魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫

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青年期

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は?

待て待てまて今なんて言った?
魔物が元人間とか……冗談だろ?


ってことはあの鳥型の魔物、レイヴァスも?
まったく人間要素なかったけど。
思いっきり鳥だったぞ。

それに魔物の本がでているくらいだぞ?どれだけ魔物がいると思ってんだ。
それが元人間だって?
魔王の討伐に向かった人たちが帰ってこないのもそういうこと?

さすがにすんなりとは信じられない。
こいつが嘘を言っている可能性の方が高い。
いや、むしろ嘘であってくれと思ってしまう。


嫌な想像ばかりが浮かび、背筋がゾッとする。
サイコホラーかよ。
そんな展開誰も求めてねえわ。どこぞの錬金術師じゃないんだから。
この世界、BLゲームなんじゃないの?!誰だよこんなホラー要素盛り込んだ奴。
ほんわか恋愛している場合じゃねぇだろ。

体が動かないせいでいつもより脳内がにぎやかだ。

「__だから、魔物たちは__魔力を__めてね。賢いよねぇ」
まだ、何か言っているようだが衝撃が強すぎて全く理解できない。
言葉が右から左へすっぽ抜けていく。

目の前にいるこいつに何か言ってやりたい。
変態!とか、サイコパスめ!とか。
ああ、罵るレパートリーが少なすぎる。自分の語彙力の無さに涙が出そうだ。

そんなことを考えていると扉をノックする音が聞こえた。
同時に脳内も少し落ち着きを取り戻した。

新たな客人のようだ。

「失礼します。祭司どの。入りますよ」
若い男の声だ。

祭司だと?笑える。一番下っ端じゃねぇか。
ざまあみろ。

「教皇様がお呼びです」

途端、気分を害したとでもいうように大げさなため息をつく変態。

「まったく、この時間はやめろと以前も言ったのに」

一応、上司だろ?教皇の部下の前でそんなこと言うのやめとけ。
てか、教皇ってネロを王族に売って階級手に入れたってやつじゃね?
一番の悪がどうやらこの変態を呼んでいるらしい。
なんの用なんだろう。

ネロが顔を下げてしまったので、またもや俺は床とにらみ合うことになっているわけだが…ネロはよほど他のことに興味はないらしい。
まあこんな変態の顔を見ているくらいなら床を見たくなる気持ちは分かるが。

「……この者に勉強を教える必要はあるのでしょうか?」
部下が変態の隣で足をとめた。
どうやらネロのことを言っているらしい。

確かに、言っちゃあなんだが監禁しているくせに勉強?とは俺も思った。

「ふふ、私の趣味です」

ネロと接していて、ほとんど意思表示はないけどこちらの言っていることは理解しているみたいだし、何も知らない無垢な子供という感じはしなかった。
だから、こいつが勉強を見ていたのかと一瞬でもありがたいなどと思ってしまった。
実はいいやつ?などと。

全力でネロに土下座したい。
こんなやつに教わるなんてネロが可哀想だ。
絶対にいらん知識ばっか教えていたに違いない。

やっぱり、一番の悪はこいつだわ。
笑い方からしてきもすぎる。何が「ふふ」だ。一度気持ち悪いなって思うといくらイケメンでもフィルターはかからないのな。
はっ、これがはやりの蛙化ってやつか?!


「それに……知識があればあるほど絶望してくれるでしょう?」

ああん?何言ってやがる。絶望だと?
そんなことさせるか。
俺が愛して、今までのことなんてすべて忘れさせてやる。


部下よ。この変態を今すぐつまみ出してくれ。
ネロに毒だ。シッシッ。

くそっ、動かない体がもどかしい。

部下の人もこれを聞いて転職を考えただろ。俺ならその日に辞表を叩きつけるね。
だというのに…
「今なんと?」

お、お前。まさか「よく聞こえなかった」が通用するのか?!モブのくせに!
お前は聞こえる奴であれ!こいつの危険性に気づいて知らずのうちにいなくなっているモブだろ。
いや、それか聞こえないふりをしただけなのか。それはそれで後から消されるやつだ。
ご愁傷様。


もう一度ため息をついた変態は、部下の人と連れ立って扉に向かった。
足音が遠ざかり、やっといなくなる、と安堵したそのとき__。

「ああ、そうだ。__のぞき見はダメですよ」
その一言を残して扉がバタンと閉まった。

聞いた瞬間、その意味を理解するよりも先に俺の視界がぐらついた。

――
目が覚めると、暗闇だった。

あれ、俺まだ目開けてなかったか?
いつの間にか外で寝ていたんだろうか?

そう思うほどに真っ暗だ。パチパチと瞬きをする。
ふむ、起きているな。

ぼーっとする頭で見つめていると、その暗闇が突然動いた。

?!

なんと暗闇だと思っていたのはネロの瞳だったらしい。

慌てて体を起こす。
めちゃくちゃビビった。
天変地異でも起こったかと。まだ、心臓がバクバクしている。

「お前、ネロ。ビビらせんなって。なんで……床で寝てんの?」
その場に胡坐をかきながら周りを見渡すとベッドのすぐ隣の床だ。
なるほど俺はやはりネロに触れた後、倒れたらしい。

「あ、お前熱は?!もう大丈夫なのか?」

そう声を張り上げると俺の隣で寝そべっていたネロは体を起こし、こくんとうなずいた。

「本当に治ったのか?」

何だったんだ?疲れからくる発熱だろうか?

「魔力は?俺に触ったらだめだって言っただろ?今回は大丈夫だったから良かったものの…」

「大丈夫」
久しぶりに聞いたネロの声。
小さな声だが意思のあるしっかりとした声。

「な、何が大丈夫なんだ?」

そっと両の手で右手を掴まれる。

「あ、おい。言ったそばから」
まったく理解してねぇな?!と思いつつ引っこ抜こうとするも、全く抜けない。

「大丈夫」
また、ネロが言う。
確信を持った声で。

「いやダメだって、魔力の多い母上でさえ数秒も持たなかったんだぞ?」
言いながらも手を抜こうとするのをやめない。
ネロが抵抗するようにさらに力を込めて俺の手を握った。

「熱を出したばかりなんだぞ。魔力まで無くなったら――」

「大丈夫」
繰り返される「大丈夫」という言葉。


ダメだ。そう言わなきゃ。離さなきゃ。
なのに俺の口から出たのはなんとも弱弱しい「本当に?触れてもいい?大丈夫?」という体たらく。

「大丈夫」

繰り返される「大丈夫」という声にだんだん抵抗する力が抜けてきてぱたりと手を落とす。
それでもネロと手は触れたままだ。

ネロに変化はないかと顔を覗き込む。
もし、我慢でもしていようものならネロの手を掴んででも離そうと思った。

だけど、そこにあったのは柔らかい笑みだった。
初めて見たネロの微笑みは、とても綺麗だった。

少しのぎこちなさがあるが、その笑みが作り物ではなく自然に出たものだとわかる。
ネロは笑ってくれたのにこちらはなんだか泣きそうだ。

……だって、…だって温かいんだ。
魔力を取ろうとしたときに触れた誰かの体温とは比べ物にならないくらい。
温かくて涙が出てくる。
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