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第五十話 黒電話の向こう側
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「そうですか」
低くか細いもののはっきりと拒絶するようなその態度と声に、私は正体について問い詰めるのはやめたのだった。
「ちなみにあなたが看護師をされてらした事は存じております」
その言葉に私はなぜ?と問い返したが、やはりはぐらかされるも、お会いしてお世話になった事があるとだけは答えてくれた。
(…患者かなあ。そんな患者いたっけ?)
そんな疑問をよそに、電話の向こうからはちょっといいですか?という声が聞えて来た。
「あのですね、元の世界に帰りたいですか?」
「え?!私死んだんじゃなかったんですか?!」
「大丈夫ですよ」
(なんかいまいち会話がかみ合ってないような)
とツッコミを胸の内で入れつつも、彼女の提案に乗るかどうかを慎重に見極めていく。
確かに元の世界に戻れるなら生活面ではそちらの方がメリットが大きい。仕事はデメリットではあるがやはり文明の発達に差があるのを考えると、現代の方が私にとっては都合が良い。
(だけど…)
サリオスとは二度と会えなくなる。かもしれない。というかサリオスは漫画のキャラクターなので、会えなくなる可能性の方がずっと高いんじゃないか。
それは気が引けるし、二度と会えなくなるならこの世界でずっといたい。
こればかりは相手に聞いてみないと分からないので質問してみる事に決めた。
「あの、元の世界に戻ったらサリオスとは会えなくなるんですよね?」
「いや、そんな事は無いですよ」
「はい?」
そんな事は無い。という言葉が、頭の中で大きく響いている。
「どういう事ですか?」
「そのままの意味です。元の世界でもサリオスと暮らす事は出来ますよ」
(暮らすって…漫画のキャラクターとして?)
「漫画のキャラクターとして、ですよね?」
「いえ、普通に人として暮らす事も可能です」
「えっ」
つまりはサリオスが漫画のキャラクターから人になるかもしれないという事である。
低くか細いもののはっきりと拒絶するようなその態度と声に、私は正体について問い詰めるのはやめたのだった。
「ちなみにあなたが看護師をされてらした事は存じております」
その言葉に私はなぜ?と問い返したが、やはりはぐらかされるも、お会いしてお世話になった事があるとだけは答えてくれた。
(…患者かなあ。そんな患者いたっけ?)
そんな疑問をよそに、電話の向こうからはちょっといいですか?という声が聞えて来た。
「あのですね、元の世界に帰りたいですか?」
「え?!私死んだんじゃなかったんですか?!」
「大丈夫ですよ」
(なんかいまいち会話がかみ合ってないような)
とツッコミを胸の内で入れつつも、彼女の提案に乗るかどうかを慎重に見極めていく。
確かに元の世界に戻れるなら生活面ではそちらの方がメリットが大きい。仕事はデメリットではあるがやはり文明の発達に差があるのを考えると、現代の方が私にとっては都合が良い。
(だけど…)
サリオスとは二度と会えなくなる。かもしれない。というかサリオスは漫画のキャラクターなので、会えなくなる可能性の方がずっと高いんじゃないか。
それは気が引けるし、二度と会えなくなるならこの世界でずっといたい。
こればかりは相手に聞いてみないと分からないので質問してみる事に決めた。
「あの、元の世界に戻ったらサリオスとは会えなくなるんですよね?」
「いや、そんな事は無いですよ」
「はい?」
そんな事は無い。という言葉が、頭の中で大きく響いている。
「どういう事ですか?」
「そのままの意味です。元の世界でもサリオスと暮らす事は出来ますよ」
(暮らすって…漫画のキャラクターとして?)
「漫画のキャラクターとして、ですよね?」
「いえ、普通に人として暮らす事も可能です」
「えっ」
つまりはサリオスが漫画のキャラクターから人になるかもしれないという事である。
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