私は人魚を殺したい

土耳古石

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貴女のためなら

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「新垣さんって絵、お上手よね」
 美術の時間だった。二人一組になってお互いの顔を描きましょう、なんていう地獄みたいな時間。いつもなら私に声をかけてくれる人なんていない。大体は先生と組むか同じくあぶれた人とやらされるか。でも、その日は違った。自分の席に座ったままぼんやりと時計を眺めていると、ちょんちょんっと肩を突かれた。
「新垣さん、一人? 良かったら私とやらない?」
「るっ、て、照屋さん、あ、え、えと、ぜひ……!」
 嘘、嘘! 瑠璃ちゃんが、なんで、いや、そんなことは良くって、ああ、もうやだ、せっかく誘ってくれたのにキモい感じで吃っちゃって。描いてる最中も瑠璃ちゃんはたくさん話しかけてくれたのに、私はそれにぼそぼそ答えるだけだった。だって、しょうがないじゃん! 瑠璃ちゃんとお話できるなんて、夢にも思ってなかったんだもん。
 せめて似顔絵くらいは可愛く、と思って一生懸命描いた。昔はアイドルのファンアートを描くのが趣味だったから、そこら辺の同級生よりは上手く描けたと思う。恐る恐る手渡すと、瑠璃ちゃんは笑って褒めてくれた。ああ、天使。いや、神。美の女神、ヴィーナス、ハトホル、アフロディーテ! この笑顔のためなら、私の人生全部めちゃくちゃにされても良い。
 瑠璃ちゃんが描いてくれた私は、ピカソの「ル・レーヴ」を彷彿とさせた。天才かな。天才なんだな。素敵すぎる。こんな宝物をもらって良いんだろうか。徳が足りない。来世の分まで消費した気がするけど構わない。これからは道にゴミが落ちていたら拾おう。荷物を抱えたお婆さんがいたら助けよう。バスでは席を譲ろう。もう二度と座るものか。
 うっとりと絵を眺めていると教室には私と瑠璃ちゃんの二人きりになっていた。しかも、いつの間にか瑠璃ちゃんは私の隣に座っていた。近い。肩が触れそうなほど近い。瑠璃ちゃんの息が私の髪を揺らした。耳に美しい唇が寄せられる。
「ごめんね、私、下手でしょう」
「そ、そんなこと、ない、よ……」
「ありがとう。新垣さんって良い人だね……あのね、新垣さんにだけ私の秘密話しても良い?」
「えっ、う、うんっ!」
「ふふっ、ありがとう。私ね、恋人がいるんだ。内緒だよ」
 すっ、と頭が冷めた。そうだ、私は何を浮かれていた。まだ何も変えられていないじゃないか。あいつのことだ。間違いない。瑠璃ちゃんとできてたんだ。何も知らない、みたいな言い方してたのに。
「新垣さんなら誰にも言わないでくれるかなって。勝手だよね、ごめんね。でも、私ずっと新垣さんと話して見たかったんだ。新垣さんっていつも物静かっていうか、寡黙っていうか……そういうところ良いなって思ってたの」
「……ありがとう。私も、照屋さんのこと、その、素敵だと思ってるよ」
 少し俯き頬を染める瑠璃ちゃんは、それはもう殺人級に可愛かった。抱きしめたい、守りたい。私が守るんだ、なんとしても。任せて瑠璃ちゃん。瑠璃ちゃんを誑かす化け物は、私が倒すからね。
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