後悔のない生き方

11

分かってる。大丈夫。この感情はもう少ししたら大事にしまって持っていく。

息を大きく吸って湧き出る感情を無理やりに飲み込む。
そうしないと溢れてきてしまいそうだった。


一人病室で天井を眺めながら考える。

本気にならないように。彼にも本気だと思われないように。

時々、好きが出てしまうのは許してほしい。
先が長くないと思ったら、口をついて出てしまうのだ。
言えるときに言っておこう。後悔しないようにって…
それが、慧を苦しめることになっても…

私はわがままだ。
彼の隣には立てるような私じゃないのに、誰かが立っているのを想像するだけで吐きそうになるほど胸が苦しくなる。


こんな醜い私、絶対に彼に知られたくない。
最期まできれいな私でいる。

それが私のするべきことだ。


そう決めたのに…

「美月！ちょっと外に出てみない？吉原さんにもさっき許可とってきた！庭なら出てもいいって！」

はしゃぐワンちゃんみたいな顔で遊びに誘う慧に思わず怒りたくなった。

私の気も知らないで！！

「はいはい、ちょっと待って、今準備するから」

呆れたような顔をしながらふと足が止まる。

今まで、一度だって外に出ることを許可してくれなかったのに…
なんでいいって言われたの？

吉原さんに直接聞きたかったけれど腕を引く慧にあらがえるわけもなく。


嫌な想像をした。
もしかしたら…

もう長くないからと外に出ることを許してくれたのかも、なんて。

いや、そんなはずない。
だって庭だよ？家に帰っていいとか、遊びに行ってもいいとかじゃない。

たかが、病院の中庭。
考えすぎ。そうちょっと神経質になってるだけ。