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第一章
出会い(2)
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翌日、咲山紅は見知らぬ天井を見て今の自分の状況がわからずにパニックを起こしそうだったが、嗅ぎなれた匂いにここは病院だと思ったとたん冷静になれた。
ここが自分の勤めていた病院なのかとも思ったが、見知らぬ天井が広がり、簡易的に患者を寝かしておくような狭い部屋だった。清潔に掃除されていて自分が今まで住んでいた寮よりも快適に思えた。紅は腕に点滴が刺さっているので思うように動けず、どうしたものかと思案していると部屋のドアをたたく音がしてそちらを見た。
久乃は、朝早く起きて入院患者の朝ご飯を作った。患者のいる部屋に届けに行きドアを叩いて中に入ると患者と目が合った。
「おはよう、顔色は良くなっているわね。私は、ここ南川下町診療所の医者をしている安堂久乃と申します。ところで、お名前を聞かせていただけるかな?」
優しい微笑む年配の女性が、紅をのぞき込んで額に手を伸ばして熱が下がったのかを確認してくれる。
「おはようございます。僕は、咲山紅です。ご迷惑をかけて申し訳ございません」
紅が頭を下げて謝罪すると久乃が、近づいて彼の顔や脈や目の反応などを診ていた。
「大丈夫ですよ。ここ南川下町診療所は夜間も患者を受け付けているので慣れています」
「はっ、はぁ、あっ、あのー、昨夜、僕はどうしてここまで逃げてきたんでしょうか」
紅は、必死に逃げた記憶があるが、どこからか記憶があやふやになっている。その為にここにいる経緯についての記憶がない、それにここは救急病院とは思えなかった。
「そうね、昨日、杉本町の道路に倒れている咲山さんを見つけた方がいてここに連れてこられたんですよ。大変な目に遭われているのを見て、Ωの産婦人科医のいるここに連れてきたそうです」
「そうですか」
紅は、『杉本町』と聞いても名前はわかるがすぐには場所がピンとこない。ただ、安全な場所に連れてこられて無事に助けられたことは理解できた。
久乃は、紅の戸惑いと不安を少しずつ取り除くように優しく声をかけた。
「朝ご飯を食べない? 私は、いつもは娘夫婦に合わせて朝はパン食なんだけど今日はあなたがいるので和食を作ったの。お口に合えば嬉しいけどいかがかしら」
紅は、ワゴンに乗せられた焼鮭や卵焼きにみそ汁と香の物そして湯気が立っている土鍋に目を奪われた。紅にとっては生まれて初めての暖かい朝食のだった。いつもなら看護師寮の食堂に置かれた箱から病院の売店の期限切れのパンや弁当を食べていた。その様子を久乃は微笑んで見ていた。
「しばらくは、寝てた方が体にいいからベッドにくぎ付けになるけどトイレ等は遠慮しないで言ってくれれば私か看護師が助けに来るから心配しないでね。普通なら隣の診察室は煩くしているのだけれど今日は日曜日だから静かだと思うわ」
そう言って、トイレに紅を連れて行く。そして、ベッドを立てて座れるようにしてベッド用のテーブルに食事を並べてくれた。一人では味気ないからと久乃も横で一緒に食べ始めた。
久乃は事件の事には触れずに紅個人の嗜好や生い立ち等の事を話題にしてくれた。紅にとって食事中におしゃべりするなんて准看護師の専門学校1年目以来だと思う、2年目以降は研修や実習で忙しくて昼食や夕食は狭い研修室の隅で立って急いで食べないと先輩や研修指導の看護師に怒られてしまうのでいつも忙しなかった。
久乃は、本当に話上手で穏やかな声で話しかける。彼女の質問に紅の荒んでいた気持ちが癒やされて素直に答えていた。看護師としての専門的な話も有って、それについての紅の疑問や質問に対しての答えに窮することなく、優しく解説してくれた。久乃との会話は紅にとって話をするだけで勉強になった。孤独な紅の心にほのかな明かりを灯している様だった。
ここが自分の勤めていた病院なのかとも思ったが、見知らぬ天井が広がり、簡易的に患者を寝かしておくような狭い部屋だった。清潔に掃除されていて自分が今まで住んでいた寮よりも快適に思えた。紅は腕に点滴が刺さっているので思うように動けず、どうしたものかと思案していると部屋のドアをたたく音がしてそちらを見た。
久乃は、朝早く起きて入院患者の朝ご飯を作った。患者のいる部屋に届けに行きドアを叩いて中に入ると患者と目が合った。
「おはよう、顔色は良くなっているわね。私は、ここ南川下町診療所の医者をしている安堂久乃と申します。ところで、お名前を聞かせていただけるかな?」
優しい微笑む年配の女性が、紅をのぞき込んで額に手を伸ばして熱が下がったのかを確認してくれる。
「おはようございます。僕は、咲山紅です。ご迷惑をかけて申し訳ございません」
紅が頭を下げて謝罪すると久乃が、近づいて彼の顔や脈や目の反応などを診ていた。
「大丈夫ですよ。ここ南川下町診療所は夜間も患者を受け付けているので慣れています」
「はっ、はぁ、あっ、あのー、昨夜、僕はどうしてここまで逃げてきたんでしょうか」
紅は、必死に逃げた記憶があるが、どこからか記憶があやふやになっている。その為にここにいる経緯についての記憶がない、それにここは救急病院とは思えなかった。
「そうね、昨日、杉本町の道路に倒れている咲山さんを見つけた方がいてここに連れてこられたんですよ。大変な目に遭われているのを見て、Ωの産婦人科医のいるここに連れてきたそうです」
「そうですか」
紅は、『杉本町』と聞いても名前はわかるがすぐには場所がピンとこない。ただ、安全な場所に連れてこられて無事に助けられたことは理解できた。
久乃は、紅の戸惑いと不安を少しずつ取り除くように優しく声をかけた。
「朝ご飯を食べない? 私は、いつもは娘夫婦に合わせて朝はパン食なんだけど今日はあなたがいるので和食を作ったの。お口に合えば嬉しいけどいかがかしら」
紅は、ワゴンに乗せられた焼鮭や卵焼きにみそ汁と香の物そして湯気が立っている土鍋に目を奪われた。紅にとっては生まれて初めての暖かい朝食のだった。いつもなら看護師寮の食堂に置かれた箱から病院の売店の期限切れのパンや弁当を食べていた。その様子を久乃は微笑んで見ていた。
「しばらくは、寝てた方が体にいいからベッドにくぎ付けになるけどトイレ等は遠慮しないで言ってくれれば私か看護師が助けに来るから心配しないでね。普通なら隣の診察室は煩くしているのだけれど今日は日曜日だから静かだと思うわ」
そう言って、トイレに紅を連れて行く。そして、ベッドを立てて座れるようにしてベッド用のテーブルに食事を並べてくれた。一人では味気ないからと久乃も横で一緒に食べ始めた。
久乃は事件の事には触れずに紅個人の嗜好や生い立ち等の事を話題にしてくれた。紅にとって食事中におしゃべりするなんて准看護師の専門学校1年目以来だと思う、2年目以降は研修や実習で忙しくて昼食や夕食は狭い研修室の隅で立って急いで食べないと先輩や研修指導の看護師に怒られてしまうのでいつも忙しなかった。
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