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第5会 息子の記憶を辿る駅
第4話 続・コウヘイのいる駅①
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「コウヘイ、なんとか言ったらどうなんだッ!」
胸ぐらを掴んだまま怒鳴りつけるも、コウヘイは弁明するわけでもなく、ただ悲しそうな目をするばかり。そして俺の手を優しく払う。
「お客様、落ち着いてください。ここでは他のお客様の迷惑になるので……」
「お前、なんだその他人行儀な口ぶりは! それに迷惑がなんだ。さあ、帰るぞ。家についたら説教だ」
「いえ、私には仕事がありますから」
「仕事ってなんだ。駅員のか」
頷いたコウヘイに、またカッと頭に血が上る。
「なんで駅員なんてやってるんだ。大学はどうした!」
「私は大学生ではなく、西本州旅客鉄道の職員です。ご存知のはずですが……」
「知っているわけないだろ。お前、俺に黙って大学を辞めたのか!? それで駅員なんぞになりやがって! 鉄道会社も鉄道会社だ。よくお前みたいな半端者を雇ってくれたな」
冷たく言い放つ。頭の奥がズキリと痛んだ。
頭を押さえながら、よろけてしまう。支えようとするコウヘイの手を払いのけた。
「年寄り扱いするな! それより理由を話せと言っておるんだ!」
コウヘイは、行き場を失った手を引っ込めると、腕時計に目を落とす。
「……あと少しで勤務時間が終わります。お話はその後でもいいですか?」
このまま話していても埒があかないのは、薄々気づいていた。それなら、時間をとって腹を割って話そうじゃないか。
コウヘイと別れた後、改札の外に出た。狭い駅舎は観光客でごった返していて、気分が悪い。
ここでアイツの仕事が終わるまで待つなんて耐えられない。俺は聡子に時間までその辺をぶらついてくることを伝えて、駅を後にした。
駅の正面にある表参道には、大鳥居がでんと構えて参拝者を迎え入れている。吸い込まれるようにして俺はその下をくぐった。
特に行きたい場所があるわけでもない。ただ人の流れに身を任せて歩く。
ここも周囲にいるのには、外国人ばかりだった。いくら荘厳な社があったとしてもそこにいるのが、外国人ばかりだと風情もへったくりもない。
いつからこの街は外国人だらけになってしまったんだ。
目の前にも外国人の集団がたむろして騒いでいる。
ここは神聖な神社だぞ。無作法にも程がある。
その集団に厳しい視線を向けて通り過ぎようとした時、騒いでいた男のひとりの手が俺の身体に当たった。
そいつは当たったことすら気づかないように、まだ仲間たちと大騒ぎしている。
堪忍袋の緒が切れるとは、まさにこのこと。
俺は、ぶつかってきた男に怒鳴りつけた。
「おい、貴様! ぶつかってきたのに、謝りもしないのか!」
ようやく俺に気づいた男は、眉を八の字にさせながら、わけのわからん言語でゴニョゴニョと何か言う。
「はぁ? 何言っとるかわからんわ! ここは日本だ。日本語で喋れ!」
睨みつけると、男の仲間たちも俺に向かって何やら意味不明な言葉を投げつけてくる。圧の強さに思わず後ずさってしまう。
俺ひとりに対して集団で反撃してくるとは、卑怯な手を使うではないか。
顔が沸騰しそうなほど熱かった。それに頭も鈍い痛みを放っている。
ここで引けば男がすたる。ひとつガツンと言ってやらねばいかん。
喝を入れようと息を吸った時、ふいに日本語が聞こえた。
「どうかしたんですか?」
胸ぐらを掴んだまま怒鳴りつけるも、コウヘイは弁明するわけでもなく、ただ悲しそうな目をするばかり。そして俺の手を優しく払う。
「お客様、落ち着いてください。ここでは他のお客様の迷惑になるので……」
「お前、なんだその他人行儀な口ぶりは! それに迷惑がなんだ。さあ、帰るぞ。家についたら説教だ」
「いえ、私には仕事がありますから」
「仕事ってなんだ。駅員のか」
頷いたコウヘイに、またカッと頭に血が上る。
「なんで駅員なんてやってるんだ。大学はどうした!」
「私は大学生ではなく、西本州旅客鉄道の職員です。ご存知のはずですが……」
「知っているわけないだろ。お前、俺に黙って大学を辞めたのか!? それで駅員なんぞになりやがって! 鉄道会社も鉄道会社だ。よくお前みたいな半端者を雇ってくれたな」
冷たく言い放つ。頭の奥がズキリと痛んだ。
頭を押さえながら、よろけてしまう。支えようとするコウヘイの手を払いのけた。
「年寄り扱いするな! それより理由を話せと言っておるんだ!」
コウヘイは、行き場を失った手を引っ込めると、腕時計に目を落とす。
「……あと少しで勤務時間が終わります。お話はその後でもいいですか?」
このまま話していても埒があかないのは、薄々気づいていた。それなら、時間をとって腹を割って話そうじゃないか。
コウヘイと別れた後、改札の外に出た。狭い駅舎は観光客でごった返していて、気分が悪い。
ここでアイツの仕事が終わるまで待つなんて耐えられない。俺は聡子に時間までその辺をぶらついてくることを伝えて、駅を後にした。
駅の正面にある表参道には、大鳥居がでんと構えて参拝者を迎え入れている。吸い込まれるようにして俺はその下をくぐった。
特に行きたい場所があるわけでもない。ただ人の流れに身を任せて歩く。
ここも周囲にいるのには、外国人ばかりだった。いくら荘厳な社があったとしてもそこにいるのが、外国人ばかりだと風情もへったくりもない。
いつからこの街は外国人だらけになってしまったんだ。
目の前にも外国人の集団がたむろして騒いでいる。
ここは神聖な神社だぞ。無作法にも程がある。
その集団に厳しい視線を向けて通り過ぎようとした時、騒いでいた男のひとりの手が俺の身体に当たった。
そいつは当たったことすら気づかないように、まだ仲間たちと大騒ぎしている。
堪忍袋の緒が切れるとは、まさにこのこと。
俺は、ぶつかってきた男に怒鳴りつけた。
「おい、貴様! ぶつかってきたのに、謝りもしないのか!」
ようやく俺に気づいた男は、眉を八の字にさせながら、わけのわからん言語でゴニョゴニョと何か言う。
「はぁ? 何言っとるかわからんわ! ここは日本だ。日本語で喋れ!」
睨みつけると、男の仲間たちも俺に向かって何やら意味不明な言葉を投げつけてくる。圧の強さに思わず後ずさってしまう。
俺ひとりに対して集団で反撃してくるとは、卑怯な手を使うではないか。
顔が沸騰しそうなほど熱かった。それに頭も鈍い痛みを放っている。
ここで引けば男がすたる。ひとつガツンと言ってやらねばいかん。
喝を入れようと息を吸った時、ふいに日本語が聞こえた。
「どうかしたんですか?」
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