間であり、二人の絆を深める大切な時間となっていった。
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