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1巻
1-2
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大わらじのそばにあるベンチに、二人で座る。
彼は着物を着慣れているのか、動作にぎこちなさのようなものを全く感じさせなかった。そんなところにも、いちいちときめいてしまう。黒い足袋に雪駄という彼の足元を見た。身近に着物を着た男の人がいないせいか、隅々まで目を引かれていた。
「意外と着物姿の人は少ないんですね。もっと多いのかと思っていましたが」
私の視線に気付いたのか、大仏様を見ながら彼が先に口をひらいた。襟元から出ている首筋や喉仏が妙に色っぽくて、一人でどぎまぎしてしまう。
「私、七月の初めにも着物でここに来たんです」
「七月の初め、ですか」
こちらを向いた彼にすぐそばで見つめられて、頬が熱くなる。黒目が綺麗。
「ええ。そのときは着物の方と何人かすれ違いました。猛暑日だったんですけどね」
私は悲惨な目に遭ったけれど、着物を着慣れたふうの人は皆涼しげな顔で歩いていたのを覚えている。あんなふうになるまでの道のりは、遠そうだ。
「着物を着るなら猛暑日よりも、今の時期のほうが絶対にいいな。そう思いませんか?」
「ええ、本当に」
楽しげに笑いかけられて、そこでようやく私も笑顔で返事ができた。
外国人のツアー客や遠足の学生が次々に訪れて、辺りが途端に騒がしくなった。
「今日、僕は仕事が休みなんですが、あなたも?」
「はい。といっても有休なんです。鎌倉は平日のほうが回りやすいかと思って」
「土日はすぐに帰りたくなるくらいの、ひどい人出ですからね」
顔を見合わせて小さく笑った。些細なことなのに何だろう、胸の中がほわっと温かくなる。
「撮られてますよ、ほら」
「え?」
外国人観光客の数人が、遠くから私たちへデジカメを向けていた。
「着物が珍しいんでしょう。一人ならまだしも、男女二人揃っている、というのがまたターゲットになる理由かもしれませんね」
「あ、そうかも」
「何だか照れくさいな。ポーズ決めるわけにもいかないし」
困ったようにうつむく彼がおかしくて、思わずクスリと笑った。するとますます照れたようで、私から顔を逸らして向こうを向いてしまった。
初対面の人に可愛い、なんて思ったら失礼かな。
この人の纏う空気が、不思議なほど心地よかった。緊張はしていても、言葉は躊躇うことなくすらすらと出てくる。普段、人見知りの私には考えられないことだった。彼の和服が目に付いたことは確かだけれど、それ以上にこの人自身の魅力に惹きつけられている。
観光客が去ると、安心したようにこちらを向いた彼が首を傾げて私に尋ねた。
「このあとは、どこへ行く予定でした?」
「特には決めていません」
「じゃあ、駅に戻りがてら長谷寺へ行きませんか」
「ええ」
彼と一緒にベンチから立ち上がり、高徳院をあとにした。
三時過ぎに長谷寺へ到着した。大きく枝を伸ばした立派なもみじの木々。その葉が色づくのは、まだ少し先のようだ。ゆっくりと歩いて、美しい庭園を堪能する。荘厳な観音様をお参りして、私はてんとう虫のお守り、彼は手のひらにすっぽり収まる身代わり鈴を購入した。
長谷通りに戻って雑貨屋に寄ってもらう。外国のアンティークが並ぶ中、私は帯留めに使えそうなものを探した。彼はこういった店に入るのに何の抵抗もないらしく、可愛い店内で一緒に雑貨を眺めてくれている。しばらくするとレジに向かい、何かを買ったようだった。私のほうは結局、いいものは見付からず、全然関係のないアクセサリーばかり見てしまった。
「すみません、付き合わせてしまって」
「僕は楽しかったですよ。普段こういうものには縁がないので」
お店を出たところで優しく笑った彼は、信玄袋に購入したものをしまった。
駅に向かって歩きだし、人通りの多い場所を抜けていく。改札の手前で立ち止まった彼が、私に言った。
「歩き慣れていらっしゃいますよね」
「そんなことはないんですけど、今日は調子がいいみたい」
「それはよかった。僕も一人でいるよりは足取りが軽いかな。ところで、あの」
「?」
「お時間大丈夫でしたら、もう少しだけ付き合っていただけませんか」
「ええ、もちろん」
私もまだ帰りたくはなかったから、誘ってくれて嬉しかった。
再び江ノ電に乗る。極楽寺駅を過ぎて稲村ヶ崎駅へ着く手前、窓の向こうに海と空が広がった。私たちは山のほうを向いて並んで座っていたから、後ろにある窓を振り向いて二人で青い海を眺めた。傾き始めた日の光が、きらきらと海に反射している。何人ものサーファーが波に乗り、遠くに揺れるヨットが見えた。
七里ヶ浜駅と鎌倉高校前駅から学生がどっと乗り込んで来たため、座席を詰め、彼との距離が近くなる。満員電車と同じと思っても顔が火照ってしまい、ごまかすためにうつむくしかなかった。
緊張しているうちに江ノ島駅に到着した。地下道から地上へ出ると、江の島大橋が現れた。橋の先には江の島がある。青い海から吹く風が、着物の袂を大きくはためかせた。空の高い所でとんびが鳴いている。潮の香りを深く吸い込み、解放感を味わった。
長い橋をゆるゆると渡る。それから青銅の鳥居をくぐって、坂の参道を上った。
「疲れませんか?」
「ゆっくり歩いてくださっているから大丈夫です」
彼は度々私を振り向いて、歩幅を合わせてくれる。
参道を上りきると、だいぶ日が落ちていた。さらに上へ行くにはもう時間が遅いということで、ここから海を眺めることにする。
人の多い場所から少し離れて遠くを臨むと、日暮れの中にぽつぽつと外灯が点き、湾岸に夜景が見えた。
「綺麗……」
私にはもったいないくらいの素敵な日だった。夢なら覚めて欲しくないなんて思ってしまうくらいの。
「今日は、ありがとうございました」
お辞儀をした私に、彼も頭を下げた。
「僕のほうこそ、ありがとうございました。楽しかったです」
「私も楽しかったです、とても」
微笑んだ彼が信玄袋に手を入れた。いつの間にかやって来た猫が、そばのベンチに座ってこちらを見ている。目が合うと、ごろんと寝転がってお腹を見せた。その仕草が可愛くて思わず笑みが零れる。
「よかったら、これ」
彼の声に視線を戻す。差し出された手のひらには紙袋がのっていた。
「何ですか?」
「開けてみてください」
手に取って袋の中を覗くと、透明なケースに入った繊細なシルバーのチェーンが見えた。小さな乳白色の陶器でできた、バラのペンダントトップのネックレスだった。
「これ、さっきのお店の!?」
「何度も見ていたようだったので。今日のお礼に受け取って下さい」
あまりの可愛さに、帯留め探しもそっちのけで見ていたアンティークネックレスのうちの一つだ。結構なお値段だから買うことはやめたんだけど、彼がそれに気付いていたなんて。
「いただけません、こんな」
「いいんです」
「でも」
「後悔しますよ」
彼が表情を曇らせた。
「え?」
「あとからその場所に行っても、二度と巡り会えないかもしれないじゃないですか」
真剣な眼差しと低い声に、心臓がどくんと跳ねた。急に雰囲気が変わった気がして戸惑う。
「手に入れておけばよかった、なんて思うより、買ってから後悔したほうがまだいいでしょ?」
クスッと笑った彼は私の手からケースを奪い、ネックレスを取り出した。留め具を外して私の首元にそれを着けてくれる。
「似合ってます。着物に合わせても、おかしくない」
「ありがとうございます。申し訳ないですけど、お言葉に甘えて……いただきます」
首に触れるチェーンから彼の心遣いが伝わるようで何だかくすぐったい。階段を下りてくる人たちが私たちの横を通り過ぎていった。
「あの、私にもお礼をさせて下さい」
「何もいらないですよ」
「せめてお茶くらいは、ごちそうさせて欲しいんですが……」
「それじゃあ」
かがんで近づいた彼が悪戯っぽく、にっと笑った。少し子どもっぽいその表情にどきりとする。
「今から夕飯に付き合ってもらえませんか? 僕、お腹空いちゃって。もう六時過ぎですよね」
「それはもちろんお付き合いしたいんですけど、あの」
お茶を奢るくらいなら余裕で持っているんだけど、食事となると心配が先に立つ。お酒も飲むよね? もしも足りなければカードを使えばいいかな。お財布の中身を頭の中で計算していると、焦る私を安心させるかのように彼が言った。
「僕がお誘いしてるんだから、会計の心配は要らないですよ」
「でもそれじゃ、なおさら困ります」
「というか、実はもう予約入れちゃってるんですよ。謝らなければいけないのは僕のほうで」
「予約?」
「あなたが席を外している間に。……すみません」
さっき、お手洗いに行ったときだろうか。
「僕が勝手なことを言ってるんですから、どうぞ気兼ねなく。あ、でも無理なら断って下さいね」
「無理じゃない、です」
本当は、私ももっと一緒にいたかったから。
「和食は大丈夫ですか?」
「ええ、好きです」
「じゃあ行きましょう。冷え込まないうちに」
薄暗い石段を下りて、参道を戻った。両脇に並ぶお店は行きと同様の賑わいで、縁日の夜店のような雰囲気を醸し出している。外灯の下、空車を表示したタクシーが数台並んでいた。彼のあとについてタクシーの後部座席へ乗り込む。
「どちらまで?」
「プリンシパルまで、お願いします」
え……? それってもしかして、ホテルの?
驚いた私はひとつ息を吸い込み、彼に聞こえないよう静かにそれを吐き出した。タクシーが発車する。フロントガラスに迫る江の島大橋を見つめながら平静を装い、混乱する頭の中で考えをまとめた。
あそこはきちんとしたホテルでレストランが絶対にあるはずだから、何もおかしなことはない。私が考え過ぎなの。せっかく誘ってくれたものを必要以上に構えては駄目。お互い大人なんだし、これくらいのことで動揺はしない。大丈夫。
タクシーは海沿いの国道を走っていく。右側に座る彼の向こうに湘南の海が見えた。日が落ちたあとの水平線に近い空はオレンジ色をわずかに残し、降り注ぐ群青に呑み込まれそうになっている。
贈られたネックレスのペンダントトップをそっと指先で触り、彼の言葉を思い出した。
――あとからその場所に行っても、二度と巡り会えないかもしれないじゃないですか。
心臓の音と共鳴するかのように、星がひとつ、ふたつと宵闇の空に瞬き始めていた。
やがて目の前に、明かりに照らし出された美しいホテルが現れた。途端に高まる緊張が、手のひらを湿らせる。食事に来たのよ、食事に。それだけなんだから落ち着いて。
「あ、ここでいいです」
ホテルの手前で彼が運転手さんに告げた。
「ここでよろしいですか?」
「ええ。ありがとう」
素早く支払いを済ませた彼とともに降りたすぐ前には、古民家のような佇まいの建物。ホテルの敷地内のようだから、もしかしてこれが……お店?
「ここ、鉄板焼きがおいしいんですよ」
「あ、そうなんですか。初めて来ました」
ホッと胸を撫で下ろす。と同時に、彼に対して申し訳ない気持ちが込み上げた。約束通り食事に連れて来てくれただけなのに。これだから男慣れしてない女は駄目なのよ。
「あ、ちょっとここで待っていて下さい。先に確認しておきたいことがあるので」
「え? ええ」
「すぐに戻りますね」
早足で進んだ彼が一人でお店に入る。手持無沙汰になって振り返り、ホテルの外観をぼんやり見つめた。正面入り口は、ここよりもっと奥にあるらしい。
ドアの開く音と同時に、彼がこちらへやって来た。
「すみません、お待たせしました。行きましょう」
「はい」
店内に入ると、店員さんが私たちへお辞儀をした。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
太い梁が何本も走る、吹き抜けの天井。カウンター席の前にはお酒の瓶が並び、大きな鉄板があった。私と彼は窓際のテーブル席へ案内された。窓ガラスの外のずっと遠く、闇の中に小さないくつもの光を纏う江の島が見える。
「どうせなら窓際がいいかな、と思ったんですが、暗くてあまり見えませんね」
苦笑した彼とともに椅子に座った。
「それで、さっき確認されてたんですね。窓際の席かどうか」
「あ、ええ、まぁ……そんな感じです」
お店の前で私を待たせたのは、それが理由じゃなかったの? 一瞬戸惑いの表情を見せた彼の言動が引っかかった。
「お酒は飲めますか?」
「少しなら」
「僕も少しだけ飲もうかな」
種類がたくさんあるので迷いながら、お酒を選ぶ。
「桃酒を」
「僕は湘南ビールで」
「かしこまりました」
店員さんが去るのを見届けてから、彼が肩を竦めた。
「喉渇いちゃって」
「たくさん歩きましたもんね」
「ですね」
彼のはにかんだような笑顔に合わせて、私も笑った。笑い方が無邪気な感じに思える。やっぱりこの人、年下なのかな。
乾杯をしてから、一品料理を選んだ。料理を待つ間に、あずま袋の中で泳いでいた、拝観料と引き替えに渡されるチケットと手帖を取り出した。手帖をひらいて、チケットをカバーに挟む。
「それ、いつも手帖に入れているんですか?」
「ええ。どこかに行ったときは必ずこうして記念に挟んでおくんです」
「そうですか……」
江の島でネックレスを差し出したときのように、彼の表情が再び曇った気がした。でもそれはほんの一瞬のことで、すぐに元の優しげな表情に戻ったから、私は安心してそのあとも話を続けた。
お酒を飲みながら口にした生しらすは、ねっとりとしていて味が濃厚だった。湘南でとれたという魚のお造りは甘く、大根の煮物はほろほろと口の中で崩れてしまう。
「僕は都内に住んでいるんですが、あなたのお住まいはここから近いんですか?」
「横浜です。都内からだと、ここまで結構お時間かかりませんか?」
「たまに仕事関係で鎌倉には来ているんですよ。今日は完全にオフなので普段は見られない場所に行こうかと、うろうろしていました」
あなたがいてくれてよかった、と彼が呟いた。そんな嬉しいことを言われても、どういう顔をしていいかわからない。
「お待たせいたしました」
地野菜の鉄板焼きが湯気を立てている。続けて運ばれた帆立貝と車海老は、新鮮で味が濃厚。そして黒毛和牛は塩とわさびで食べるのがおいしかった。でも胸がいっぱいで、たくさんは口にすることができない。
彼が私の隣の椅子を見た。
「荷物多いですよね。重くなかったですか」
「え、ええ全然。……お土産なんです」
まさか着替えの洋服が入ってるなんて想像もできないよね。折り畳みのパンプスまであると知られたら、あきれられちゃうかも。
「言いそびれていましたが……その着物、あなたにとてもよく似合っていますよ」
突然放たれた彼の言葉に、胸が熱くなる。優しい視線から逃げるように、からし色の着物の袖に目をやった。
「あ、ありがとうございます。これアンティークの着物なんです。綺麗な色で秋らしいかと思って買いました。でも初心者なので、こういう合わせ方でいいのかよくわからないんです。あの、男性の着物姿も、とても素敵ですよね」
「僕も初心者なんですよ。どうしたらいいのか、まるでわからないんで、呉服屋で選んでもらったのをそのまま着てます」
「ご自分で着られるんですか?」
「一応。趣味で始めたばかりだから、着慣れてる人から見ればおかしなところがたくさんあると思いますが」
「私も、そう思われているかも」
お互い初心者だということに、またひとつ緊張が解けた。私の様子に気付いた彼が覗き込むような上目づかいで言った。
「安心しました?」
「……安心しました」
「僕も」
二人で顔を見合わせてクスクスと笑う。今日何回目だろう、こんなふうにして笑い合うのは。小さな秘密を共有したときのわくわくするような思い。男の人と胸をときめかせながら話すという、この感じが……知ってしまったら抜け出せないくらいに心地よかった。
「今度は、お互い着物じゃないときに源氏山のほうへでも行きませんか」
「銭洗弁天や佐助稲荷があるほうですよね」
「あの坂は靴で行かないと、僕にはまだまだ無理かな」
「私も草履では無理です。靴でも少し大変ですもんね」
今度、なんて素敵な約束に答えてしまっていいのだろうか。すっかり忘れそうになっていた三日後に予定しているお見合いのことが、頭を掠めた。でも……今は何も考えたくない。
鎌倉周辺のお店や、これから行ってみたいお寺、着物のあれこれなどを話して、時間は瞬く間に過ぎて行った。
「お時間、まだ大丈夫ですか?」
「ええ。明日も有休を取ってあるので」
「そうですか……」
微笑んだ彼は窓の外へ視線を移した。私も同じように窓の外へ目を向ける。暗闇を見ていたはずなのに、いつの間にかガラス越しに彼と見つめ合っていた。恥ずかしいのに、なかなか視線を外すことができない。
ふいに、彼が立ち上がった。
「ちょっと失礼。すぐに戻ります」
「あ、はい」
お手洗い、かな。
「好きなもの、頼んでていいですからね」
「ありがとうございます」
彼の笑顔に私も笑顔で返す。
窓の外では、江の島の灯台が規則的にこちらへ光を投げていた。さっき島の上から見下ろしていた遠くの場所に今、私がいる。それが、とても不思議なことに思えた。
しばらくして彼がテーブルに戻って来た。
「お待たせして、すみません」
「いえ」
席に着いた彼は、私を見ずに再び窓の外へ視線をやった。表情から笑みが消えて、黙り込んだままだ。
「……あの?」
ついさっき、ここで笑っていた彼とは全く違う様子に不安な気持ちになる。
私、調子にのり過ぎたのかも。ずいぶん時間が経ったというのに、一向に帰ろうとする素振りも見せないことが重荷になったとか。こんなときに気の利いた言葉ひとつ思い浮かばない自分が情けなかった。
彼は着物を着慣れているのか、動作にぎこちなさのようなものを全く感じさせなかった。そんなところにも、いちいちときめいてしまう。黒い足袋に雪駄という彼の足元を見た。身近に着物を着た男の人がいないせいか、隅々まで目を引かれていた。
「意外と着物姿の人は少ないんですね。もっと多いのかと思っていましたが」
私の視線に気付いたのか、大仏様を見ながら彼が先に口をひらいた。襟元から出ている首筋や喉仏が妙に色っぽくて、一人でどぎまぎしてしまう。
「私、七月の初めにも着物でここに来たんです」
「七月の初め、ですか」
こちらを向いた彼にすぐそばで見つめられて、頬が熱くなる。黒目が綺麗。
「ええ。そのときは着物の方と何人かすれ違いました。猛暑日だったんですけどね」
私は悲惨な目に遭ったけれど、着物を着慣れたふうの人は皆涼しげな顔で歩いていたのを覚えている。あんなふうになるまでの道のりは、遠そうだ。
「着物を着るなら猛暑日よりも、今の時期のほうが絶対にいいな。そう思いませんか?」
「ええ、本当に」
楽しげに笑いかけられて、そこでようやく私も笑顔で返事ができた。
外国人のツアー客や遠足の学生が次々に訪れて、辺りが途端に騒がしくなった。
「今日、僕は仕事が休みなんですが、あなたも?」
「はい。といっても有休なんです。鎌倉は平日のほうが回りやすいかと思って」
「土日はすぐに帰りたくなるくらいの、ひどい人出ですからね」
顔を見合わせて小さく笑った。些細なことなのに何だろう、胸の中がほわっと温かくなる。
「撮られてますよ、ほら」
「え?」
外国人観光客の数人が、遠くから私たちへデジカメを向けていた。
「着物が珍しいんでしょう。一人ならまだしも、男女二人揃っている、というのがまたターゲットになる理由かもしれませんね」
「あ、そうかも」
「何だか照れくさいな。ポーズ決めるわけにもいかないし」
困ったようにうつむく彼がおかしくて、思わずクスリと笑った。するとますます照れたようで、私から顔を逸らして向こうを向いてしまった。
初対面の人に可愛い、なんて思ったら失礼かな。
この人の纏う空気が、不思議なほど心地よかった。緊張はしていても、言葉は躊躇うことなくすらすらと出てくる。普段、人見知りの私には考えられないことだった。彼の和服が目に付いたことは確かだけれど、それ以上にこの人自身の魅力に惹きつけられている。
観光客が去ると、安心したようにこちらを向いた彼が首を傾げて私に尋ねた。
「このあとは、どこへ行く予定でした?」
「特には決めていません」
「じゃあ、駅に戻りがてら長谷寺へ行きませんか」
「ええ」
彼と一緒にベンチから立ち上がり、高徳院をあとにした。
三時過ぎに長谷寺へ到着した。大きく枝を伸ばした立派なもみじの木々。その葉が色づくのは、まだ少し先のようだ。ゆっくりと歩いて、美しい庭園を堪能する。荘厳な観音様をお参りして、私はてんとう虫のお守り、彼は手のひらにすっぽり収まる身代わり鈴を購入した。
長谷通りに戻って雑貨屋に寄ってもらう。外国のアンティークが並ぶ中、私は帯留めに使えそうなものを探した。彼はこういった店に入るのに何の抵抗もないらしく、可愛い店内で一緒に雑貨を眺めてくれている。しばらくするとレジに向かい、何かを買ったようだった。私のほうは結局、いいものは見付からず、全然関係のないアクセサリーばかり見てしまった。
「すみません、付き合わせてしまって」
「僕は楽しかったですよ。普段こういうものには縁がないので」
お店を出たところで優しく笑った彼は、信玄袋に購入したものをしまった。
駅に向かって歩きだし、人通りの多い場所を抜けていく。改札の手前で立ち止まった彼が、私に言った。
「歩き慣れていらっしゃいますよね」
「そんなことはないんですけど、今日は調子がいいみたい」
「それはよかった。僕も一人でいるよりは足取りが軽いかな。ところで、あの」
「?」
「お時間大丈夫でしたら、もう少しだけ付き合っていただけませんか」
「ええ、もちろん」
私もまだ帰りたくはなかったから、誘ってくれて嬉しかった。
再び江ノ電に乗る。極楽寺駅を過ぎて稲村ヶ崎駅へ着く手前、窓の向こうに海と空が広がった。私たちは山のほうを向いて並んで座っていたから、後ろにある窓を振り向いて二人で青い海を眺めた。傾き始めた日の光が、きらきらと海に反射している。何人ものサーファーが波に乗り、遠くに揺れるヨットが見えた。
七里ヶ浜駅と鎌倉高校前駅から学生がどっと乗り込んで来たため、座席を詰め、彼との距離が近くなる。満員電車と同じと思っても顔が火照ってしまい、ごまかすためにうつむくしかなかった。
緊張しているうちに江ノ島駅に到着した。地下道から地上へ出ると、江の島大橋が現れた。橋の先には江の島がある。青い海から吹く風が、着物の袂を大きくはためかせた。空の高い所でとんびが鳴いている。潮の香りを深く吸い込み、解放感を味わった。
長い橋をゆるゆると渡る。それから青銅の鳥居をくぐって、坂の参道を上った。
「疲れませんか?」
「ゆっくり歩いてくださっているから大丈夫です」
彼は度々私を振り向いて、歩幅を合わせてくれる。
参道を上りきると、だいぶ日が落ちていた。さらに上へ行くにはもう時間が遅いということで、ここから海を眺めることにする。
人の多い場所から少し離れて遠くを臨むと、日暮れの中にぽつぽつと外灯が点き、湾岸に夜景が見えた。
「綺麗……」
私にはもったいないくらいの素敵な日だった。夢なら覚めて欲しくないなんて思ってしまうくらいの。
「今日は、ありがとうございました」
お辞儀をした私に、彼も頭を下げた。
「僕のほうこそ、ありがとうございました。楽しかったです」
「私も楽しかったです、とても」
微笑んだ彼が信玄袋に手を入れた。いつの間にかやって来た猫が、そばのベンチに座ってこちらを見ている。目が合うと、ごろんと寝転がってお腹を見せた。その仕草が可愛くて思わず笑みが零れる。
「よかったら、これ」
彼の声に視線を戻す。差し出された手のひらには紙袋がのっていた。
「何ですか?」
「開けてみてください」
手に取って袋の中を覗くと、透明なケースに入った繊細なシルバーのチェーンが見えた。小さな乳白色の陶器でできた、バラのペンダントトップのネックレスだった。
「これ、さっきのお店の!?」
「何度も見ていたようだったので。今日のお礼に受け取って下さい」
あまりの可愛さに、帯留め探しもそっちのけで見ていたアンティークネックレスのうちの一つだ。結構なお値段だから買うことはやめたんだけど、彼がそれに気付いていたなんて。
「いただけません、こんな」
「いいんです」
「でも」
「後悔しますよ」
彼が表情を曇らせた。
「え?」
「あとからその場所に行っても、二度と巡り会えないかもしれないじゃないですか」
真剣な眼差しと低い声に、心臓がどくんと跳ねた。急に雰囲気が変わった気がして戸惑う。
「手に入れておけばよかった、なんて思うより、買ってから後悔したほうがまだいいでしょ?」
クスッと笑った彼は私の手からケースを奪い、ネックレスを取り出した。留め具を外して私の首元にそれを着けてくれる。
「似合ってます。着物に合わせても、おかしくない」
「ありがとうございます。申し訳ないですけど、お言葉に甘えて……いただきます」
首に触れるチェーンから彼の心遣いが伝わるようで何だかくすぐったい。階段を下りてくる人たちが私たちの横を通り過ぎていった。
「あの、私にもお礼をさせて下さい」
「何もいらないですよ」
「せめてお茶くらいは、ごちそうさせて欲しいんですが……」
「それじゃあ」
かがんで近づいた彼が悪戯っぽく、にっと笑った。少し子どもっぽいその表情にどきりとする。
「今から夕飯に付き合ってもらえませんか? 僕、お腹空いちゃって。もう六時過ぎですよね」
「それはもちろんお付き合いしたいんですけど、あの」
お茶を奢るくらいなら余裕で持っているんだけど、食事となると心配が先に立つ。お酒も飲むよね? もしも足りなければカードを使えばいいかな。お財布の中身を頭の中で計算していると、焦る私を安心させるかのように彼が言った。
「僕がお誘いしてるんだから、会計の心配は要らないですよ」
「でもそれじゃ、なおさら困ります」
「というか、実はもう予約入れちゃってるんですよ。謝らなければいけないのは僕のほうで」
「予約?」
「あなたが席を外している間に。……すみません」
さっき、お手洗いに行ったときだろうか。
「僕が勝手なことを言ってるんですから、どうぞ気兼ねなく。あ、でも無理なら断って下さいね」
「無理じゃない、です」
本当は、私ももっと一緒にいたかったから。
「和食は大丈夫ですか?」
「ええ、好きです」
「じゃあ行きましょう。冷え込まないうちに」
薄暗い石段を下りて、参道を戻った。両脇に並ぶお店は行きと同様の賑わいで、縁日の夜店のような雰囲気を醸し出している。外灯の下、空車を表示したタクシーが数台並んでいた。彼のあとについてタクシーの後部座席へ乗り込む。
「どちらまで?」
「プリンシパルまで、お願いします」
え……? それってもしかして、ホテルの?
驚いた私はひとつ息を吸い込み、彼に聞こえないよう静かにそれを吐き出した。タクシーが発車する。フロントガラスに迫る江の島大橋を見つめながら平静を装い、混乱する頭の中で考えをまとめた。
あそこはきちんとしたホテルでレストランが絶対にあるはずだから、何もおかしなことはない。私が考え過ぎなの。せっかく誘ってくれたものを必要以上に構えては駄目。お互い大人なんだし、これくらいのことで動揺はしない。大丈夫。
タクシーは海沿いの国道を走っていく。右側に座る彼の向こうに湘南の海が見えた。日が落ちたあとの水平線に近い空はオレンジ色をわずかに残し、降り注ぐ群青に呑み込まれそうになっている。
贈られたネックレスのペンダントトップをそっと指先で触り、彼の言葉を思い出した。
――あとからその場所に行っても、二度と巡り会えないかもしれないじゃないですか。
心臓の音と共鳴するかのように、星がひとつ、ふたつと宵闇の空に瞬き始めていた。
やがて目の前に、明かりに照らし出された美しいホテルが現れた。途端に高まる緊張が、手のひらを湿らせる。食事に来たのよ、食事に。それだけなんだから落ち着いて。
「あ、ここでいいです」
ホテルの手前で彼が運転手さんに告げた。
「ここでよろしいですか?」
「ええ。ありがとう」
素早く支払いを済ませた彼とともに降りたすぐ前には、古民家のような佇まいの建物。ホテルの敷地内のようだから、もしかしてこれが……お店?
「ここ、鉄板焼きがおいしいんですよ」
「あ、そうなんですか。初めて来ました」
ホッと胸を撫で下ろす。と同時に、彼に対して申し訳ない気持ちが込み上げた。約束通り食事に連れて来てくれただけなのに。これだから男慣れしてない女は駄目なのよ。
「あ、ちょっとここで待っていて下さい。先に確認しておきたいことがあるので」
「え? ええ」
「すぐに戻りますね」
早足で進んだ彼が一人でお店に入る。手持無沙汰になって振り返り、ホテルの外観をぼんやり見つめた。正面入り口は、ここよりもっと奥にあるらしい。
ドアの開く音と同時に、彼がこちらへやって来た。
「すみません、お待たせしました。行きましょう」
「はい」
店内に入ると、店員さんが私たちへお辞儀をした。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
太い梁が何本も走る、吹き抜けの天井。カウンター席の前にはお酒の瓶が並び、大きな鉄板があった。私と彼は窓際のテーブル席へ案内された。窓ガラスの外のずっと遠く、闇の中に小さないくつもの光を纏う江の島が見える。
「どうせなら窓際がいいかな、と思ったんですが、暗くてあまり見えませんね」
苦笑した彼とともに椅子に座った。
「それで、さっき確認されてたんですね。窓際の席かどうか」
「あ、ええ、まぁ……そんな感じです」
お店の前で私を待たせたのは、それが理由じゃなかったの? 一瞬戸惑いの表情を見せた彼の言動が引っかかった。
「お酒は飲めますか?」
「少しなら」
「僕も少しだけ飲もうかな」
種類がたくさんあるので迷いながら、お酒を選ぶ。
「桃酒を」
「僕は湘南ビールで」
「かしこまりました」
店員さんが去るのを見届けてから、彼が肩を竦めた。
「喉渇いちゃって」
「たくさん歩きましたもんね」
「ですね」
彼のはにかんだような笑顔に合わせて、私も笑った。笑い方が無邪気な感じに思える。やっぱりこの人、年下なのかな。
乾杯をしてから、一品料理を選んだ。料理を待つ間に、あずま袋の中で泳いでいた、拝観料と引き替えに渡されるチケットと手帖を取り出した。手帖をひらいて、チケットをカバーに挟む。
「それ、いつも手帖に入れているんですか?」
「ええ。どこかに行ったときは必ずこうして記念に挟んでおくんです」
「そうですか……」
江の島でネックレスを差し出したときのように、彼の表情が再び曇った気がした。でもそれはほんの一瞬のことで、すぐに元の優しげな表情に戻ったから、私は安心してそのあとも話を続けた。
お酒を飲みながら口にした生しらすは、ねっとりとしていて味が濃厚だった。湘南でとれたという魚のお造りは甘く、大根の煮物はほろほろと口の中で崩れてしまう。
「僕は都内に住んでいるんですが、あなたのお住まいはここから近いんですか?」
「横浜です。都内からだと、ここまで結構お時間かかりませんか?」
「たまに仕事関係で鎌倉には来ているんですよ。今日は完全にオフなので普段は見られない場所に行こうかと、うろうろしていました」
あなたがいてくれてよかった、と彼が呟いた。そんな嬉しいことを言われても、どういう顔をしていいかわからない。
「お待たせいたしました」
地野菜の鉄板焼きが湯気を立てている。続けて運ばれた帆立貝と車海老は、新鮮で味が濃厚。そして黒毛和牛は塩とわさびで食べるのがおいしかった。でも胸がいっぱいで、たくさんは口にすることができない。
彼が私の隣の椅子を見た。
「荷物多いですよね。重くなかったですか」
「え、ええ全然。……お土産なんです」
まさか着替えの洋服が入ってるなんて想像もできないよね。折り畳みのパンプスまであると知られたら、あきれられちゃうかも。
「言いそびれていましたが……その着物、あなたにとてもよく似合っていますよ」
突然放たれた彼の言葉に、胸が熱くなる。優しい視線から逃げるように、からし色の着物の袖に目をやった。
「あ、ありがとうございます。これアンティークの着物なんです。綺麗な色で秋らしいかと思って買いました。でも初心者なので、こういう合わせ方でいいのかよくわからないんです。あの、男性の着物姿も、とても素敵ですよね」
「僕も初心者なんですよ。どうしたらいいのか、まるでわからないんで、呉服屋で選んでもらったのをそのまま着てます」
「ご自分で着られるんですか?」
「一応。趣味で始めたばかりだから、着慣れてる人から見ればおかしなところがたくさんあると思いますが」
「私も、そう思われているかも」
お互い初心者だということに、またひとつ緊張が解けた。私の様子に気付いた彼が覗き込むような上目づかいで言った。
「安心しました?」
「……安心しました」
「僕も」
二人で顔を見合わせてクスクスと笑う。今日何回目だろう、こんなふうにして笑い合うのは。小さな秘密を共有したときのわくわくするような思い。男の人と胸をときめかせながら話すという、この感じが……知ってしまったら抜け出せないくらいに心地よかった。
「今度は、お互い着物じゃないときに源氏山のほうへでも行きませんか」
「銭洗弁天や佐助稲荷があるほうですよね」
「あの坂は靴で行かないと、僕にはまだまだ無理かな」
「私も草履では無理です。靴でも少し大変ですもんね」
今度、なんて素敵な約束に答えてしまっていいのだろうか。すっかり忘れそうになっていた三日後に予定しているお見合いのことが、頭を掠めた。でも……今は何も考えたくない。
鎌倉周辺のお店や、これから行ってみたいお寺、着物のあれこれなどを話して、時間は瞬く間に過ぎて行った。
「お時間、まだ大丈夫ですか?」
「ええ。明日も有休を取ってあるので」
「そうですか……」
微笑んだ彼は窓の外へ視線を移した。私も同じように窓の外へ目を向ける。暗闇を見ていたはずなのに、いつの間にかガラス越しに彼と見つめ合っていた。恥ずかしいのに、なかなか視線を外すことができない。
ふいに、彼が立ち上がった。
「ちょっと失礼。すぐに戻ります」
「あ、はい」
お手洗い、かな。
「好きなもの、頼んでていいですからね」
「ありがとうございます」
彼の笑顔に私も笑顔で返す。
窓の外では、江の島の灯台が規則的にこちらへ光を投げていた。さっき島の上から見下ろしていた遠くの場所に今、私がいる。それが、とても不思議なことに思えた。
しばらくして彼がテーブルに戻って来た。
「お待たせして、すみません」
「いえ」
席に着いた彼は、私を見ずに再び窓の外へ視線をやった。表情から笑みが消えて、黙り込んだままだ。
「……あの?」
ついさっき、ここで笑っていた彼とは全く違う様子に不安な気持ちになる。
私、調子にのり過ぎたのかも。ずいぶん時間が経ったというのに、一向に帰ろうとする素振りも見せないことが重荷になったとか。こんなときに気の利いた言葉ひとつ思い浮かばない自分が情けなかった。
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