後宮浄魔伝~視える皇帝と浄魔の妃~

二位関りをん

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第21話 水龍表演①

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「わあああっ」

 あちこちから、芸をほめたたえる声が聞こえて来る。桃玉もまた、芸に目を奪われていた。

(すごいなあ……)

 皿回しが終わった後も休む間もなく次々と技が繰り出されていく。

「すばらしい技術だな。見ていて飽きない」

 龍環も、彼らの技術を褒め称える。佳淑妃と佳賢妃の姉妹もじっと芸を見つめていた。
 すると池の真ん中に陣取った船の上にいた芸人の若い女性が、ちょっと細め松明2本に火をつけると、それらを1本ずつ持ち船の上で振り回すようにして舞を踊り始める。

(綺麗……)

 他の芸人達はそれぞれ琵琶や笛で音楽を奏でている。ゆっくりかつ優雅な曲調からは、どこか壮大な印象もあった。

「美しい。この日の為に鍛錬を積んできたのがよくわかる」
「佳淑妃様……」
「桃玉もそう思うか。水の池と彼女が持つ火……相反する要素が成り立っているのもまた、粋なものだ。それにここならすぐ消火出来るから、安全だろう」
(確かにそっか。池の上だから……)

 芸人はピタリと両腕を天へと掲げ、舞は終わった。
 音楽と舞を踊っていた芸人の動きが止まった瞬間、あちこちから花が咲くような拍手が巻き起こる。それは桃玉のいる船も同じだった。 

「すばらしい……!」
「美しい娘だった……ぜひ後宮入りさせてはどうか」

 龍環率いる部下から起こる声に、龍環は笑いながら静止する。

「まあまあ、それはまだ早いよ」
「しかしながら……まだ陛下にはお子がいませんし……皇太后陛下がお気に召せば」
「いやいや、いいよ。相手は結婚しているかもしれないし」
「佳淑妃様、芸人から妃になる事もあるのですか……?」

 気になった桃玉が佳淑妃に小声で尋ねると、佳淑妃は腕を組む。

「いや、知らないな……前例はあったかもしれないが、それでも最初は低い位からだろうな」
「なるほど……」
「桃玉ちゃん、嫉妬してるの?」
「へ?!」

 いきなり佳賢妃から指摘された桃玉は、違いますよ?! と返事する。

「なんだ、つまんないの」
「こら、桃玉をからかうのはやめろ。桃玉が困っているだろう」
「はぁい、姉ちゃん……あ、なんか始まったよ」

 佳賢妃が指さした先の船上では、人の数倍はある細長く水色の半透明な布を纏うようにして、先程の芸人が舞を踊り始めた。彼女の周囲にいる船の上でも彼女と同年代くらいの若い女性達が同じように布を用い舞を踊っている。

「ん?」

 龍環は何かに気づいたかのような声をだした。

「皇帝陛下、何かございましたか?」
「桃玉……もしかしたらあやかしがいるかもしれないと思って」
 
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