現世勇者~勇者になり狂った少年~

サドマ

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終わりの錯誤

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 人生は選択の連続で出来ている。何をするにしても人は無数にある選択肢の中から1つを選ばなければならない。
 正しい選択をすれば人は幸運へと歩を進める。逆に間違った選択をすれば人は不運へと歩を進める。
 皮肉なことに幸運への歩調はゆったりとしているのに対し不運へと歩調は早い。
 ただ誤った選択をしたからといって諦めなければならないという訳でもない。人なら誰でもそこから立ち直れる力を持っている。
 1度失敗したのならその倍、成功したらいいだけだ。
 それは決して難しい話ではない。出来る、出来ないの話ではなく、やるか、やらないかの話だ。


*****


 小鳥、多分雀の可愛らしい鳴き声で僕は目を覚ました。
 時計の針は6時50分を刺している。
 カエが僕を起こしにくるまで調度10分ある。
 カーテンを開けて太陽光を浴び細胞を活性化させる。
 いつもならスマホを弄るのだがチャットアプリの通知システムによってスマホの電源を付けると強制的に柳からのメッセージを見ることとなる。
 それでは朝の楽しみがなくなってしまう。
 だからと言って10分を捨てるのは惜しい。

「ラジオ体操でもしようかな」

 体育の授業で覚えたてのラジオ体操第1をする。
 正直まだ完璧には覚えていないが目覚めのラジオ体操は気持ちよかった。これから毎日しても良いかもしれない。
 窓から外の景色を見る。いつもと何1つ変わらない風景が見えた。
 階段を上がる足音がなっていつも通りカエが僕を起こしにきた。

「起きてるならき、て」

「はいはいありがとうカエ」

 いつも通りの1日が今日もまた始まった。
 カエに起こされて、母さんにおはようと言って、柳と遊んで、未咲さんと夕日を見ながら話す。
 このスケジュールに何も加わらなくていい。これが僕が望む暮らしなのだから。
 パジャマを脱ぐ。相変わらず日焼けをしてない白い肌、ヒョロっとしていて力を加えたら枝のように折れてしまいそうだ。
 幼い頃はコンプレックスだったが今となってはどうでも良くなっていた。
 アスリートになりたいなんて思ったこともないし、筋肉なんて生活に支障さえ出なければなくても構わない。まあ男としてそれで良いのかとは考えなくもないけど。今はこのままでも良いだろう。
 大きく呼吸をしてから制服に着替えリビングに向かった。
 

 朝食を食べおえ身支度を済ませる。あとはカエと家を出るだけだ。数分玄関で待った後に――

「おま、た」

 セーラー服に着替えたカエがトットッと小さな歩幅で駆け寄って来る。

「忘れ物はない?」

 無言でコクリと頷くカエ。

「よし、じゃあ行こうか」

「行ってきま、す」 

 ドアを開けると同時に母さんの行ってらっしゃいと言う声が聞こえた。
 
「なあカエ、学校楽しい?」

 どうしてそんな事聞くのとでも聞きたげにカエが首を傾ける。
 僕自身どうしてこんなことを聞いたのか分からなかった。

「え、あ、ほら中学校入学したばかりだろ? だから上手くいってるか気になってさ」
 
 咄嗟に考えた口実だったがカエはすぐに大きな半目を細めて口角を上げて微笑んだ。
 日頃、感情を表にしないカエがこんな笑みを浮かべるのは珍しい。

「楽しい、よ」

 なんだか僕も嬉しくなった。カエは一見無愛想に見えるので心配だったのだが上手くいってるみたいだ。まあ中学校と言っても殆ど顔見知りだし杞憂だったか。
 クイクイとカエが僕の制服の裾を引っ張る。
 いつの間にかカエと別れる場所に到着していた。

「行ってらっしゃい」

 コクリと頷き僕に手を振りながら歩いて行くカエの姿が見えなくなった所で再度高校に向かって歩を進める。
 もう少し進めば柳と出会う。今日は何て言うのだろう。中学生の妹と同レベルだと言ったのだ、怒っているか怒っていか。まあ多分怒っているフリをするのだろう。すでに定石と化していた。
 
「……」

 いつもならすぐに現れる柳だったが今日は5分待ってもその姿は見られなかった。
 柳と会うまで見ないつもりだったが場合が場合だ、バックからスマホを取り出して電源をつける。
 チャットアプリの仕様で柳からのメッセージがスクリーン上に小さく表示される。

『悪い風邪ひいた。今日は1人で行ってくれ。明日には治すから!』

 少し落胆したが風邪なら仕方がない。今朝スマホを開かなかった僕に非がある。
 『うん分かった。体調には気をつけて』と送って1人で登校を再開した。
 1人で登校するのは久しぶりのことだった。いつも僕の隣には柳がいたので違和感さえ感じる。
 背後から吹いた風が僕の体を吹き抜けた。
 柳の他に親しいと呼べる人間がいない僕にはこのまま登校しても時間が余る。
 どこかで時間を潰してから行こう。
 ニュースにもならない程弱い地震が微かに印象に残っていたからか最初に思い浮かんだ場所は公園だった。
 少し戻ることになるけどまあいいか。久しぶりにあの公園の長い滑り台を滑りたくなってきたし。

 
 1度選んだ選択は変更することが出来ない。だからこそ気まぐれで行動しては行けない。僕はこのとき選択を誤った……


 





 

 
 
 
 
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