野球の小説

ちちまる

文字の大きさ
2 / 7

青空の下のホームラン

しおりを挟む

青空の下、草の香りが漂うグラウンド。風がそよぎ、遠くでカラスの鳴き声が響く。少年たちの元気な声が響き渡る。彼らは、小さな田舎町の野球チームに所属している。少年たちの目は輝き、心には勝利への熱い想いが燃えていた。

主人公は、一郎。小柄だが俊敏で、素早い動きが自慢だ。彼の夢はプロ野球選手になること。毎日放課後になると、グラウンドに駆けつけ、ボールを追いかけていた。一郎の父親も元野球選手であり、彼にとって野球は特別な意味を持っていた。父が亡くなった今、一郎は父の夢を自分の夢に変えた。

ある日、町内の強豪チームとの試合が決まった。一郎たちは練習に励み、勝利を目指して努力を続けた。しかし、相手チームは体格も技術も格上で、一郎たちには厳しい戦いが待っていた。コーチの中村さんは、少年たちに言った。「試合は技術だけではなく、心の強さも試されるんだ。諦めない心を持て。」

試合当日、一郎は緊張と興奮で胸が高鳴っていた。彼の母親も応援に駆けつけ、観客席から見守っていた。試合が始まり、相手チームの圧倒的な強さに圧され、一郎たちは苦戦を強いられた。しかし、一郎は諦めなかった。彼は父の言葉を思い出した。「一球一球に全力を尽くせ。それが野球の醍醐味だ。」

試合は終盤に差し掛かり、一郎のチームは3点差で負けていた。最後のチャンスが訪れた。2アウト、満塁の場面で一郎に打順が回ってきた。彼の心は静かに燃えていた。仲間たちの期待と、父の夢を背負い、一郎はバッターボックスに立った。

相手ピッチャーは豪速球を投げ込んできた。一郎は冷静にボールを見極め、一瞬の隙を突いてバットを振った。カーンという心地よい音が響き、ボールは高く舞い上がった。観客席から歓声が上がり、一郎は全力でベースを駆け抜けた。ボールは外野のフェンスを越え、ホームランとなった。

一郎のチームは逆転勝利を収めた。仲間たちは歓喜の声を上げ、一郎を抱きしめた。彼の母親も涙を浮かべながら拍手を送り、観客席からの応援が一郎の耳に響いた。一郎は父の写真をポケットから取り出し、静かに見つめた。「ありがとう、お父さん。」彼は心の中でつぶやいた。

この試合を機に、一郎はさらに野球に打ち込むようになった。彼の努力はやがて実を結び、中学校、高校と進むうちに、彼の名は次第に知られるようになった。そして、彼はついにプロ野球選手としてデビューを果たす日を迎えた。

プロの世界でも、一郎は変わらず努力を続けた。彼のプレーは多くのファンを魅了し、野球界に新たな風を吹き込んだ。一郎は父の夢を現実のものとし、自分自身の夢を叶えたのだ。

青空の下、グラウンドで練習を続ける一郎の姿は、今も変わらない。彼はあの日の少年たちに負けない情熱と、諦めない心を持ち続けていた。野球を通じて学んだこと、それは一球一球に全力を尽くすこと、そしてどんな困難にも立ち向かう強さだった。

一郎の物語は、これからも続いていく。彼の夢はまだ終わっていない。新たな目標に向かって、彼は今日もバットを握り、グラウンドに立つ。青空の下、風を感じながら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

M性に目覚めた若かりしころの思い出 その2

kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、終活的に少しづつ綴らせていただいてます。 荒れていた地域での、高校時代の体験になります。このような、古き良き(?)時代があったことを、理解いただけましたらうれしいです。 一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...