オーデンスのΩの物語《I》

風鈴

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《第一部》一途なΩは幼馴染のαに恋をする

セバスチャンの失恋(1)

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 アスラン王国第二王子であるセバスチャンは、チャコールグレーの髪とブラウンの瞳のα男子である。彼には、兄が2人いる。フェルナンデス第一王子、ローマン王子である。
 フェルナンデス殿下は、α男子で幼い頃から本が好きで物静かな子供であった。勉強に秀で特に、鉱物や化学が得意であった。
 ローマン王子は、Ω男子で彼を政争の具にしたくなかったアン王妃が彼の出生を誤魔化してしまった。その為に幼い頃は王宮じゃない所で育てられ、トルベール学園にも通っていなかったが、今は番もいて、双子の息子もいる。
 第二王子のセバスチャンは、王太子候補に兄で優秀なフェルナンデス王子がいた為に、国王になる確率も低く将来は臣下に下るだろうと本人も両親も思っていた。だからと言う訳じゃないが、勉強より体を動かす方が好きで西の離宮の庭をやんちゃに走り回っていた。本人の性格以上におおらかに育てられた。細かいところはあまり気にしない、自分でも他人でも失敗した事をいつまでも引きずる事はせずに良く言えば前向きに物事を捉えるタイプであった。
 同級生のクラーブ・グランデールとはトルベール学園入学からの学友だったが、彼の見識や行動力はセバスチャンを常に刺激していた。特に国内でさえ王都から出るのが難しいセバスチャンにとっては家業とはいえ国内を渡り歩くクラーブの事を羨ましいと思っていた。
『いつかは自分も、アスラン王国だけではなく色々な国に行きたい』それには自分の身を守ることができるように成れば騎士団を率いて、アスラン王国を巡る事も叶うと信じて剣の修練は欠かさない一本気な性格であった。
 クラーブとセバスチャンは剣を合わす度にお互いの関係を深めていきながら、思った意見を述べ合う良い関係を築いていた。
 リュウール・オーデンスとは、年が近いので接触はあまりなかった。それは、オーデンス伯爵が、アスラン王国の臣下に降りて以来将来交わらないように番を持っていない王族とは正式な儀式以外は接触しない事になっていた為である。
 だから、リュウールが行方不明の詳細もセバスチャンは知らなかった。興味がなかったのだ。
 学友のクラーブが消息を気にしているのは知っていたので、入学式でリュウールを見た時にあれが、『オーデンスのΩ』かと言う感想しかなかった。クラーブが間抜けな威嚇を出した時に馬鹿馬鹿しいと思って諫めた。
 だが、セバスチャンは、その入学式の新入生代表の彼を見た時にクラーブの馬鹿馬鹿しさを笑えない衝動を身にもって実感したのである。
 髪は薄いグリーンが入っているシルバーで、直毛の美しい髪を耳の下ぐらいまで伸ばしている。目鼻立ちは整い目は、鳶色の瞳である。新入生代表として堂々と述べる姿と声に魅了されたのだ。始め、α男子だと思ったが、薄く香るフェルモンを感じてΩ男子だと確信した。その瞬間からトルベール学園の新入生代表をΩ男子が務めるのは初めてだと言う事実に気づき、次に彼を自分の物にしたいと言う気持ちが湧き上がった。
 入学式終了後壇上を降りてセバスチャンは、警護役のラウルに、
「今年の新入生代表について調べておいて欲しい」
 と、言った時に、『あぁ、クラーブを笑えねぇな』と思った。
 警護役のラウルは、今までセバスチャンが他人に興味を持ったことがない事を知っている。それが、命令とあれば調べるが少し面食らってしまった。
 新入生代表としての彼の話は理論的で、一年生としては良かった物だと思ってセバスチャンに念のために確認した。
「新入生代表の事ですよね、何か不都合がありましたか?」
「不都合、そうだな不都合かもしれない。俺の心を一発で撃ち抜いたからなぁ」
「えっ、はい、わかりました」
 ラウルはそれだけしか言えなかった。ラウルは双子の弟パリスと顔を見つめ合うしか出来なかった。
 それから、しばらくはリュウールにまとわり付く者たちで毎日、学園は騒がしくセバスチャンも面白く傍観していたが、リュウールは、上手く人を捌きいざと成れば図書館に逃げ込んでいた。セバスチャンからすれば
『クラーブは、その内過保護なトーマスが出張ればこんな事はあっという間に霧散すると思って何も行動を起こしていない。狡いやつだね、しかし、これはリュウールがいつトーマスに言うかだな』と思うのであった。
 
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