ミカエルの羽〜欲望の先の最後の審判

風鈴

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第一章 理想と現実

四話

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 ゾフィーは、子供たちの話に出てきた幼稚園教諭狭間靖子《はざまやすこ》の前に立つ。彼女は、ミカエルの羽を使った痕跡で腕の周りに蛇がトグロ巻きついている。本人はそれを見て、気が狂ったように大騒ぎしていた。
「へ、蛇、へーびが、腕に」
 周りの人達は彼女の言っている蛇は見えない。奇怪なものを見る様に遠巻きにしていた。ゾフィーが、近づいて彼女を昏倒させた。ゾフィーも又誰にも見えない存在のために靖子が、急に倒れたようにしか周りはわからなかった。
 気を失った靖子は救急車で病院に担ぎ込まれた。今は、精神安定剤を打たれて病院の個室に寝ている。ゾフィーは、鍵を掛けて契を呼ぶ。
 契は、亮一が両親に連れて行かれるのを見送った後にゾフィーの声で靖子のベッドの横に向かう。彼は、靖子の額に手を置いて、彼女がミカエルの羽を召喚するになった経緯等を知る。そして、彼女の魂を取り出し、それを神と大天使ミカエルがいる裁きの場に送る。
 次の瞬間、契とゾフィーは、彼女の魂と共に神と大天使ミカエルの前に立つ。靖子の魂は、必死に何かを訴えているが、誰にもその声は聞こえない。ゾフィーは、契によって先程靖子の記憶にある経緯の調査報告書を読み上げる。
「狭間靖子は、S市立Mヶ丘幼稚園のそら組の担任をしていました。初めての担任となった靖子は、子供達と楽しく過ごそうとしても何故か空回りする事もありながらも彼女の理想のクラスにする為に頑張っていました。
 自己中心的な考えを持つ彼女は、幼稚園児なら簡単に自分の思う通りになると思っていました。しかし、年長児のクラスであるそら組は、幼いながら自我もあり、靖子の言うことが、日によって、彼女の気分によって変わる事を理不尽だと思う園児もいて、その為に反抗する園児も出てきました。段々とそら組は落ち着かなくなって、他の先生からもクレームを言われ始めました。
 その為に園長は彼女のクラスに日に何度も行って子供たちと靖子の橋渡しを行い、少しずつ落ち着いてきました。自分が悪いと思っていない靖子は、園長がクラスに口出すことに不満を募らせて同僚に愚痴ばかり言っていました。今では、誰も靖子の事に口を出すことも無く、彼女は幼稚園内で孤立していました。
 事件は、園児同士の些細な争いでした。先に手を出して相手を泣かしてしまった子供黒部大和くろべやまとを靖子は、その場で叱責し事を納めましたが、叱責された叩いた子供である大和は、母親に『僕だけ怒られた』と言いました。それを聞いた園児の母親黒部安奈くろべあんなは、元々靖子のクラスになったことに不満を持っていたので、事あるごとに靖子にクレームをつけるようになっていきました。
 靖子は、段々クレームを言う安奈に対して鬱憤が溜まり、大和を疎ましく思うようになって、彼を無視したり、威嚇したりして自分に寄りつかないようにしていくのでした。園長は、靖子のあからさまな態度を注意しましたが、靖子は、中々態度を改めずに自分の正当性を園長に訴えました。
 園長は、原因となった安奈と靖子の間入って懇談会を開くのですが、靖子は安奈に頭を下げたくない為に中々応じずに、懇談会を固辞しました。それでも園長は2人の和解にこぎつけて事はおさまりました。それを見ていた他の親も靖子について少しずつ不満を持ち、靖子と距離をおくようになっていきました。
 靖子と親の亀裂が、徹底的になったのは、幼稚園の最後の行事である発表会の劇の配役決めでした。二転三転する配役変更と靖子の説明に親達からのクレームが勃発しました。靖子としてはマニュアル通りに親達に説明をしているのに一向にクレームがおさまらず、その為に彼女自身頑なになっていきました。それを納めたのも園長でした。園長によってクレームはおさまりましたが、園長には親達からの担任の変更要請の話がくるようになりました。
 靖子としては自分は一生懸命にやってきたと言うプライドがありましたが、自分の思う理想の幼稚園の先生と自分が今ある現実の幼稚園の先生のギャップを強く感じてプライドもすり減っていきました。
 園長は、年長児の一番大切な行事でもある発表会を無事成功する為に間に立って話し合いを持とうとしても靖子は参加を拒否したり、暴言を吐いて心が疲弊している様子でした。このままでは、園長自身にも火の粉がかかると思って、靖子に一度担任を外れるように言い、そして、来年以降にもう一度頑張ることを提案しました。靖子は不本意ではありましたが、それを呑んで担任をおりました。
 靖子は、連日園児の親達に色々と言われて心を壊し始め何気にネットサーフィンをしていた時にミカエルの羽の噂のサイトに辿りつきました。靖子も始めは信じてはいなかったが、心の闇が深くになって行く度にそのサイトを繰り返し見るようになり、とうとうミカエルの羽を欲しいと祈ってしまうのです。
 ミカエルの羽は、ついに彼女の手元に召喚されたのです」
 
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