あやかしとシャチとお嬢様の美味しいご飯日和

二位関りをん

文字の大きさ
9 / 130

第9話 ブリの煮付け②〜刺し身もどうぞ〜

しおりを挟む
 私は光さんへ網からブリを出しながらお礼を言った。ブリは1匹だけ入っていたが思ったより重い。

「ありがとう!」
「おうよ!」
「はい、これ網ね」

 光さんへ自前の網を返すと、彼は網を咥えて甥っ子と一緒に沖合へと泳いでいった。彼の泳ぐ速さはとても速い。

「あっという間に遠くに行っちゃった……」

 私はブリを抱えながら沼霧さんを大きな声で呼んだ。庭からやってきた沼霧さんが小走りでこちらへと駆け寄って来る。

「これ、光さんから!」
「あらっブリですか」

 結局沼霧さんにブリを運んでもらったのだった。沼霧さんは軽々とブリを運ぶ。

(私が無力なだけか……)

 ちょっと気分は落ち込んだが、まあ仕方ない。ブリを1匹丸ごとさばいて下処理をするのも、沼霧さんがやってくれる事になった。

「これだけ新鮮なら、お刺身でもいけますね」
「後は、煮つけにもしたいかな」
「それは良いですね。じゃあ準備していきますね。下処理が終われば呼びに行きます」

 私は一度、自室に戻る。それにしても母親の姿が見えない。買い物にでも行ったのだろうか。
 すると食卓に紙が1枚置かれてあった。母親が書いた買い物表。おそらくは忘れてしまったのだろう。

(まあ、いいか)

 別に忘れても大丈夫だろう。また行けばいいし。それに父親からの仕送りもある。食材には今の所、困ってはいない。
 少し経って母親が居間に戻ってきた。

「ただいま」
「お母さんどこ行ってたの?」
「これ。近所の人から花を貰ってね。今から生けるつもり」

 母親が持っていたのは椿の枝だった。赤い蕾がいくつかついている。

「綺麗だね。もうすぐ咲きそうかな」
「そうね。この白い花瓶にでも生けようかしら」

 母親がちゃちゃっと花瓶に椿を生けて、玄関の棚の上に置いた。確かに白い花瓶に赤い蕾が良く映えている。

「そろそろ夕食出来ますよーー」
「はい!」
「千恵子さん。ブリ切ってください」

 沼霧さんに頼まれ、私は台所の流しで手を洗ってから包丁を握る。

「薄く切ってください」
「分かった」

 すーっとゆっくり包丁を入れていく。思ったよりも包丁が通りやすい身だ。

「こんな感じ?」
「ええ!大丈夫です!」

 切り終わると、おつくり用のお皿に並べて完成となる。ブリの煮つけと麦ごはんも用意してこれから昼食だ。

「ではいただきます」

 正座してまずはお刺身から頂く。脂っこさがそこまで主張しておらず、食べやすい。ブリの煮つけはほろほろと身が柔らかくて、更に醤油と生姜が合わさったこの味は素材の味はそのままに、麦ごはんが進む味わいになっている気がする。

「美味しい!」

 こうして、昼食はあっという間に食べ終えたのだった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

いたずら妖狐の目付け役 ~京都もふもふあやかし譚

ススキ荻経
キャラ文芸
【京都×動物妖怪のお仕事小説!】 「目付け役」――。それは、平時から妖怪が悪さをしないように見張る役目を任された者たちのことである。 しかし、妖狐を専門とする目付け役「狐番」の京都担当は、なんとサボりの常習犯だった!? 京の平和を全力で守ろうとする新米陰陽師の賀茂紬は、ひねくれものの狐番の手を(半ば強引に)借り、今日も動物妖怪たちが引き起こすトラブルを解決するために奔走する! これは京都に潜むもふもふなあやかしたちの物語。 第8回キャラ文芸大賞で奨励賞をいただきました! エブリスタと小説家になろうにも掲載しています。

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

白苑後宮の薬膳女官

絹乃
キャラ文芸
白苑(はくえん)後宮には、先代の薬膳女官が侍女に毒を盛ったという疑惑が今も残っていた。先代は瑞雪(ルイシュエ)の叔母である。叔母の濡れ衣を晴らすため、瑞雪は偽名を使い新たな薬膳女官として働いていた。 ある日、幼帝は瑞雪に勅命を下した。「病弱な皇后候補の少女を薬膳で救え」と。瑞雪の相棒となるのは、幼帝の護衛である寡黙な武官、星宇(シンユィ)。だが、元気を取り戻しはじめた少女が毒に倒れる。再び薬膳女官への疑いが向けられる中、瑞雪は星宇の揺るぎない信頼を支えに、後宮に渦巻く陰謀へ踏み込んでいく。 薬膳と毒が導く真相、叔母にかけられた冤罪の影。 静かに心を近づける薬膳女官と武官が紡ぐ、後宮ミステリー。

【完結】没落令嬢、異世界で紅茶店を開くことにいたしました〜香りと静寂と癒しの一杯をあなたに〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
夜会で父が失脚し、家は没落。屋敷の裏階段で滑り落ち、気づけば異世界――。 王国貴族だったアナスタシアが転移先で授かったのは、“極上調合”という紅茶とハーブのスキルだった。 戦う気はございませんの。復讐もざまぁも、疲れますわ。 彼女が選んだのは、湖畔の古びた小屋で静かにお茶を淹れること。 奇跡の一杯は病を癒やし、呪いを祓い、魔力を整える力を持つが、 彼女は誰にも媚びず、ただ静けさの中で湯気を楽しむのみ。 「お代は結構ですわ。……代わりに花と静寂を置いていってくださる?」 騎士も王女も英雄も訪れるが、彼女は気まぐれに一杯を淹れるだけ。 これは、香草と紅茶に囲まれた元令嬢の、優雅で自由な異世界スローライフ。

【完結】元Sランク受付嬢の、路地裏ひとり酒とまかない飯

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ギルド受付嬢の佐倉レナ、外見はちょっと美人。仕事ぶりは真面目でテキパキ。そんなどこにでもいる女性。 でも実はその正体、数年前まで“災厄クラス”とまで噂された元Sランク冒険者。 今は戦わない。名乗らない。ひっそり事務仕事に徹してる。 なぜって、もう十分なんです。命がけで世界を救った報酬は、“おひとりさま晩酌”の幸福。 今日も定時で仕事を終え、路地裏の飯処〈モンス飯亭〉へ直行。 絶品まかないメシとよく冷えた一杯で、心と体をリセットする時間。 それが、いまのレナの“最強スタイル”。 誰にも気を使わない、誰も邪魔しない。 そんなおひとりさまグルメライフ、ここに開幕。

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari@七柚カリン
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

菱沼あゆ
キャラ文芸
華族の三条家の跡取り息子、三条行正と見合い結婚することになった咲子。 だが、軍人の行正は、整いすぎた美形な上に、あまりしゃべらない。 蝋人形みたいだ……と見合いの席で怯える咲子だったが。 実は、咲子には、人の心を読めるチカラがあって――。

同窓会に行ったら、知らない人がとなりに座っていました

菱沼あゆ
キャラ文芸
「同窓会っていうか、クラス会なのに、知らない人が隣にいる……」  クラス会に参加しためぐるは、隣に座ったイケメンにまったく覚えがなく、動揺していた。  だが、みんなは彼と楽しそうに話している。  いや、この人、誰なんですか――っ!?  スランプ中の天才棋士VS元天才パティシエール。 「へえー、同窓会で再会したのがはじまりなの?」 「いや、そこで、初めて出会ったんですよ」 「同窓会なのに……?」

処理中です...