魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫

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青年期

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転移陣に魔力を流してもらい、二人で家に入る。

外はだんだんと日が落ちて、室内も薄暗くなってきていた。
魔力で光る電気はないので、日が完全に落ちたら真っ暗になるだろう。

早々に寝ることになりそうだ。
前世では遅くまで起きてだらだら過ごしていたがこんなに規則正しい生活をすることになるとはな。


ネロのマントを外してやり、体を拭くタオルを渡す。

「ネロ~。今日もう疲れたから軽く体拭いて寝ない?」
お腹に関してはそんなに空いてないはずだ。串焼きも食べたしな。
というか、真っ暗の中さすがに料理はできない。

俺も下着姿になって濡らしたタオルであらかた拭いていく。

あー、お風呂に浸かりたい。銭湯みたいなのってないんだろうか。
いつまで拭くだけで済ませなくちゃいけないのだろうか。

ネロだってさすがに嫌なはずだ。
ちらっとネロを見るとその表情からは、何も読み取れなかった。

俺も魔力があればクリーン魔法くらいかけてやれたのに。
教会のあいつにしてもらうのは却下な。
あいつとは二度と会いたくない。


……ネロは、ちなみにクリーン魔法とかって使えたりしないよな。

ダメもとで聞いてみる。

なんのこっちゃという顔をされた。
なんかすまんね。
やっぱり、本が先決か?
先生でもいてくれたらいいんだが。


寝る準備をしている間に日が沈み室内は真っ暗になってしまった。
目が慣れるまでしばらくソファに腰かけてくつろぐことにした。

5分後、月明かりも手伝い早々に目は慣れた。
隣に座るネロの顔もわかるのだが俺はまだその場から動けなかった。

さあ、寝るぞ。となったはいいもののある事実に直面したのだ。
それはベッドが一つしかないことである。

俺が寝るだけだしー。まだ、ネロ来ないしーと高をくくっていたのが良くなかった。

「ネロ、ベッドに寝ていいぞ」
ベッドを指さしそこで寝るように促す。

フルフルと頭を振るネロ。

「ん?どうした。俺はソファで寝るから大丈夫だぞ」
一人で寝るのは嫌なのだろうか?

安心させるようにニッコリ笑う。
子供にソファに寝させて自分はベッドなんてできるわけがない。
まだ体が万全ではないのだ。柔らかなベッドで寝た方がいいに決まっている。

それに俺が魔力を吸い取らなければ一緒に寝られたが、どちらかが動いて接触してみろ。
起きたらネロが息をしてませんでした、なんてことがあったら目も当てられない。

動いてくれないネロにもう、と息をつき、一つ提案してみる。

「ネロ、今日はあそこで一人で寝てくれるか?明日、もう一つベッドを買いに行こう。それならいいだろ?」

渋々というふうにうなずいたネロは今度こそ、ベッドに向かった。

俺も一緒に向かい布団をかけてやる。
なんか、俺めっちゃ父親みたいじゃない?!
と内心テンションが上がったがその素振りは隠し、布団の上からポンポンと優しく叩いた。

「今日は、いろいろ連れまわして疲れただろ。ゆっくりお休み。ネロ」

ここで海外映画ならおでこにキスでもかますのが定番だが、それはできないので回れ右をしてソファに向かう。

……布団一枚しかなかったから俺の分ないな。
地味に寒い。明日、布団も勝手こよう。

明日の予定を頭の中で立てているといつの間にか意識は沈み夢の中に落ちていった。


――
「……うっ、はぁ、はぁ……はぁ」

誰かの声がする。声というよりもうめき声?

ネロ?

遠くにあった意識が一瞬で覚醒し、ガバリと上体を起こした。
硬いソファで寝たために腰が音を立てたがそんなことに構ってはいられない。

立ち上がりながらネロのいるベッドに視線を移す。

「はぁ、はぁ……」

「ネロ!!」

やはりあのうめき声はネロだった。


慌てて駆け寄り顔を覗き込むとせき込みながら顔を赤くしたネロの姿があった。
ぼんやりとした黒の瞳が俺の方を向いている。

「どうしたんだ!?熱か?」
額に手を持っていこうとして寸前で止める。

あぶねえ。魔力まで吸い取ってしまうところだった。

やはり弱った体に昨日動かしすぎてしまったのだろうか。
それか街で風邪でも移されたか。
ああ俺なら良かったのに。俺なら慣れてる。俺なら一人でも自力で治すのに。

医者を呼ぶ?街まで行っている間に何かあったらどうしよう。
そもそも馬車はないんだぞ。徒歩で行くことになる。

俺が看病する?それはもちろん。だけどどうやって触れずに看病する?
俺だってさんざん同じことをされたのに。
触れずになんて…何ができるんだ?

この光景にチリっと嫌なものを覚えた。

そうだ、リュカにされたっけ。
あの時は俺がベッドの中だったけど。
今度は自分がネロにしてしまったことに自嘲気味に息が漏れる。

ネロの苦しそうな声に紛れて幼少期の嫌な思い出まで思い起こされる。
ぐるぐると思考が渦のように回転していい案が何も浮かばない。


……パンッと、自身の頬を思い切り叩く。
俯きそうな顔を無理やりに上げて天井を見上げる。

こんなことしてる場合じゃないだろ!何をしてるんだよ俺は!
こんなんじゃネロを育てられない。


何か、何か。
何かないのか?この世界の人はどうやって熱を下げて……
頭の中でピンとひらめいた。

そうだ、そうだよ!
ポーションがあるじゃないか。

俺には使い道がなさすぎてすぐに思いつかなかった。
俺としたことが!

「待ってろ、ネロすぐにポーションをっ」
持ってくる、と言おうとしてその後の言葉が続かなかった。

右手に熱が伝わったからだ。

ネロが俺の手をつかんだのだ。
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