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第四章
紅玉の幸せ
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久乃は、浮世草子をローテーブルの上に置いて目頭を揉む。院長室のミニキッチンにあるコーヒーメーカーの前で程よく焙煎されたコーヒー豆をコーヒーメーカーに入れる。しばらくして良い香りがしてコーヒーが出来上がった。久乃はコーヒーを飲みながらつくづくこの10年の流れを考えた。もうそれは激流だった。Ωの人権だけではなく、全ての人間の人権について見直しが始まり、それが全世界の国に波及していった。
国内では、紅玉の訴えたΩ保護法は民意の廃案運動で内容が一新されて、バース法として生まれ変わった。特に子供のバースについての記述が大幅に変更された。Ωの子供を育てる上での負担される設備などを国の補助が出るようになった。小学校からΩ待機所が完備されて、中学生、高校にはΩクラスも併設された。大学や会社にも必ずΩが非難できる部屋は義務化された。抑制剤の進歩も目覚ましくΩに自由を与えている。着実にΩが世の中で生きやすい環境が整ってきていた。
α至上主義者も今では影を潜め、αだからこうあるべきだと言う考え方もなくなりつつある。その為にαも親の期待と自分の目標をしっかりと話し合い本人の特性に合った進路指導を行う事になった。βにも実力があれば上のクラスに入って勉強をできるようになる。そして子供のころからバースへの偏見をなくす教育を持つことで、少しずつだが世の中は変わりつつある。
遊女と言う仕事も今は無くなった。妓楼と呼んでいた物も無い。遊郭は名前はそのままにして今は歓楽街に形を変えて存在している。『藤ノ井』は社交クラブとして変貌して今では、一般のΩ達やαが自由恋愛を楽しむ場所となっている。そこにはもちろんβも入店できるので、今まで以上にいろいろのパターンでの恋愛が広がっている。
クラブ『藤ノ井』も高級クラブとして大人の社交場として存在している。
今でも売春をするアンダーグランドはある。それはいつの世もあった最古の商売として世の中の闇に潜んでいるのであった。
コーヒーを飲みながら、久乃は、将克のコーヒーショップに電話をかける。
将克は積極的に供述し自首したと認められて執行猶予が付き5年間はハワイに戻れなくなった。判決が決まって暫くしたら、将克の家は子供の泣き声に包まれた。ハワイのアリーさんが双子を連れて両親と一緒に日本に引っ越しをした。アリーさんは勿論日本にハワイのコーヒーチェーンを展開するためだ。
将克の周りは賑やかになり、アリーに協力し双子の世話もあって大変忙しくなった。子供たちは大きくなり将克は杉本町に焙煎所があるコーヒーショップを開いている。
「こんにちは、コーヒーを頼めるかしら」
久乃は、将克のコーヒーが好きでリピート買いをしている。
「久乃先生、コーヒーですねいつものでよろしいですか?」
「デカフェあるかしら」
将克はニコニコしながら答える。
「はい、もちろんです。アリーもそればかりなので。送ります」
「アリーさんの出産は? 日本でするの」
「はい、安堂総合病院で来月です」
「わかりました。身体を大切にしてあげてね」
「ありがとうございます。明日、配達します」
「よろしくお願いいたします」
すっかり、カフェの親父が身についていると思わず笑みが出る。
家のチャイムが鳴る。何事だと思いなが玄関に行くと引き戸の向こうに可愛い双子の曾孫たちのシルエットが見え、声が聞こえる。
「「大ばあちゃま開けて」」
「はいはい、待ってて」
引き戸を開けると曾孫たちが足にしがみ付く。後ろから、孫夫妻が笑いながら立っている。
「あら、どうしたの?」
久乃は、心臓外科医として日頃手術室に籠もっている貴文を見た。貴文は両手一杯の食材を持っていた。
「今日の手術は、終えたよ。久しぶりにみんなで鍋でもと思って」
「お義母さんたちもあと一時間もすればやってきます」
紅は、少し目立つようになったおなかを摩りながら言う。彼は、優秀な小児科医とΩ産婦人科と内科医となった。そして3人目の出産の後に子育てをしながらこの診療所を継いでくれる頼もしいお医者様だ。
「お鍋の用意はあるのね」
「はい、明日は、貴文さんもお父さんも休日で手術はないのでゆっくりできるからってお義母さんが提案してくれました」
「それじゃ、とっておきを出そうかしら、紅、奥の院長室から一本持ってきて」
貴文は、紅を見て、一言
「それは、俺がする。紅は、鍋の用意してくれれば良い。おばあちゃんは曾孫の事をよろしく」
「はいはい」
久乃は、今日も新しい浮世草子のネタができたと思いながら曾孫が描く絵を微笑みながら見て、嬉しくなった。
遊女は夕暮れの薄明の訪れとともに人と出会い、笑い、泣き、別れて仕事をこなし、朝焼けの前に広がる薄明を臨む。日々を刻み未来を夢見て人を愛することを忘れずに前を向いて歩いて行く。そのしなやかな姿に魅入れられたαは、Ωを愛し彼の人生と共に光の先へと歩いて行く。
【完結】
長いお話をお付き合い頂きありがとうございました
この後SS『紅の初めての』を17:00、19:00、21:00の3回お送りいたします
12月の中旬から瑞葵、茨棘、茜凛のアフターストーリーを公開します
そちらもよろしければご覧くださいね
ありがとうございました♪
国内では、紅玉の訴えたΩ保護法は民意の廃案運動で内容が一新されて、バース法として生まれ変わった。特に子供のバースについての記述が大幅に変更された。Ωの子供を育てる上での負担される設備などを国の補助が出るようになった。小学校からΩ待機所が完備されて、中学生、高校にはΩクラスも併設された。大学や会社にも必ずΩが非難できる部屋は義務化された。抑制剤の進歩も目覚ましくΩに自由を与えている。着実にΩが世の中で生きやすい環境が整ってきていた。
α至上主義者も今では影を潜め、αだからこうあるべきだと言う考え方もなくなりつつある。その為にαも親の期待と自分の目標をしっかりと話し合い本人の特性に合った進路指導を行う事になった。βにも実力があれば上のクラスに入って勉強をできるようになる。そして子供のころからバースへの偏見をなくす教育を持つことで、少しずつだが世の中は変わりつつある。
遊女と言う仕事も今は無くなった。妓楼と呼んでいた物も無い。遊郭は名前はそのままにして今は歓楽街に形を変えて存在している。『藤ノ井』は社交クラブとして変貌して今では、一般のΩ達やαが自由恋愛を楽しむ場所となっている。そこにはもちろんβも入店できるので、今まで以上にいろいろのパターンでの恋愛が広がっている。
クラブ『藤ノ井』も高級クラブとして大人の社交場として存在している。
今でも売春をするアンダーグランドはある。それはいつの世もあった最古の商売として世の中の闇に潜んでいるのであった。
コーヒーを飲みながら、久乃は、将克のコーヒーショップに電話をかける。
将克は積極的に供述し自首したと認められて執行猶予が付き5年間はハワイに戻れなくなった。判決が決まって暫くしたら、将克の家は子供の泣き声に包まれた。ハワイのアリーさんが双子を連れて両親と一緒に日本に引っ越しをした。アリーさんは勿論日本にハワイのコーヒーチェーンを展開するためだ。
将克の周りは賑やかになり、アリーに協力し双子の世話もあって大変忙しくなった。子供たちは大きくなり将克は杉本町に焙煎所があるコーヒーショップを開いている。
「こんにちは、コーヒーを頼めるかしら」
久乃は、将克のコーヒーが好きでリピート買いをしている。
「久乃先生、コーヒーですねいつものでよろしいですか?」
「デカフェあるかしら」
将克はニコニコしながら答える。
「はい、もちろんです。アリーもそればかりなので。送ります」
「アリーさんの出産は? 日本でするの」
「はい、安堂総合病院で来月です」
「わかりました。身体を大切にしてあげてね」
「ありがとうございます。明日、配達します」
「よろしくお願いいたします」
すっかり、カフェの親父が身についていると思わず笑みが出る。
家のチャイムが鳴る。何事だと思いなが玄関に行くと引き戸の向こうに可愛い双子の曾孫たちのシルエットが見え、声が聞こえる。
「「大ばあちゃま開けて」」
「はいはい、待ってて」
引き戸を開けると曾孫たちが足にしがみ付く。後ろから、孫夫妻が笑いながら立っている。
「あら、どうしたの?」
久乃は、心臓外科医として日頃手術室に籠もっている貴文を見た。貴文は両手一杯の食材を持っていた。
「今日の手術は、終えたよ。久しぶりにみんなで鍋でもと思って」
「お義母さんたちもあと一時間もすればやってきます」
紅は、少し目立つようになったおなかを摩りながら言う。彼は、優秀な小児科医とΩ産婦人科と内科医となった。そして3人目の出産の後に子育てをしながらこの診療所を継いでくれる頼もしいお医者様だ。
「お鍋の用意はあるのね」
「はい、明日は、貴文さんもお父さんも休日で手術はないのでゆっくりできるからってお義母さんが提案してくれました」
「それじゃ、とっておきを出そうかしら、紅、奥の院長室から一本持ってきて」
貴文は、紅を見て、一言
「それは、俺がする。紅は、鍋の用意してくれれば良い。おばあちゃんは曾孫の事をよろしく」
「はいはい」
久乃は、今日も新しい浮世草子のネタができたと思いながら曾孫が描く絵を微笑みながら見て、嬉しくなった。
遊女は夕暮れの薄明の訪れとともに人と出会い、笑い、泣き、別れて仕事をこなし、朝焼けの前に広がる薄明を臨む。日々を刻み未来を夢見て人を愛することを忘れずに前を向いて歩いて行く。そのしなやかな姿に魅入れられたαは、Ωを愛し彼の人生と共に光の先へと歩いて行く。
【完結】
長いお話をお付き合い頂きありがとうございました
この後SS『紅の初めての』を17:00、19:00、21:00の3回お送りいたします
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