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青年期
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俺は鞄の中のアストラ・リリウムを掴めるだけ掴むと、倒れる「彼」の上にばらまいた。
…ばらまきすぎたようだ。
なんというか絵面がやばいことになってしまった。
気を失っているから余計に別れ花のようになっている。
縁起でもないな。
前世で嫌というほど見慣れた黒髪が今や懐かしい。手を加えれば美しいだろうに、森の中を闘いながら駆け抜けたその髪はところどころ切れていたり煤で汚れている。
顔や、腕にも傷や血が滲んでいる。顔は一度も日に当たったことがないほどに青白い。
腕の細さを見ても栄養失調なのは一目瞭然だ。
「彼」というには幼すぎる姿に胸が痛くなる。まだ10歳の少年だ。
それなのに魔力目当てに監禁し魔力を奪い取るとは。
どの国にも、どの世界にも悪いことを考える奴はいるものだ。
ため息をこぼし、今なお気を失ったままの彼を横目に鞄を漁る。
取り出したのは水色の小瓶。
そう、ファンタジーではおなじみのポーションである。
鞄にあったのは一本しかないので効果がどれほどかわからない。
母上に大量にもらったものなので中級か、上級だと思われる。
一本じゃ多分、足りないな。
こんな時のために10本くらい持っとけよ、という話だが聞いてくれ。
俺が持っていたところで意味がないんだ。
ポーションというのは魔力を回復させるものなのだが…。
魔力がないならポーションを飲めばいいじゃない、ということで屋敷にいたとき飲んでみたのだが…びっくりするぐらい何も変わらなかった。
ほとんど効果がないんだ。魔力不足によるだるさがよくなるわけでも、熱が下がるわけでもなく。
ただの水。
リュカに伝えたところ、
体が勝手に魔力の部分だけ吸ってしまうのでは、ということだった。
俺が飲んだのは本当にただの水だったらしい。
しかも、吸収された魔力も溜まることはない。
ちくしょう!
人生、ままならないものである。
ちなみに貴族や王族の間で買われる高位ポーションは傷や出血、魔法による呪いなんかにも効果があるらしい。
平民が買えるのは低級ポーション、良くて中級。
魔力だけなら低級で充分らしいが。
それが使えないということはだ。
怪我をしても、病気をしても俺は、俺だけは一瞬で治ることはない。
最悪風邪で死ぬ可能性すらある。
この世界は魔法に頼りきりだ。
だから、まともな医者なんていやしない。
俺にはどんな傷も致命傷になりうるのだ。
これを知ったとき、さすがに神を恨んだね。
俺だけデバフかかりすぎだろって。
いくらゲーム開始前に死ぬキャラだからって、やっていいことと悪いことがあるだろ!
まあ、そんなこともあってポーションは一本しか持っていなかったわけだ。
それが今回は仇になったな。
本当は今すぐ魔力回復してもらいたいところだが気を失っているところにバシャバシャかけるのもよろしくない。
かといって無理やり飲ませるのは危険なので、目覚めてから飲んでもらおう。
そう考え、「彼」の隣に置いておく。
さて、ここはとりあえずいいとして、次だ。
向かうは花畑である。
少しこの場を離れるが、あれだけ周りに魔物除けがあるのだ。
魔物に襲われることはないだろう。
「彼」の周りにアストラ・リリウムを撒いてしまったので、手元の魔物除けが無くなってしまったのだ。
「彼」が目覚めるまでちまちま採取をするとしよう。
何気にこういう黙々とやる作業は嫌いじゃない。
だからと言って限度がある。
さすがに飽きてきた。
いい匂いのする花畑で俺が取りすぎて禿げてしまった地面にゴロンと横になる。
ああー、疲れた。お腹すいた。今、何時だろ?とっくにお昼の時間は過ぎているだろう。食事を取らないとわずかな俺の魔力が無くなって体調が悪くなってしまう。
こんな一日になる予定ではなかったのに。
今日、濃すぎじゃない?
教会でおかしな奴に絡まれ、魔物と対峙し、「彼」の保護。さすがの俺も疲れた。
気付くと空は暗くなっていた。
そうやらあのまま寝てしまったようだ。
あれ、何してたっけ?
考えること数秒。
ガバリと勢いよく上体を起こす。
俺としたことがっ!
「彼」はっ?魔物は来てないか?
慌てて、立ち上がり「彼」のいた場所を見ると…「彼」は起きていた。
魔物の姿も見えない。
あたりが暗いので人影がぼんやりと浮かんでいて、とても怖い。
悲鳴をあげなかった自分を褒めてやりたいところだ。
だが、なぜか目が合っているのが分かる。
き、気まずー。
立ったまま無言でお互いを見据える。
さすがにこの距離で会話は難しいので取り合えず近くに行ってみる。
真っ黒な瞳を瞬きすらせずジーっとこちらを見据えている。
「えっと…初めまして?でいいのか?あ、ポーション置いてあるだろ?それ、飲んでいいからな。魔力戻るぞ」
第一印象大事、と笑顔で言ってみるものの何の反応もなく苦笑いする。
どうしよう、なんて言えばいいんだ。
俺の顔を見ながらぼーっと突っ立っている「彼」を座るように促してポーションを持たせる。
…飲まない。もしかして、もう魔力全快した感じ?傷も治るよ、と再度押しやって半ば無理やり飲んでもらう。
体だって痛いはずだ。
無言が気まずくてなんとか話題はないかと視線をさまよわせる。
「君、ここで倒れていたんだ。覚えてない?」
そう聞くと、フルフルと頭を振る。
一応話は聞いてくれるらしい。
「家族はどうしたんだ?家は?」
再度揺れる頭。
帰る場所が無いことを知りながら酷な質問を口にする。
いきなりうちにおいでは、不審者すぎるからな。
あくまで初対面なのだ。
いや、実際初対面なのだけど。
「そうか、なら取りあえず家に来いよ。と言っても、今日はこのままここで一夜を明かすことになりそうだけどな」
ここは、割と森の中腹当たりなので今から家に帰るのは怖い。
土地勘がないから無理に帰らない方がいいだろう。
すっかり暗くなってしまった空を見上げながら、はははと笑う。
表面上は取り繕っているけれども、胸中は大焦りだ。
子供の相手なんかしたことがないからどう対応すればいいのかまるで分からん。
…だけど、これで第一ミッションはクリア、だよな。
あとのことは明日の俺に任せよう。
空腹を訴えるお腹の音を聞かなかったことにして寝ることにする。
寝転がった俺の隣をポンポンとたたいて寝転がるように促す。
あ、俺に触れないように。おやすみ!
それだけ言って夢の中に飛び立った。
…ばらまきすぎたようだ。
なんというか絵面がやばいことになってしまった。
気を失っているから余計に別れ花のようになっている。
縁起でもないな。
前世で嫌というほど見慣れた黒髪が今や懐かしい。手を加えれば美しいだろうに、森の中を闘いながら駆け抜けたその髪はところどころ切れていたり煤で汚れている。
顔や、腕にも傷や血が滲んでいる。顔は一度も日に当たったことがないほどに青白い。
腕の細さを見ても栄養失調なのは一目瞭然だ。
「彼」というには幼すぎる姿に胸が痛くなる。まだ10歳の少年だ。
それなのに魔力目当てに監禁し魔力を奪い取るとは。
どの国にも、どの世界にも悪いことを考える奴はいるものだ。
ため息をこぼし、今なお気を失ったままの彼を横目に鞄を漁る。
取り出したのは水色の小瓶。
そう、ファンタジーではおなじみのポーションである。
鞄にあったのは一本しかないので効果がどれほどかわからない。
母上に大量にもらったものなので中級か、上級だと思われる。
一本じゃ多分、足りないな。
こんな時のために10本くらい持っとけよ、という話だが聞いてくれ。
俺が持っていたところで意味がないんだ。
ポーションというのは魔力を回復させるものなのだが…。
魔力がないならポーションを飲めばいいじゃない、ということで屋敷にいたとき飲んでみたのだが…びっくりするぐらい何も変わらなかった。
ほとんど効果がないんだ。魔力不足によるだるさがよくなるわけでも、熱が下がるわけでもなく。
ただの水。
リュカに伝えたところ、
体が勝手に魔力の部分だけ吸ってしまうのでは、ということだった。
俺が飲んだのは本当にただの水だったらしい。
しかも、吸収された魔力も溜まることはない。
ちくしょう!
人生、ままならないものである。
ちなみに貴族や王族の間で買われる高位ポーションは傷や出血、魔法による呪いなんかにも効果があるらしい。
平民が買えるのは低級ポーション、良くて中級。
魔力だけなら低級で充分らしいが。
それが使えないということはだ。
怪我をしても、病気をしても俺は、俺だけは一瞬で治ることはない。
最悪風邪で死ぬ可能性すらある。
この世界は魔法に頼りきりだ。
だから、まともな医者なんていやしない。
俺にはどんな傷も致命傷になりうるのだ。
これを知ったとき、さすがに神を恨んだね。
俺だけデバフかかりすぎだろって。
いくらゲーム開始前に死ぬキャラだからって、やっていいことと悪いことがあるだろ!
まあ、そんなこともあってポーションは一本しか持っていなかったわけだ。
それが今回は仇になったな。
本当は今すぐ魔力回復してもらいたいところだが気を失っているところにバシャバシャかけるのもよろしくない。
かといって無理やり飲ませるのは危険なので、目覚めてから飲んでもらおう。
そう考え、「彼」の隣に置いておく。
さて、ここはとりあえずいいとして、次だ。
向かうは花畑である。
少しこの場を離れるが、あれだけ周りに魔物除けがあるのだ。
魔物に襲われることはないだろう。
「彼」の周りにアストラ・リリウムを撒いてしまったので、手元の魔物除けが無くなってしまったのだ。
「彼」が目覚めるまでちまちま採取をするとしよう。
何気にこういう黙々とやる作業は嫌いじゃない。
だからと言って限度がある。
さすがに飽きてきた。
いい匂いのする花畑で俺が取りすぎて禿げてしまった地面にゴロンと横になる。
ああー、疲れた。お腹すいた。今、何時だろ?とっくにお昼の時間は過ぎているだろう。食事を取らないとわずかな俺の魔力が無くなって体調が悪くなってしまう。
こんな一日になる予定ではなかったのに。
今日、濃すぎじゃない?
教会でおかしな奴に絡まれ、魔物と対峙し、「彼」の保護。さすがの俺も疲れた。
気付くと空は暗くなっていた。
そうやらあのまま寝てしまったようだ。
あれ、何してたっけ?
考えること数秒。
ガバリと勢いよく上体を起こす。
俺としたことがっ!
「彼」はっ?魔物は来てないか?
慌てて、立ち上がり「彼」のいた場所を見ると…「彼」は起きていた。
魔物の姿も見えない。
あたりが暗いので人影がぼんやりと浮かんでいて、とても怖い。
悲鳴をあげなかった自分を褒めてやりたいところだ。
だが、なぜか目が合っているのが分かる。
き、気まずー。
立ったまま無言でお互いを見据える。
さすがにこの距離で会話は難しいので取り合えず近くに行ってみる。
真っ黒な瞳を瞬きすらせずジーっとこちらを見据えている。
「えっと…初めまして?でいいのか?あ、ポーション置いてあるだろ?それ、飲んでいいからな。魔力戻るぞ」
第一印象大事、と笑顔で言ってみるものの何の反応もなく苦笑いする。
どうしよう、なんて言えばいいんだ。
俺の顔を見ながらぼーっと突っ立っている「彼」を座るように促してポーションを持たせる。
…飲まない。もしかして、もう魔力全快した感じ?傷も治るよ、と再度押しやって半ば無理やり飲んでもらう。
体だって痛いはずだ。
無言が気まずくてなんとか話題はないかと視線をさまよわせる。
「君、ここで倒れていたんだ。覚えてない?」
そう聞くと、フルフルと頭を振る。
一応話は聞いてくれるらしい。
「家族はどうしたんだ?家は?」
再度揺れる頭。
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いきなりうちにおいでは、不審者すぎるからな。
あくまで初対面なのだ。
いや、実際初対面なのだけど。
「そうか、なら取りあえず家に来いよ。と言っても、今日はこのままここで一夜を明かすことになりそうだけどな」
ここは、割と森の中腹当たりなので今から家に帰るのは怖い。
土地勘がないから無理に帰らない方がいいだろう。
すっかり暗くなってしまった空を見上げながら、はははと笑う。
表面上は取り繕っているけれども、胸中は大焦りだ。
子供の相手なんかしたことがないからどう対応すればいいのかまるで分からん。
…だけど、これで第一ミッションはクリア、だよな。
あとのことは明日の俺に任せよう。
空腹を訴えるお腹の音を聞かなかったことにして寝ることにする。
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あ、俺に触れないように。おやすみ!
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