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58 愛を授ける儀式(2)
しおりを挟む夕美は、あられもない姿で悶えていた。
両手を拘束されているので、ジャケットやブラウスはボタンを外されただけだが、ブラはめくられて胸は丸出しである。
上半身とは対照的に下半身は全て脱がされており、長時間掛けて愛撫されてとろとろになったそこは、千影の大きく硬いモノとつながっていた。
「んっ、んっ……んんうっ」
夕美のナカをゆっくり千影が出入りたびに、快感が襲ってくる。夕美は口を引き結んで、与えられる悦楽に引きずり込まれないよう耐えていた。
「声、そんなに我慢しなくていいのに」
焦らすように腰を打ち付ける千影が、眉根を寄せながら愉悦の笑みを浮かべる。彼の額には汗が滲んでいた。
千影も夕美と同じくYシャツの前をはだけさせており、下半身は何も身に着けていない。
「か、壁薄い、から聞こえちゃ、あっ……んんっ!」
答えている最中に激しく腰を振られて、声が飛び出てしまった。手で口を押さえたいのに、どうにもできないのがもどかしい。
「ここは角部屋だし、隣は僕の部屋だし、上の階もちょうど今は誰も入っていないからいいじゃないか」
「外に……っ、声が漏れ、ちゃうっ」
いやいやと首を振りながら涙声で抵抗する。
いくら路地に入ったところにあるアパートとはいえ、駅から近いのだから人通りはある。そもそも周りは住宅が密集しているのだ。古いアパートで大きな喘ぎ越えを上げたら、漏れてしまう可能性は大いにある。
「じゃあ塞いであげるね」
夕美の顎を掴んだ千影が迫り、強く唇を塞がれた。
「んっ、んうううっ!!」
彼の舌が夕美の舌を捉え、しゃぶり尽くそうとする。キスの深さと同様、夕美の蜜奥を深く突き上げられてめまいが起き、気が遠くなった。
頭がおかしくなるくらいに気持ちがいいのは、千影の言う通り、拘束されたほうが感じてしまうから……? 自分自身にそんな疑いを持った瞬間、一気に堕ちていきそうになった。
どうにか唇を離して、千影が与える悦楽から逃れようとする。
「も、もう、イッちゃ……」
「ダメだよ、僕と一緒じゃなくちゃ」
「うあっ……! あっあ、……んんーっ!」
片足を持ち上げられて、さらに奥まで千影のモノが抉ってくる。その衝撃を受けて、耐えていた声が出てしまい、同時に夕美は達してしまった。びくびくと内ひだが痙攣しているのがわかる。
「……ダメって言ったのに。いけない子だなぁ」
クスッと笑った千影が、夕美の唇から流れた唾液を舐め取った。
「あ……あ」
「じゃあ次は、僕の番だ。……ナカで出すからね」
「……え?」
達したばかりの余韻が体中に張り巡らされて、体も頭も上手く動かない。情けなさと恥ずかしさと気持ちよさで、勝手に涙が浮かんでこぼれていく。
――こんな自分をなぜ、女神だなどと言うのだろう。
「ああ、いいよ、夕美……大好きだ」
「んっ、千影さ……んっ」
大好きの言葉が夕美の心を捉え、呼応した体が甘く震えてしまう。
夕美も千影が大好きなのだ。大切な夕美の推しであり、尊敬し、愛する人。けれど、彼の行動に怯えてしまったのも嘘ではない。
再び襲いかかってくる快楽に耐えながら、夕美は速くなる彼の律動に訴えかける。
「ま、待って、千影さん。今日は私、ナカで出されたら……」
「赤ちゃん、できるかも、って?」
「んっ、そう、なの」
千影はゴムを着けていない。アプリの周期では、今日あたり排卵が来ることになっていた。だからナカで出されてしまったら……。
「何か問題でもある?」
「え」
「君が今日あたり排卵日だっていうのは、知ってたよ……」
千影は動きを止めず、夕美の耳元で囁いた。
「……君も僕の子どもがほしいって、言ってくれたよね?」
「あ……」
確かに以前、夕美は千影との会話で「私も千影さんの赤ちゃんが欲しい」と言った。
「ああ……、そうなったら嬉しいな。君が僕の子どもを授かったら……、本当の永遠に……なる……っ」
熱い吐息をした千影は体を起こし、夕美の足を自分の腰に絡ませた。そして、夕美の奥深くまで突きながら、「夕美、夕美」とうわごとのように名を呼んでくる。
「ち、千影さ……、あっ、ああ……っ!」
もう「待って」とは言えなくなっていた。
千影の子どもを欲しいと思ったのは本当だ。これから結婚するのだから、子どもが出来ても支障はない。彼が望んでいるのだし、夕美も望んでいたことだ。
だが、今この状態で彼の子どもを宿っても良いのだろうか?
そんな疑念に駆られつつも、夕美の体は彼を欲しがっている。
「ああ、夕美、愛してる……、愛してるよ……っ」
「ち、千影さっ、っ、あぁっ、また……っ、んん~っ!」
「あっ、夕美、あぁ……、……くっ」
心は迷っているのに、千影を咥えている夕美のそこは、彼のモノをぎゅうぎゅうと締め付けながら快感を貪った。そして千影が放った愛の白濁液を搾り取り、悦びにわなないている。
「あ……わた、し……」
「……夕美、……夕美……夕美、夕美、夕美……夕美、夕美」
夕美のナカで果てた千影は、まるで気が触れたように、何度も夕美を呼びながら抱きしめてくる。
それはいつしか、すすり泣きの声に変わっていた。
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