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囚われのセレスティン
しおりを挟む「………騒がしいわね………。」
そう呟いて、彼女は今日、何度目かも分からないため息を吐いた。
その、傾国の美しさよ。
足首まで伸びた長いたっぷりとした髪は、これ以上無いほどまでに透き通った水晶色。
瞳は、どこまでも澄みわたった真冬の夜空。
その髪と瞳には、この世のありとあらゆる宝石が散りばめられ、星のように輝いていた。
それは、身につけさせられている深紅の豪奢なドレスに縫い付けられた、無数の煌めく極上の魔石も敵わない。
肌はきめ細かく絹のように滑らかで、雪のように白かった。
三重まぶたの目は大きく潤み、唇はキリっと、意思の強さを表すかのごとく結ばれているが、ぷっくりと愛らしく、どんなに贅を凝らした薔薇の花も、彼女の唇の前では己が身を恥ずかしがってその花弁を萎れさせるだろう。
「帰ったぞ。 セレスティン。」
声の主にギクリとして、セレスティンは座っていた窓辺の椅子から、飛び上がるようにして立ち上がった
「おお、愛しの美しいセレスティン。
どうか、そんな目で何時までも私を睨ねめつけないでおくれ。 どうか一瞬でも良い。 私に微笑みかけておくれ…。」
『影の四天王』ソーンブラは、セレスティンの前で片膝を着くと、懇願するように言葉を続けた。
「今、その美しいドレスを着ていられるのは、私のおかげなのだよ? 毎日、ご馳走を食べられるのも、風呂に入れるのもだ。
私の花嫁でなければ、あの呪われた石切場で、ケダモノのように、這いつくばった水汲み女をさせられるんだ。
カビたパンの欠片しか与えられず、僅かばかりの冷たい水で身体を拭う…。 そんなの、嫌だろう?」
「仲間と共に居れるのなら、わたしは喜んでケダモノになりましょう。」
「また、そんな事を言って。 私を困らせないでおくれ。 美しいお前にそんな無体、出来る訳がないだろう?」
ソーンブラが1歩、セレスティンに近付いた。
セレスティンは後退さる。
「おお、愛しのセレスティン!
未だ婚姻の義を許してくれないお前だが、今日こそきっと気が変わるぞ!」
「ど、どういう意味です?!」
「ふっ…。 今、死の四天王が、あの石切場の奴隷どもを殲滅しにかかっているのさ…。 お前の大事な仲間も、無事ではすまないぞ…。」
「 あ、あぁ………!」
セレスティンは、膝から崩れ落ちた。
「そんな…。 そんな…。」
「嘘ではない。 誠の話だ。 勇者と女神の首をとって来ると、息巻いておったわ。」
ついに、セレスティンの涙腺が決壊した。
ハラハラと涙をこぼすその姿は、やはり美しかった。
「ああ…、セレスティン。 可哀想に。
だが、時がたてばお前の気持ちも変わるさ。
私は何時までも、待っているよ…。 お前と夫婦になれる日を……。」
「残念だけど、そんな日は永遠に訪れないのよ!」
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