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第3話 取り戻したもの
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「今いる場所が乾いた洗濯物を畳んだり、仕分けをしたりする広間になります」
「わかりました」
「そして中央の廊下を歩くと左右に洗濯場があります」
花音が指を指す先にある洗濯場は、屋根こそあるが壁はない。足を踏み入れると宮女達がせっせと木桶に水を汲んだり、洗濯板を使ってもみ洗いをしている姿が見える。
屋内よりも夏特有の湿気が感じにくいが、これから季節が進めば寒さがきつそうだと美雪は内心感じていた。
「で、こっちに戻って……」
廊下から先程いた建物内に戻り、左側に向く。
「ここから先が私達の部屋になります」
宮女達の部屋は大部屋で、簡素な木製の仕切りを使って場所を確保している。
美雪の間は右側手前の大部屋で、入口付近と紹介された。
「ここが、私の部屋」
既に宮女用の薄い緑色をした衣服が枕の隣に綺麗に折り畳まれて用意されている。
早速花音から着替えて欲しいと言われたので、袖に手を通した。
(着心地は……よくわからないけど、可もなく不可もなくって感じですかね)
着替えは難なく済んだ事実に、そこら辺の知識はあるのになぜ自分の事だけはすっかり抜け落ちてしまったのだろう? と疑問を抱かずにはいられない。
「着替え、終わりましたか?」
廊下で待っていた花音からの問いに、終わったと美雪は伝える。
「わっ! ちゃんと合っているみたいで良かったです! 髪、束ねましょうか?」
「あ、いえ。自分でやってみたいと言いますか」
「おっ、ではお願いしてみましょうか」
髪の束ね方に関する知識も頭の中に存在しているのを確認し、ゆっくりと両手を動かして黒髪を束ねた。
身支度が済んだらいよいよ仕事の始まりになる。
「美雪さん、洗うのと畳むの、どちらをやりますか?」
(選べられるのね)
「じゃあ、畳むのをやりたいです」
「わかりました!」
花音が持ってきたのは、着ているのと同じ宮女用の衣服が4着ほど。どうやら畳み方が決まっているらしく手本を見せてくれるようだ。
自信ありげに衣に手をかける花音を見た瞬間、美雪の脳に衝撃が落ちる。
「畳み方、知っています」
「え?」
落ちてきた衝撃に抵抗感は無く、本能が不思議と身を委ねた。
脳に広がる記憶を頼りに畳むと、花音は美雪の隣で何度も小さな驚きの声をあげる。
「お、覚えているんですね」
「私でもわからないんですけど……覚えていました」
「それ、ちなみにどこの宮女のものか、わかりますか?」
宮女の衣服の黒い襟元には華型の刺繍が施されていて、勤めている場所によって刺繍糸の色が違っている。
美雪と花音ら洗濯担当は橙色。美雪が手にしている衣には朱色の糸で刺繍がなされていた。
「朱色だから、調理担当ですよね?」
「正解です! そっか、覚えていたんだ……」
「?」
花音が首を左右に振りながら、いや、なんでも! と否定する。
その姿を見て何かを隠しているなと直感はしたが、口には出せなかった。
「美雪さん、どうしました?」
花音から声をかけられた美雪は、なんでもないです。と笑顔を作ったのだった。
◇ ◇ ◇
美雪が洗濯場で仕事を初めて1週間が経過した。仕事内容はしっかり覚え、花音がいなくてもてきぱきとこなしているが、相変わらず自分の記憶はさっぱりと抜け落ちてしまっている。
季節は徐々に夏から秋に移り変わろうとしているのか、早朝と夜は少しだけ、空気がひんやりし始めた。
美雪が衣服を畳み終え、洗濯し終えたものを物干し竿に釣る仕事に向かおうとしていた時だった。洗濯場から大きな悲鳴があがる。
「?!」
悲鳴がした方へとすぐさま飛び出していくと、右側に右手を抑えて苦しそうに顔を歪ませる若い宮女……新葉の姿があった。ぱっちりとした二重の目は大きく見開かれ、如何にも痛みが走っていそうなのと、右手はよく見ると赤くただれているのが分かる。
「どうされましたか?!」
「あっ、洗濯していたら、手がこうなっちゃって……!」
彼女が美雪に見せた右手の甲に生じた異変に、美雪の脳天が衝撃を受けた。
「これ、毒ですよね?! 早く治療しないと……!」
「わかりました」
「そして中央の廊下を歩くと左右に洗濯場があります」
花音が指を指す先にある洗濯場は、屋根こそあるが壁はない。足を踏み入れると宮女達がせっせと木桶に水を汲んだり、洗濯板を使ってもみ洗いをしている姿が見える。
屋内よりも夏特有の湿気が感じにくいが、これから季節が進めば寒さがきつそうだと美雪は内心感じていた。
「で、こっちに戻って……」
廊下から先程いた建物内に戻り、左側に向く。
「ここから先が私達の部屋になります」
宮女達の部屋は大部屋で、簡素な木製の仕切りを使って場所を確保している。
美雪の間は右側手前の大部屋で、入口付近と紹介された。
「ここが、私の部屋」
既に宮女用の薄い緑色をした衣服が枕の隣に綺麗に折り畳まれて用意されている。
早速花音から着替えて欲しいと言われたので、袖に手を通した。
(着心地は……よくわからないけど、可もなく不可もなくって感じですかね)
着替えは難なく済んだ事実に、そこら辺の知識はあるのになぜ自分の事だけはすっかり抜け落ちてしまったのだろう? と疑問を抱かずにはいられない。
「着替え、終わりましたか?」
廊下で待っていた花音からの問いに、終わったと美雪は伝える。
「わっ! ちゃんと合っているみたいで良かったです! 髪、束ねましょうか?」
「あ、いえ。自分でやってみたいと言いますか」
「おっ、ではお願いしてみましょうか」
髪の束ね方に関する知識も頭の中に存在しているのを確認し、ゆっくりと両手を動かして黒髪を束ねた。
身支度が済んだらいよいよ仕事の始まりになる。
「美雪さん、洗うのと畳むの、どちらをやりますか?」
(選べられるのね)
「じゃあ、畳むのをやりたいです」
「わかりました!」
花音が持ってきたのは、着ているのと同じ宮女用の衣服が4着ほど。どうやら畳み方が決まっているらしく手本を見せてくれるようだ。
自信ありげに衣に手をかける花音を見た瞬間、美雪の脳に衝撃が落ちる。
「畳み方、知っています」
「え?」
落ちてきた衝撃に抵抗感は無く、本能が不思議と身を委ねた。
脳に広がる記憶を頼りに畳むと、花音は美雪の隣で何度も小さな驚きの声をあげる。
「お、覚えているんですね」
「私でもわからないんですけど……覚えていました」
「それ、ちなみにどこの宮女のものか、わかりますか?」
宮女の衣服の黒い襟元には華型の刺繍が施されていて、勤めている場所によって刺繍糸の色が違っている。
美雪と花音ら洗濯担当は橙色。美雪が手にしている衣には朱色の糸で刺繍がなされていた。
「朱色だから、調理担当ですよね?」
「正解です! そっか、覚えていたんだ……」
「?」
花音が首を左右に振りながら、いや、なんでも! と否定する。
その姿を見て何かを隠しているなと直感はしたが、口には出せなかった。
「美雪さん、どうしました?」
花音から声をかけられた美雪は、なんでもないです。と笑顔を作ったのだった。
◇ ◇ ◇
美雪が洗濯場で仕事を初めて1週間が経過した。仕事内容はしっかり覚え、花音がいなくてもてきぱきとこなしているが、相変わらず自分の記憶はさっぱりと抜け落ちてしまっている。
季節は徐々に夏から秋に移り変わろうとしているのか、早朝と夜は少しだけ、空気がひんやりし始めた。
美雪が衣服を畳み終え、洗濯し終えたものを物干し竿に釣る仕事に向かおうとしていた時だった。洗濯場から大きな悲鳴があがる。
「?!」
悲鳴がした方へとすぐさま飛び出していくと、右側に右手を抑えて苦しそうに顔を歪ませる若い宮女……新葉の姿があった。ぱっちりとした二重の目は大きく見開かれ、如何にも痛みが走っていそうなのと、右手はよく見ると赤くただれているのが分かる。
「どうされましたか?!」
「あっ、洗濯していたら、手がこうなっちゃって……!」
彼女が美雪に見せた右手の甲に生じた異変に、美雪の脳天が衝撃を受けた。
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