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6.三人目
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「じゃあ、優月の〈やりたいこと〉が仕返しで、その二人目があたしってことだな?」
彼女はしげしげと顎を触った。そこで僕は首を横に振った。
「違う。倉井は三人目だ。奥本をやる前に金澤という女子生徒の仕返しをした。そいつが一人目だ」
言い終わると倉井は目をパチクリと開き、さっきよりも大きく驚いた。
「え、えー! オマエ、朱里ちゃんまで知ってんの! てか、朱里ちゃんに仕返ししたの⁉」
金澤のフルネームは確か「金澤朱里亜」だったはずだ。倉井は「朱里ちゃん」と呼ぶほど金澤と親しい間柄だったんだろうか。
金澤は現在野宮をいじめている生徒だ。そんなヤツと仲良くしていたというなら、やっぱりいじめ関連の友達だろうか。
「倉井の知り合いだったのか?」
「知り合いっていうか、さっきの話に出てきたリーダー格の生徒だよ」
「マジで?」
「うん。マジ」
倉井は首を縦に振りながら答えた。
金澤は倉井を使って野宮をいじめていた。そして倉井が学校を去ったあとは自らいじめをするようになったということか。
「朱里ちゃんには何をしたの?」
興味深々に詰め寄る倉井に、僕は夜の高校に忍びこんだことや、万引きの濡れ衣を着せことを話してあげた。話し終わると彼女は、愉快そうに短い髪を揺らして笑った。
「過激なことするなぁ!」
この子は本当に表情がよく変わる。心と表情が直接繋がっているみたいだ。
「それで、奥本には?」倉井が続きを促した。
僕は奥本のスキャンダル画像で告発書を作って自宅マンションと職場である高校にばら撒いたと教えた。
「ざまあみろだ。奥本も今までの罰が当たったんだよ」
吹き出していう倉井に僕はさらに付け加えた。
「しかも、野宮が言うにはこれは『仕込み』らしい。本番では何をするか訊いたけど教えてくれなかった」
「優月、やること、えげつねぇー」
それから「はーっ」と大きく息を吐いて呼吸を整えて、倉井は笑いを鎮めた。
「そういや、昔っから優月はいつも大人しいのに火がついたら猪の如く突っ走ったっけ」
懐かしむように倉井は遠くを見つめる。
「まさにそうだよ。暴れ猪に乗るのは苦労した。ま、もう関係ないんだけど」
「どうして?」
「さっきの騒動で野宮、怒っちゃって協力関係を解消されたんだ。だから、奥本の仕返しが成功するかどうか見届けることはできない」
僕はお手上げのポーズをして肩を竦めた。
「それは残念。せっかくなら奥本が痛い目にあった話聞きたかったなぁ」
裏通りもそろそろ終点が見えてきた。そこから先は再び繁華街の明かりが待ち受けている。駅もすぐそこだ。
「僕は電車だからここで。今日はありがとう」
倉井に向かって手を差し出した。倉井は自転車を止めると僕の手を取った。彼女の手は細い柔らかかった。ネイルはストーンが散りばめられていて夜の空のようだ。
「こちらこそありがとう。オマエは命の恩人だからな。あ──そうだ、連絡先教えろよ」
そう言いながら彼女はスマホを取り出した。
特に拒否する理由もない。僕もスマホ出して互いに電話番号とメアドを交換した。
「ありがとう。今度、お礼するからな!」
「お礼なんていいよ。さっき助けてもらったし」
「あんなんじゃ、足りないよ。こっちは命を助けてもらったんだから」
派手な見た目にそぐわず倉井は義理堅いみたいだ。そこまで大層に感謝されるとこちらもむず痒くなってくる。
倉井は駅前まで送ってくれた。そして別れる時、「これはあたしの勘だけど」と前置きして彼女は言った。
「優月はあの性格だから今は熱くなっているけど、そのうち冷静になる。そしたらまたオマエんとこに戻ってくると思うな。家庭環境のせいかあまり人を信用しないアイツがボディーガードを任せるくらいだからな」
それから自転車に跨がると「じゃあな」と夜の街に消えて行った。
野宮の元親友のお墨付きをもらって僕は独り電車に乗った。
彼女はしげしげと顎を触った。そこで僕は首を横に振った。
「違う。倉井は三人目だ。奥本をやる前に金澤という女子生徒の仕返しをした。そいつが一人目だ」
言い終わると倉井は目をパチクリと開き、さっきよりも大きく驚いた。
「え、えー! オマエ、朱里ちゃんまで知ってんの! てか、朱里ちゃんに仕返ししたの⁉」
金澤のフルネームは確か「金澤朱里亜」だったはずだ。倉井は「朱里ちゃん」と呼ぶほど金澤と親しい間柄だったんだろうか。
金澤は現在野宮をいじめている生徒だ。そんなヤツと仲良くしていたというなら、やっぱりいじめ関連の友達だろうか。
「倉井の知り合いだったのか?」
「知り合いっていうか、さっきの話に出てきたリーダー格の生徒だよ」
「マジで?」
「うん。マジ」
倉井は首を縦に振りながら答えた。
金澤は倉井を使って野宮をいじめていた。そして倉井が学校を去ったあとは自らいじめをするようになったということか。
「朱里ちゃんには何をしたの?」
興味深々に詰め寄る倉井に、僕は夜の高校に忍びこんだことや、万引きの濡れ衣を着せことを話してあげた。話し終わると彼女は、愉快そうに短い髪を揺らして笑った。
「過激なことするなぁ!」
この子は本当に表情がよく変わる。心と表情が直接繋がっているみたいだ。
「それで、奥本には?」倉井が続きを促した。
僕は奥本のスキャンダル画像で告発書を作って自宅マンションと職場である高校にばら撒いたと教えた。
「ざまあみろだ。奥本も今までの罰が当たったんだよ」
吹き出していう倉井に僕はさらに付け加えた。
「しかも、野宮が言うにはこれは『仕込み』らしい。本番では何をするか訊いたけど教えてくれなかった」
「優月、やること、えげつねぇー」
それから「はーっ」と大きく息を吐いて呼吸を整えて、倉井は笑いを鎮めた。
「そういや、昔っから優月はいつも大人しいのに火がついたら猪の如く突っ走ったっけ」
懐かしむように倉井は遠くを見つめる。
「まさにそうだよ。暴れ猪に乗るのは苦労した。ま、もう関係ないんだけど」
「どうして?」
「さっきの騒動で野宮、怒っちゃって協力関係を解消されたんだ。だから、奥本の仕返しが成功するかどうか見届けることはできない」
僕はお手上げのポーズをして肩を竦めた。
「それは残念。せっかくなら奥本が痛い目にあった話聞きたかったなぁ」
裏通りもそろそろ終点が見えてきた。そこから先は再び繁華街の明かりが待ち受けている。駅もすぐそこだ。
「僕は電車だからここで。今日はありがとう」
倉井に向かって手を差し出した。倉井は自転車を止めると僕の手を取った。彼女の手は細い柔らかかった。ネイルはストーンが散りばめられていて夜の空のようだ。
「こちらこそありがとう。オマエは命の恩人だからな。あ──そうだ、連絡先教えろよ」
そう言いながら彼女はスマホを取り出した。
特に拒否する理由もない。僕もスマホ出して互いに電話番号とメアドを交換した。
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「お礼なんていいよ。さっき助けてもらったし」
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