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第五十九話 ギリアを胸に
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「少し、考えさせて欲しい」
サリオスはひねり出すようにそう告げると、紅茶を一口飲み込み、ティーカップを持って静かに椅子から立ち上がる。
「済まないがしばらく1人にさせてくれないだろうか」
「…分かりました」
私はそう言う他無かった。1人ぽつんと残された私もティーカップを持って自室に戻る事にした。
到着すると部屋の扉の鍵を閉めて、ベッドの上に座る。
「はあ…」
(そりゃ、そうなるよな)
胸の中がどうにも落ち着かない。背中も同じだ。どこか痛くて冷たくて寒い感覚が胸の奥の奥からとめどなく溢れ出ている。
(もしかして嫌われた…?私、マーレじゃないから?マーレを名乗っていたから?)
紅茶の水面に映っている自分の顔が、これまで見てきた自分の顔の中でも一番醜く見えてしまう。
「はあ…」
頭の中ではマイナス、ネガティブ、不安といった内容の言葉がぐるぐる回りだして止まらない。
その流れを止めたいのだが、どう止めたら良いのだろうか。
私は水面に映る自分の顔をかき消すように、紅茶を全て飲み干すと、立ち上がって、近くの小さな棚の上にティーカップを置いた。
ガシャン
その時、私のスマホが服のポケットから落ちた。音を立ててカーペットの上に落ちたスマホを慌てて拾い上げる。
「わ…」
幸い、スマホのどこにもヒビや傷は入っていなかった。試しにスマホの電源を入れると、問題無く反応する。
「良かったあ…」
そして何事も無かったかのように、「ギリアを胸に」のサリオスのイラストが画面には表示されていた。
「あ」
(サリオスくん…)
推しの姿が描かれたイラスト。そのイラストを見て、広告で彼と出会ってからずっと彼の事を考えて来た事が頭の中で改めて浮かび上がった。
(そうだ…)
サリオスには幸せになってほしい。サリオスには主役のマーレとくっついて幸せになってほしい。出番もあってほしい。しかしそれは漫画の中では叶わなかった。
だから私はマーレに転生した時、マーレとして振る舞った。サリオスとくっつきたくて、その為に精力剤を盛ったりクラウドやカーティスには冷たく接した。
サリオスには、マーレとくっついてほしかったのだ。
サリオスはひねり出すようにそう告げると、紅茶を一口飲み込み、ティーカップを持って静かに椅子から立ち上がる。
「済まないがしばらく1人にさせてくれないだろうか」
「…分かりました」
私はそう言う他無かった。1人ぽつんと残された私もティーカップを持って自室に戻る事にした。
到着すると部屋の扉の鍵を閉めて、ベッドの上に座る。
「はあ…」
(そりゃ、そうなるよな)
胸の中がどうにも落ち着かない。背中も同じだ。どこか痛くて冷たくて寒い感覚が胸の奥の奥からとめどなく溢れ出ている。
(もしかして嫌われた…?私、マーレじゃないから?マーレを名乗っていたから?)
紅茶の水面に映っている自分の顔が、これまで見てきた自分の顔の中でも一番醜く見えてしまう。
「はあ…」
頭の中ではマイナス、ネガティブ、不安といった内容の言葉がぐるぐる回りだして止まらない。
その流れを止めたいのだが、どう止めたら良いのだろうか。
私は水面に映る自分の顔をかき消すように、紅茶を全て飲み干すと、立ち上がって、近くの小さな棚の上にティーカップを置いた。
ガシャン
その時、私のスマホが服のポケットから落ちた。音を立ててカーペットの上に落ちたスマホを慌てて拾い上げる。
「わ…」
幸い、スマホのどこにもヒビや傷は入っていなかった。試しにスマホの電源を入れると、問題無く反応する。
「良かったあ…」
そして何事も無かったかのように、「ギリアを胸に」のサリオスのイラストが画面には表示されていた。
「あ」
(サリオスくん…)
推しの姿が描かれたイラスト。そのイラストを見て、広告で彼と出会ってからずっと彼の事を考えて来た事が頭の中で改めて浮かび上がった。
(そうだ…)
サリオスには幸せになってほしい。サリオスには主役のマーレとくっついて幸せになってほしい。出番もあってほしい。しかしそれは漫画の中では叶わなかった。
だから私はマーレに転生した時、マーレとして振る舞った。サリオスとくっつきたくて、その為に精力剤を盛ったりクラウドやカーティスには冷たく接した。
サリオスには、マーレとくっついてほしかったのだ。
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