こちら、輪廻転生案内課!

天原カナ

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残した人

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 茜の朝のルーティーンはもう決まっている。
 必ず先に来ている麗と六花に挨拶して、パソコンに電源を入れると、一緒に給湯室でお茶を淹れる。北欧のキャラクターが描かれたマグカップは、働き出してすぐに買ったものだ。
 そこに日替わりでティーパックを入れて、お湯をそそぐ。今日は麗オススメのカモミールティーにした。
 三人で自分のデスクに戻って、他愛のない話をしていると、白石と神代が来て、最後に大川が来る。
 六人で今日やることの確認をする小さな朝礼をすると、いつもの作業の開始だ。
 午前中のこの時間はいつも静かで、ただ隣の生活案内課の声が聞こえてくるだけだ。どこかの課で電話がなり、それを取る声が聞こえる。
「すみません」
 だから、その声が自分たちに向けられるなんて思いもよらなかった。きっと隣のカウンターがいっぱいで、うちの課まで寄ってきてしまった来訪者なのだと。
 だけど、その声は何度も呼ぶ。
「すみません!」
 少し大きなその声が聞こえて、茜は顔をカウンターに向けた。
 そこには三十代くらいの男性が立っていた。そうして茜と目があったとこにほっとするような表情をする。
「あら、うちにご用の方?」
 目の前では麗が驚いて、顔を上げている。それくらい珍しい来訪者に、白石もカウンターを見るし、多分神代も目線をこちらに向けているようだ。
 書類を折っていた手を取め、茜が立ち上がってカウンターへ行く。ここで働き始めて、初めての来訪者だ。
 少しだけ緊張する。でもそれを来訪者に悟られてはいけない。笑顔を作り、男性に声をかけた。
「なにかご用でしょうか?」
 そう茜が聞くと、男性は用意してきた言葉を言うように、はっきりと言った。
「転生したいんです」
「え?」
 来訪者の対応マニュアルなんてものは、この課には存在しない。そのうち慣れるというのが、麗の口癖で神代の言い分だ。だから、こういう場合なんと答えるのが正しいのか、迷ってしまった。
「あの、ここにいる方々はみな六十年で転生する決まりなんです。だから、その」
 迷う茜の口から出たのは、そんな言葉だった。それはここでの決まりで、常識だ。誰だってそれをわかって暮らしている。
 もしかしたら、この目の前の男性も。
「わかっています」
「あ、じゃあ」
 やっぱりわかっていた。なら話は早く済むかもしれないと思った矢先、男性が口を開く。
「でも、僕は転生したいんです」
 その意志は固いとばかりに、きっぱりとそう言い切る。
 茜の脳裏に、川井の姿が浮かんだ。転生したくないと、無になりたいと消滅していったあの姿が。
 目の前の男性は川井とは正反対に、早く転生したいと願っている。世の中には色んな人がいて、色んな思いがある。
「どうして、転生したいんですか?」
 ふと、茜はそんなことを聞いていた。
 川井が転生したくない思いを語ったように、この人にも転生したい理由があるはずだ。
「まだ小さな子どもがいるんです。妻だって残してきた」
 男は家永と名乗った。ほんの一週間前に死んだばかりで、心残りがたくさんあるらしい。
「膵臓ガンで死んだんです。わかったときにはもう手遅れで、死ぬまであっという間でした。きっと息子は僕のことを覚えていない。妻だって、この先女手一つで息子のことを育てていくのは大変でしょう」
 だから、転生したいのだと家永が切実に訴える。
 でも、茜にその望みを叶える力はこれっぽっちもない。ただ、六十年経たないと転生できないということを言うしかないのだ。
 家族に会いたいという女性に、淡々とこの世界の事実を告げていた由比のように。
「……何度も言うようですが、六十年経たないと転生はできません。私に言えるのはこれくらいですが」
「まだ、これから六十年も……」
「そうですね……」
 家永が目に見えるように沈むのがわかる。
 六十年経ったら、妻はあの世に来ているかもしれないが、子どもは入れ違いになるだろう。そのころには、あの世でも家族を見つけられるサービスが活発になっているかもしれない。
「妻には、会えるでしょうか」
 しばらく黙っていた家永が、絞り出すように言ったのはそれだった。
「会えるかもしれません」
「六十年か……息子には会えないかもしれないですね」
「……」
「長生きして欲しいとは思っているんですが」
 静かに家永が言う。
 それはきっと本心だろう。会いたいという気持ちと、長生きして欲しいという気持ちは、ここでは相反する。葛藤がそこにはあって、愛情がある。
「あの、家永さん……」
「わがままを言って申し訳ありませんでした」
「えっ、いえ……こちらこそお力になれず」
「ここで妻を待ちます。区画が別になっても、探しますから」
「……そうですか」
 家永は頭を下げると、くるりと茜に背を向けると、出入り口の方へと歩いていった。その姿が見えなくなるまで、なんとなく目が離せなくて、消えるまで見ていた。
 だから、いつの間にか隣に麗と神代が立っているのに気がつかなかった。
「ハチ」
「神代さん!?」
「やるじゃない、あかね」
「麗さんも!?」
「大騒ぎにならなくて、よかったな」
「いやいや、私はなにもしてないですよ」
「話を聞いてもらいたかったのよ、あの人」
 謙遜する茜に、労いの視線が集まる。
 それに慣れなくて、恥ずかしくて、茜は逃げるように自分の席に戻った。
「転生したいって言ってくる人も、やっぱりいるんですね」
 川井のような人がいるのだから、その反対もいるだろう。頭ではわかっていたが、いざ実際に会うと驚いてしまう。
 茜には転生したくない理由も、したい理由もない。生前の記憶は相変わらずないままだし、ここら暮らし続けてても、明日転生になっても特に困ることはないように思えた。
「そりゃいるよ! 茜ちゃんお疲れさま。これはご褒美のチョコだよ」
 六花がぽーんと銀紙に包まれたチョコを放ってくる。その横で大川が、食べ物を投げないと注意していた。
「若くて、病死とか事故死みたいな不本意な死に方だったら、早く転生したいって人結構いるのよ」
「そうなんですか?」
「今回みたいに、子どもが小さくて心配とかなるとね、やっぱり転生したいみたい」
「でも元の自分に戻るわけじゃないですよね? 転生って」
「そう。でも心配なのよ。ただそれだけ」
 頬杖をついて、麗が笑う。横から白石が口を挟む。
「麗さん、手、動かしてくださいよ」
「休憩よ、きゅーけい。けんたろも休憩しましょ」
「はぁ……お茶淹れてきます」
「いってらっしゃーい」
 マグカップを持って立ち上がる白石を、手を振って麗が見送る。
 どうやら白石がいない間に、本格的に休憩する気らしく、引き出しからキャラメルを取り出した。もちろん茜にもお裾分けがきた。同じように神代にも麗からキャラメルのお裾分けが来て、神代はそれをすぐに口に放り込む。
「みちおって意外と甘党なのよねぇ」
「疲れると糖分欲しくなるので」
「単純作業ってのも、疲れるわね」
 各々休憩する中で、茜は六花にもらったチョコレートを口に入れた。
 甘い味が口の中に広がって、疲れた脳を癒してくれる気がした。
 死んでるのに、甘いも美味しいもある世界。
 不思議だが、それも慣れてきた。
 口の中のチョコレートがなくなると、今度は麗にもらったキャラメルを食べる。甘いものの連続で、先ほどまでの緊張もほぐれていく。
「あの人、奥さんに会えるといいですね」
 それはぽつりと出た本心だった。
 今すぐでもなくていい。いつか会える日がくればいいなと思った。今は「ファミリーサーチ」なる家族を捜すアプリもあるのだし、会える確率はゼロではない。
 だが、そんな茜のこぼした言葉を、すぐに拾い上げる者はいなかった。
 不思議に思って麗を見ると、困ったように笑い返された。
「そうねぇ……でも六十年は短いようで長いから」
「どういうことですか?」
「奥さんが再婚してたら?」
 茜の問いに答えたのは、神代だった。
 家永は三十代前半に見えたし、子ども小さい。妻だってまだ若いだろう。
 再婚する可能性は充分にある。
「家永さんがここで恋人を見つける可能性もある。それでも会いたいと思い続けるなら、それでいいんじゃないか」
 キャラメルを食べ終えたらしい神代が、お茶を一口飲む。紺色の渋いマグカップは神代の持ち物として似合っていた。
「日本か中国か忘れたけど、こんな言い伝えがあるんですって」
 頬杖をついたままの麗が、静かに話し出す。
「死んだら初めて寝た相手を背負ってあの世へ行くって」
「それ男が先に死んでなかったらどうなるんだ? 背負えないだろう?」
「みちおはロマンがないわねぇ」
 神代の突っ込みに、麗がけらけらと声を上げる。
「アタシもねぇ、旦那に再婚しないでって言って死んだの」
「え?」
「死んだらこんなとこだと思わないじゃない? あの世に来たら元気に働いて、毎日楽しくて」
「……」
「でも死ぬ間際は本気で思ったのよ。生まれ変わってもこの人と一緒になりたいって。生きてた頃の私は旦那しか知らない箱入り娘だったから」
「麗さん」
「生きてた頃より長く生きてみて、言葉一つで縛っちゃったかなぁって思ったわ」
 笑う麗は儚げだ。
 愛というのを、茜は知らない。わからない。
 もらった記憶がないので、あげ方もわからない。
 どんなに儚げに笑っていても、それを知る麗が羨ましいと思った。
「もしかしたら旦那はとっくに再婚してるかもしれないわね。愛情も執着も似てるから、アタシは勘違いしてたのかもしれないわ」
「そんなこと」
「あかねはいい子ね」
 ふふっと笑って麗は二つ目のキャラメルを食べた。こんなによく笑う人なのに、愛を知る人なのに、時間の流れというのは残酷だ。
 麗の旦那が現世でなにをしているかを知る術はない。もう亡くなっているのか、それともまだ生きているのか。そして再婚したのか、否か。
「アタシはね、旦那の転生案内を折って、封筒に入れて出すのが夢なの。そうして転生の扉の前で待ってやるのよ」
「叶うといいですね」
「いや、怖いだろ、それ」
 純粋に応援する茜と、呆れる神代に、麗が口を尖らせる。
「でも多分旦那が転生するのはまだまだ先っぽいのよねぇ。もう死んでるとは思うんだけど」」
「ファミリーアプリはどうですか?」
「ああ、あの流行のアプリね」
「もしかしたら旦那さんも麗さんのことを探してるかも!」
 それは茜の中で名案に思えた。会える確率は高くはないが、それでも自分から探すという手段には使える気がした。
「いいのよ」
 でも麗はそう言って首を振る。
「こういうのはばったり会うのがいいの。その日をアタシは楽しみにしてるから」
「そう、ですか」
「やぁね、あかねがそんな顔なくていいのよ」
「麗さん、そろそろ休憩終わりにしてはどうですか?」
 聞こえてきたのは、白石の静かな声だった。手にはクマの絵が描かれたマグカップを持って、そこから湯気が見える。
「遅かったわね、けんたろ」
「給湯室のポットのお湯がちょうど切れたんです。お湯が沸くのを待ってました」
「じゃ、けんたろも帰ってきたし、仕事しようかしらね」
 麗の言葉で、みんなが手元の書類に目をやる。それを折って、封筒に入れる。
 隣では神代が同じように慣れた手つきで書類を折っている。
 以前神代に、家族に会いたいかと聞いたことを思い出した。神代はあのアプリを入れているだろうか。それとも、麗のように探さず待っているのだろうか。
「ハチ、手が止まってる。なにか質問か?」
「あ、いえ」
「聞きたいことは、なんでも聞けよ」
「……なんでハチなんですか?」
「昔飼ってた犬がハチ」
「聞かなきゃよかった」
 手元に目線を戻すと、書類に書かれた名前が目に入った。全然知らない名前だった。
 でも、誰かを愛して、愛された人なのかもしれないなと思った。


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