後悔のない生き方

お鮫

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「慧君っ、亡くなっちゃった」


は?何?
なんて言ったの?

夢を見ているんだと思った。
なんて嫌な夢。
悪夢だ。

慧が死ぬなんてあるわけがない。
あんなに元気だったのだから。


ふわふわとした意識の中で急に機械の音が聞こえた。
ピッ、ピッ、ピッ。

いつも聞こえる電子音。

うっすらと目を開けるといつもの天井が見えた。

ああ、やっぱり夢だった。


「美月ちゃんっ!」

うるさいなぁ。もう少し寝かせてよ。

「美月ちゃんっ…」

…吉原さん?なんで泣いてるの?

だって、あれは夢でしょう?



目が覚めたときにはすべて終わっていた。

病院から慧の姿だけがなくなった。
顔を声を笑顔を、もう見ることはかなわない。

「っうう、ああああああああああ」

声をあげて泣いた。
恥ずかしいだとかそんな感情はなかった。赤ん坊のように止まることを知らないように。

膝を抱えたり、天を仰いだりしながら泣きじゃくった。
どうでもいい。もうどうなってもいい。

私が死ねばよかったのに。どうせもうすぐ終わる命だ。
神様。どうか彼を生き返らせて下さい。

それが無理なら私も早く連れて行ってください。

どうして彼が死ななければいけなかったの?
どうして私たちは一緒にいられないの?

どうして?
どうして、私は生きてるの?


涙が枯れて出なくなったころ、吉原さんがそっと病室に入ってきた。

「どうして…」

「え?」

「どうして…慧は死んだんですか?そんなに重い病気だったんですか?」
吉原さんは声を詰まらせなかなか口を開いてはくれなかった。

「後悔すると思う。きっと。聞いたら後悔する」
確信を持っているような言い方だった。

後悔なんてもうたくさんした。今更だ。聞かない方が後悔する。

「大丈夫です。教えてください」

目を閉じ、痛みに耐えるような顔をしていた。
その顔を見た瞬間嫌な予感がした。
聞かない方がいいのかもしれない。
そう思った時には遅くかった。


「慧君、自殺だったのよ」
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