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第22話 水龍表演②
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「あやかしですか?」
「でも、川魚かもしれない。銀色に輝く背びれっぽいのが見えたんだけど……」
この龍羽池には多種多様な川魚が暮らしている。この川魚を採ってさばき、料理する事だってある。もちろん龍羽池の川魚を使用した料理は龍環及びその妃達のお膳に並ぶ事もあるのだ。
「俺の見間違えかもしれないな……」
「皇帝陛下、注意深く見ていきましょう」
「そうだな、桃玉の言う通りだ。注意深く観察を続けるよ」
龍環は池へと目線を向けた。
(ただの川魚だったらいいけど……)
芸人達による布を用いた舞が終わった後は、双剣を用いた舞へと移行する。音楽も優美な曲調から激しく荒々しい曲調へと変わる。
「ほほう、戦演舞か」
舞を見ている佳淑妃の呟きが桃玉の耳に届く。
「佳淑妃様。戦演舞とは?」
「戦の前に踊る舞の事だ。これを踊る事で味方の戦意を高揚させる狙いがある」
「姉ちゃんは戦の事にも詳しいからねぇ」
「当たり前だ。佳家の者として戦の事にも通じておかねば。桃玉は既に知っているかもしれないが、我々佳家は誉れ高き名家であり、佳家の者達は先祖代々皇帝陛下の側近としてお仕えしてきた。我が父や祖父達は何度も何度も国境を脅かす敵を打ちのめしてきたのだよ」
(そんなにすごい名家出身だったんだ……そりゃあ淑妃・賢妃にもなるよね)
きりっとした武将の如き表情を浮かべた佳淑妃を、桃玉は尊敬のまなざしで見ていたのだった。
「あれはなんだ?」
桃玉の左前方にて突如龍環が船から身を乗り出し、池の中を覗き込み始めた。
「何かありました?」
「……何て言えばよいのか……女の顔らしきものを持つ、蛇のような魚のようなものが見えた」
桃玉へ小声で伝えた龍環。桃玉は本当ですか? と同じく小声で返すと、龍環のそばに佳姉妹が近寄って来た。
「皇帝陛下、いかがなさいましたか?」
「佳淑妃。大きい魚が見えたんだ」
「この池には様々な種類の魚がいると聞いております。どれくらいの大きさでございましたか?」
「俺くらいはあったと思う」
(大きくない?!)
「えっ、そんなに?!」
想定以上の大きさに桃玉と佳賢妃は驚きの表情を見せる。だが龍環と佳淑妃はそんな2人とは対照的にいたって冷静だった。
「もしかしたら、エサとなる小魚を食べ過ぎて太ってしまったのでしょう。いずれにしても自由に泳がせてやるべきかと」
「そうだな、佳淑妃の言う通りだ。自由に泳がせてやろう」
「さすがは皇帝陛下。慈悲深いご判断と存じます」
ただ龍環の目はまだ池の方へと向いていた。警戒心を緩めない龍環に気が付いた桃玉もまた、気を引き締める。
(あやかしである可能性もある……油断はできない)
その時。ばしゃん! と大きな音が鳴り響く。桃玉達が一斉に音が鳴り響いた方を見るとそこには巨大な水柱が形成されていた。
「おい! 船が転覆したぞ!!」
「まずい! 誰か! 女が引きずり込まれたぞ!」
あちこちから湧き上がる声に龍環は急いで転覆した船に乗っていた人達を救助するように宦官らへ命令し、自らも駆けつけるべく船夫へ近くへつけるようにと指示する。
「あれは、芸人達が乗っていた船だな。早く助けないと!」
佳淑妃はためらうことなく自らが纏っていた服を全て脱ぎ、下着姿になった。船は徐々に事故現場へと近づいていく。
「皇帝陛下! 芸人の女が池に引きずり込まれて……! それで転覆しました!」
宦官からの報告を聞いた龍環は至急救助せよ! と返事する。
(引きずり込まれた……まさか)
事故現場へ到着すると佳淑妃は池に浮いていた男性芸人に自分が着ていた羽織を綱のようにして投げ入れた。
「これに捕まれ! 手を離すなよ!」
「はっはい!」
(佳淑妃様……! こっちもやんなきゃ!)
桃玉と佳賢妃も着ていた羽織を全て脱ぎ、その1枚を投げ入れて芸人達を救助する。
「あ、ありがとうございます……」
宦官達の力も結集させ、船の上に芸人を引きずり上げた。桃玉は自らと宦官達の手により救出した若く小柄な男性の芸人にそっと羽織をかける。
「大丈夫ですか?」
「俺は大丈夫です。だけど、花ちゃんが……!」
「花ちゃんですか?」
「ああ、花ちゃんが池の中から現れた女みたいなの魚に引きずり込まれて、そしたら船が一気に転覆しちまったんだよ……」
(やっぱり、あやかしのせいかも)
「そうなのですね、怖かったでしょう……でも私達がいますから安心してください」
「ありがてえ……お妃様、ありがとうごぜえます……」
その後も救出活動は続けられ、転覆し沈没しつつあった船も回収できた。しかし花という名の若い女性芸人だけは日が暮れても見つからなかったのである。
「陛下、池中を捜索いたしましたがまだ花という名の女芸人は見つからず……」
「もう日が暮れてしまったか……これ以上の捜索は危ない。明日、夜明けとともに再開する!」
夜の池での捜索は日中以上に危険が伴う。龍環は苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべながら命令を下すより他なかったのである。
桃玉ら妃や女官の間では、不安の感情が広がっていた。
「でも、川魚かもしれない。銀色に輝く背びれっぽいのが見えたんだけど……」
この龍羽池には多種多様な川魚が暮らしている。この川魚を採ってさばき、料理する事だってある。もちろん龍羽池の川魚を使用した料理は龍環及びその妃達のお膳に並ぶ事もあるのだ。
「俺の見間違えかもしれないな……」
「皇帝陛下、注意深く見ていきましょう」
「そうだな、桃玉の言う通りだ。注意深く観察を続けるよ」
龍環は池へと目線を向けた。
(ただの川魚だったらいいけど……)
芸人達による布を用いた舞が終わった後は、双剣を用いた舞へと移行する。音楽も優美な曲調から激しく荒々しい曲調へと変わる。
「ほほう、戦演舞か」
舞を見ている佳淑妃の呟きが桃玉の耳に届く。
「佳淑妃様。戦演舞とは?」
「戦の前に踊る舞の事だ。これを踊る事で味方の戦意を高揚させる狙いがある」
「姉ちゃんは戦の事にも詳しいからねぇ」
「当たり前だ。佳家の者として戦の事にも通じておかねば。桃玉は既に知っているかもしれないが、我々佳家は誉れ高き名家であり、佳家の者達は先祖代々皇帝陛下の側近としてお仕えしてきた。我が父や祖父達は何度も何度も国境を脅かす敵を打ちのめしてきたのだよ」
(そんなにすごい名家出身だったんだ……そりゃあ淑妃・賢妃にもなるよね)
きりっとした武将の如き表情を浮かべた佳淑妃を、桃玉は尊敬のまなざしで見ていたのだった。
「あれはなんだ?」
桃玉の左前方にて突如龍環が船から身を乗り出し、池の中を覗き込み始めた。
「何かありました?」
「……何て言えばよいのか……女の顔らしきものを持つ、蛇のような魚のようなものが見えた」
桃玉へ小声で伝えた龍環。桃玉は本当ですか? と同じく小声で返すと、龍環のそばに佳姉妹が近寄って来た。
「皇帝陛下、いかがなさいましたか?」
「佳淑妃。大きい魚が見えたんだ」
「この池には様々な種類の魚がいると聞いております。どれくらいの大きさでございましたか?」
「俺くらいはあったと思う」
(大きくない?!)
「えっ、そんなに?!」
想定以上の大きさに桃玉と佳賢妃は驚きの表情を見せる。だが龍環と佳淑妃はそんな2人とは対照的にいたって冷静だった。
「もしかしたら、エサとなる小魚を食べ過ぎて太ってしまったのでしょう。いずれにしても自由に泳がせてやるべきかと」
「そうだな、佳淑妃の言う通りだ。自由に泳がせてやろう」
「さすがは皇帝陛下。慈悲深いご判断と存じます」
ただ龍環の目はまだ池の方へと向いていた。警戒心を緩めない龍環に気が付いた桃玉もまた、気を引き締める。
(あやかしである可能性もある……油断はできない)
その時。ばしゃん! と大きな音が鳴り響く。桃玉達が一斉に音が鳴り響いた方を見るとそこには巨大な水柱が形成されていた。
「おい! 船が転覆したぞ!!」
「まずい! 誰か! 女が引きずり込まれたぞ!」
あちこちから湧き上がる声に龍環は急いで転覆した船に乗っていた人達を救助するように宦官らへ命令し、自らも駆けつけるべく船夫へ近くへつけるようにと指示する。
「あれは、芸人達が乗っていた船だな。早く助けないと!」
佳淑妃はためらうことなく自らが纏っていた服を全て脱ぎ、下着姿になった。船は徐々に事故現場へと近づいていく。
「皇帝陛下! 芸人の女が池に引きずり込まれて……! それで転覆しました!」
宦官からの報告を聞いた龍環は至急救助せよ! と返事する。
(引きずり込まれた……まさか)
事故現場へ到着すると佳淑妃は池に浮いていた男性芸人に自分が着ていた羽織を綱のようにして投げ入れた。
「これに捕まれ! 手を離すなよ!」
「はっはい!」
(佳淑妃様……! こっちもやんなきゃ!)
桃玉と佳賢妃も着ていた羽織を全て脱ぎ、その1枚を投げ入れて芸人達を救助する。
「あ、ありがとうございます……」
宦官達の力も結集させ、船の上に芸人を引きずり上げた。桃玉は自らと宦官達の手により救出した若く小柄な男性の芸人にそっと羽織をかける。
「大丈夫ですか?」
「俺は大丈夫です。だけど、花ちゃんが……!」
「花ちゃんですか?」
「ああ、花ちゃんが池の中から現れた女みたいなの魚に引きずり込まれて、そしたら船が一気に転覆しちまったんだよ……」
(やっぱり、あやかしのせいかも)
「そうなのですね、怖かったでしょう……でも私達がいますから安心してください」
「ありがてえ……お妃様、ありがとうごぜえます……」
その後も救出活動は続けられ、転覆し沈没しつつあった船も回収できた。しかし花という名の若い女性芸人だけは日が暮れても見つからなかったのである。
「陛下、池中を捜索いたしましたがまだ花という名の女芸人は見つからず……」
「もう日が暮れてしまったか……これ以上の捜索は危ない。明日、夜明けとともに再開する!」
夜の池での捜索は日中以上に危険が伴う。龍環は苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべながら命令を下すより他なかったのである。
桃玉ら妃や女官の間では、不安の感情が広がっていた。
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