アラフォー、勇者様溺愛旅~時々魔王も添えて~

草薙 紗々

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奴隷としての生活

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 レオン7世の白亜の城より、遥か北。


 極寒の荒れ地に、魔神の居城はあった。




 年中、雪に閉ざされた其処は、最早、悪の祝福を存分にうけ、凄まじい猛吹雪が荒れ狂っている。




 そんな、悪の居城の最下層。


  世界から忘れ去られたかのような、遥か地下深くに、彼らは居た。




  かろうじて局部を覆い隠す、粗末な薄い布切れのみしか身につけることを許されない彼らは、何時も、寒さに震えていた。


 与えられる食事といえば、カビかけた固いパンの欠片が一欠片…。


 彼らは、何時も空腹だった…。






 そして、『魔力』の力の源となる、『魔石』を発掘させられていたのだ。


 重い手枷、足枷を嵌められ、魔物どもに、悪戯に鞭打たれる日々………。








かつて、勇者と誉れ高かった、少年マルスと、その仲間達の姿が、そこにあった………。








 いや、彼らだけではない。




 レオン7世をはじめとする、各国の王族達が、重罪人として、この呪われた石切場で働かされていたのだ。




  女子供は、水汲みをさせられたが、歩くときはケダモノの様に四つ足で歩くことを強要され、あくまでも逆らう矜持の高い妃とその子供達は、従うまで父親が鞭打たれるはめにおちいった。








 そして、やっと長い1日の労働が終わると、今日もマルスにむかって、国王達から、怨嗟の呪詛がなげつけられるのだった………。








 「おお、勇者マルスよっ! 負けてしまうとは、情けないっ! おかげで私達は、人としての尊厳を奪われ、呪われた地で、奴隷として、残りの余生を、過ごすはめになったっ!

 それも、これも、すべて、お主が不甲斐ないからじゃっ!!」




 「そうじゃっ! そうじゃっ!」




 「片田舎の若造がっ! 女神様に選ばれたのが、そもそもの間違いだったんじゃっ!

 あの時、身のほどをわきまえて辞退しておれば、こんなことには、ならなんだものをっ!」




 「恥を知れっ!!」




 「死んで詫びろっ!」








 「てめぇらっ! いい加減にしろよっ!」








 ただ、黙して俯いて、呪詛の言葉に晒されていたマルスの前に立ちはだかったのは、かつての旅の仲間の1人。


 遥か極東の拳法家、リュインだった。




 「………。」




 無言でマルスを庇ったのは、リュインと同じく、旅の仲間で、ホムンクルスのクロウリーだ。




 「ふんっ! 汚らわしい異民族と、出来損ないの人形風情が、いきがりおってっ!」




 「仲間までも、つけあがっておるようようじゃなっ!」




 「そうじゃっ! そうじゃっ!」








 「ちょっと、まってくださいっ!」




  それまで、項垂れて、言葉の刃に黙って耐えていたマルスだったが、仲間を侮辱された途端、猛虎の如く噛みついた。




 「僕のことは、いくら悪く言ったっていい!

でも、仲間のことにを侮辱するのは、やめてください!!」




 これには、流石の王達もたじろいだ。








 が――――――。








  「お父様達、もうやめてぇっ!」








  今にも掴み合いの抗争が勃発しようとしていたのを止めたのは、澄んだ少女の心の叫びだった。




 レオン7世の愛娘、ローザ姫である。




  毎夜繰り返される醜い争いに、心ない者達は我先にと加担し、良識のある者達は、心から涙を流していたのだ。




 「みんな、わからないの?! こんなことをしていたって、魔神を悦ばせるだけよ!

  見て! 今もあの水晶玉から、わたくし達のいさかいを、人間の心の弱さを、酒の肴にしているにちがいないわ!」


 ローザ姫の言葉に、皆が我にかえって、頭上を見上げた。




 其処には、人の頭ほどもある水晶玉が光っていて、昼も夜もなく、勇者と王達を観察しているのだった。




 皆、一様にゾッとした。




  身体と尊厳だけではない。


 『こころ』まで魔神に蹂躙されるところだったのである。




 「おお、ローザよ。 許しておくれ。 達が愚かだった。

  勇者よ。 仲間達よ。 酷いことを言った。

どうか、許してほしい……。」




  先に頭を垂れたのは、レオン7世だった。




  他の加担していた者達も、見習って次々と頭を下げていく。




  「…いえ、僕のほうこそ、頭に血がのぼっちゃって…。

恥ずかしいです…。」




 マルスは、ローザ姫を、熱い眼差しで、ありったけの感謝を込めて見つめた。




  「ローザ姫。 ありがとう。 君のおかげで、僕達は人として、失くしてはならないものを、守ることができたよ。」




 マルスに、面と向かって話しかけられると、ローザ姫は、すっかりやつれた、しかし、美しい白磁の頬を朱にそめる。




 「あの…。 いえ…。 わ、わたくしなんか……。」








 すっかり和やかになった石牢の鉄格子の扉が開かれ、1体の屈強な魔物が入ってきた。




 「そこの女。 服を脱げ。」




  と、なんとローザ姫を名指する。




 「えっ?!」




  「魔神様からの御達しだ。 今からお前は服を身につけることすら禁じられる。

さらに、食事も手を使わない犬食いだ。

 ククク…。

本物のケダモノの様にされても、その健気さ、気高さ、失わずにおれるかな…?

 ククク…。」




  厭らしく嗤いながら、魔物がローザ姫に、穢れたその手を伸ばす。




 「い、嫌ぁっ!!」




 「や、やめろっ! 娘に手を出すなっ!」




 レオン7世が、果敢に挑んだが、呆気なく壁まで吹っ飛ばされ、王は頭を強かに打ち付け、気を失った。




  「やめろっ! 彼女には指1本、触れさせないぞっ!」




 マルスが、ローザ姫を背に庇った。




  魔物は厭らしく嗤いながら、歩を詰める。




 「これはこれは、『元』勇者様。 ご機嫌麗しゅう…。」




 ジリジリと、壁まで追い詰められていく…!




 「ククク…。 指1本触れさせないって? どうやって?

  剣も無いお前に何ができる?」




  ついに、壁まで追い詰められた。




 魔物の手が、ゆっくりと、いたぶるように、伸びてくる。








 もう駄目なのか!








 「剣ならあるよっ!!!」








 その叫びと共に、見たこともない風采の『少年』から、マルスに差し出されたのは、遥か彼方。


 『地球』で最強最高の硬度を誇る伝説の鉱物、『緋緋色金ヒヒイロカネ』で『創造そうぞう』された、かの伝説の名刀、『童子切安綱どうじきりやすやすつな』である。

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