京都伏見・たそがれ鉄道で会いましょう

秋月とわ

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第1会 祖母の優しさに触れる駅

第11話 弁当と後悔④

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 厚手の表紙には、タイトルも装飾もない。ただ左上にばーちゃんの字で小さくこう書かれていた。

 ──「ゆうま」

 その文字を見た瞬間、胸が詰まった。

 おそるおそるページを開く。中には、日付とメニューがびっしりと書かれていた。

 ある日のメニューは、
・白ごはん
・玉子焼き(甘め)
・鶏の照り焼き
・ほうれん草のごまあえ
・たくあん(少し)

→今日は体育がある日。お腹すくと思ってちょっと多めにした。甘い玉子焼き、好きだったはず。味が薄かったらごめん。

 目が離せなくなった。

 日付が進むごとに、ばーちゃんの細かい工夫や反省が綴られている。

 また別の日には、
・ごはんにゆかりを混ぜる(食欲ないかもと思って)
・ブロッコリーとハムの炒めもの
・ささみカツ
・人参のきんぴら(残り物)

→あんまり好きじゃないかも。ブロッコリー、残すかも。でも色どりがほしかった。

 日記は、喧嘩した翌日まで続いていた。ばーちゃんが倒れた、あの日の朝。

・ごはん
・豚の生姜焼き
・玉子焼き
・切り干し大根
・梅干し(小さめ)

→弁当いらないって言われたけど、やっぱり作っちゃった。明日もいらないのかな。でも、もし必要になったときのために冷蔵庫におかず残しておく。

 涙が、ぽたぽたとノートの上に落ちた。

 慌てて袖で拭っても、止まらない。

 ばーちゃんは、怒ってなどいなかった。悲しんでも、責めてこなかった。ただただ俺のことを想って、変わらず弁当を作り続けていてくれた。

 俺は、ばーちゃんの優しさに気づこうともしなかった。受け取ることすら、拒んでしまった。ばーちゃんは、これ程までに俺のことを思ってくれていたのに。

 俺は、ばーちゃんにちゃんと伝えられていなかった。「ありがとう」の一言すら、ちゃんと。
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