魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫

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青年期

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うーん、預けるにしてもいったいどこへ。
こういう場合、ゲームや漫画だとギルドだろうか。

ただ、すべてを預けるわけにはいかないから先にお金を崩すか。

今から、行っても着くのは夜になるしな。別に急いでいく必要はない。

ってことで、今日の予定は変更。
家具屋に行くことにする。

実は、家は購入してあるものの家具があんまりないんだ。
明日から住むというのに机も椅子もないんじゃ過ごしにくい。

道行く人に家具屋の場所を聞いてまわり着いたのがここだ。

大通りから少しそれたところに静かに佇む店。

「黒猫の椅子」

名前からして可愛いな。

ガラスの窓越しに中を覗くとアンティーク調の家具がぼんやりと見える。

雰囲気は良さそうだ。

木製のドアを掴むとチリンと頭上で音が鳴った。
どうやら鈴がついていたようだ。

店内は、暖かな光がほわほわと浮いていて異世界感がすごかった。
ドキドキしながら、足を踏み入れると足元で動くものがあった。黒猫だ。
なるほど、名前はこの子からか。
しゃがみ込んでジッと見つめる。
前世では飼えなかったんだよなぁ。

「可愛いな。お前。看板猫か?」

異世界だからと、猫に角が生えてたり翼が生えてるわけじゃなくて良かった。
前世同様愛くるしい姿だ。

思わずなでそうになった手をすんでのところで止める。
危ねぇー。こんな小さな生き物から魔力を奪うところだった。

…俺、一生猫触れないんか。
思わぬところで悲しい現実にぶち当たり撃沈した。
動物大好きなのに…
涙が出そうだ。

そんな俺の絶望も知らず、黒猫は愛くるしい瞳で見上げてくる。
まるで、なでろと言わんばかりだ。
うにゃあ、という可愛い鳴き声つきだ。
その誘惑に負け、再び手が伸びそうになったその時…
「ようこそ、お客様。本日は何をお求めで?」


突然頭上から声がかかった。
その声に驚いて猫に伸ばしていた手を頭上へ思い切り上げた。
まるで、挙手をするように。

触っていないという意思表示のつもりだったが、おばあさんから見れば変に見えただろう。
俺もそう思う。

お互い目を見開いたまま見つめあうこと数秒。
先に動いたのは目の前のおばあさんだった。


この店の店主だろうか。

「初めまして。この店の店主のセレフィアと申します。本日は何をお求めに?」
落ち着いていて上品な女性だ。貴族の出と言われても納得できる。
淡い水色の髪を後ろでまとめゆったりとした服を着ている。

「すみません。家具を買いに来たのですが…普通の家具はありますか?」

伯爵家にいたときはあまり気にしなかったのだが、家具もすべて魔力で稼働する。

家具に稼働もなにもなくねって思うだろ。それがこの世界の家具は魔力の核が埋め込めれている。
その核に魔力を流し込むと使えるというものなのだが…例えば、ベッドにはその日の気温によって温かくなったり冷たくなったりする。机にはライトが備えついており、暗いところでも便利!らしい。
ちなみに俺の部屋のもそうだったらしいが、そんな機能は知らなかった。

…別にいらない気がする。その機能。
しかも高いんだ。これが。
椅子一つでも金貨5枚分だ。
つまり大体5万くらい。
椅子一つだぞ。

椅子にどんな機能を付けたらそんな高くなるんだよ。

どうせ使えないのだから普通のでいいんだ。

「普通のというのは?」

「魔力を使わない家具です。…俺は魔力が少ないので」

「ええ、ええ。ありますよ。数は少ないですがね」
にこにこと笑う女性に、家具はここで買うと決めた。


実は、ここの家具屋は三軒目だったりする。

一件目。魔力を使わない家具が欲しいと言ったら怪訝な顔をされ「そんなものはない」と門前払いされた。

二軒目。店の店員らしき男に理由を聞かれ正直に言ったら、ほかのお客に向かって俺を馬鹿にするような発言と、フードの中を覗こうとしてきた。
さすがにむかついたので笑顔で握手を求めた。
男は不思議そうな顔をしながら応えてくれた。

友情の証じゃないんだよ。

にんまりと笑いながら男の手を力の限り握りしめた。

もう二度と来ねえよという思いを込めながら。
男はイテテテテッと叫び手を振りほどいた。

そんなに痛いのだろうか。いつの間に俺の握力はゴリラ並みに?!

赤い顔をしながら暴言を吐く男にスッと表情を消して店を後にした。
男は追いかけてこなかった。
振り返ると男は少しふらついていた。

やべっ、魔力取りすぎたか。

内心、焦りながらも速足で店から離れた。

大人げないというなよ、これでも我慢したんだ。
言い返さなかっただけましだろ。
あれは、暴力じゃない…よな?

――
なんてことがあったせいで、ここで最後にしようと思っていたんだが当たりだったな。
諦めなくてよかった。

「…ただ、数が少ないのでお客様の気に入るものがあるかどうか」

「大丈夫です。見るだけでもいいので」

足元にすり寄ろうとする猫ちゃんをよけながら店主の後に続いた。


――そうだ、どうせ二ヵ月後には2人暮らしになるのだ。
椅子は4つくらいあっていいし、机だって大きめがいい。ベッドだって2ついる。

…この世界って配達してくれるんだろうか。
新たな疑問に唸りながらも自然と口角が上がる。

俺は思っていたよりこの新生活を楽しみにしていたらしい。
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