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第113話 ひな祭りの夕食
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今日は3月3日。ひな祭りの日だ。寒さは3月に入った事もあり大分マシになったが、天気は曇り。風はやや強く波も少し荒れている。
(お赤飯とお吸い物作らなきゃだ)
朝食後、母親と篝先生はいつものように外出する。母親が道中で料理に必要な食材を入手してきてくれる事になった。
「はまぐりあるかしらねえ」
「去年無かったし、あるといいけど。あとお赤飯じゃなくてちらし寿司にしようと思って」
母親からの言葉に私はてっきりお赤飯を炊くつもりだったのであれ?と答える。どうやら母親曰くぬらりひょんはちらし寿司の方が良いという考えのようだ。
(まあ、いっか)
「じゃあ、ちらし寿司作るのね?」
「そうよ。千恵子、はまぐり無かったらどうする?」
「お母さんに任せる」
という会話をして、母親は別荘から目的地へと向かっていった。
「さあ、準備進めておきますか」
ひな祭りの食事は夕食に頂く。なので先に用意出来るものは、しておきたい気分なのだ。
「沼霧さん、桶どこだっけ」
「こちらです」
戸棚の最下層に木桶がある。ちらし寿司を作る時に使う木桶を出して、軽く水洗いしておく。
今準備出来るのは……これくらいか。
その後、母親が帰宅してきた。
「ただいまぁ。千恵子、はまぐりあったわよ!」
「ほんと?!」
買い物袋の中に、はまぐりの入った袋が確かにあった。
「やった!」
「じゃあ、これでお吸い物ね」
夕食が決まった。そして昼食は余った麦ごはんをおにぎりにして、漬け物と一緒に頂く。
「むっ……千恵子姉ちゃん」
「何?」
「晩ごはんはちらし寿司だよね?」
「そうだよ。ちらし寿司。後はお吸い物!」
「楽しみだあ」
昼食後、一休みしてからいよいよひな祭りの夕食に向けての準備を進めていく事になる。
ぬらりひょんは、いつも食事を取る居間の隣の部屋に置かれた雛人形をじっと見つめたり、小物に触れたりしていた。
(気になるよね、やっぱ)
「ぬらりひょん、人形気になる?」
ぬらりひょんの手には三人官女の内の1人が持つ、金色のひしゃくが握られていた。
「これ綺麗」
「そうだね」
「ずっと持ってたい」
ぬらりひょんはそう言って、金色のひしゃくをずっと右手でつまむようにして持って眺めていたのだった。その姿に私は自身の幼少期を重ね合わせる。
(お屋敷にあった雛人形はすごかったなあ)
お屋敷に飾られた雛人形はそれはそれは豪華な者だった。お内裏様とお雛様、三人官女に五人囃子に右大臣と左大臣。とても大きくて装飾や小物も豪華なものだった。
(今でも屋敷の中にあるかなあ)
私は牛車の小物や、刀の小物が特に好きだった。右大臣や左大臣らが指している刀を抜いてじっくり刀身を眺めたりしたものだ。時々母親に見つかって早く元に戻すよう、叱られた事もあったっけ。
(また、お屋敷の雛人形も見たいなあ)
ぬらりひょんを遠くから眺め、台所に入ると既に沼霧さんが夕食の準備に入っていた。お釜の中に研いだお米を入れて炊こうとしている場面に出くわす。
「あっ、千恵子さん」
「今から炊くの?」
「はい! はまぐりは砂抜きしてて煮しめは材料を切ったので、これから炊いてもらっていいですか?」
「了解」
まな板の上には刻んだ干ししいたけとれんこんがあった。それらを鍋に入れて煮詰めていく。
味付けはしょうゆと砂糖、みりん少しだ。これらの調味料は父親が仕送りで送ってきてくれるので本当にありがたい。
「出来たかな」
程よく煮詰まった所で火を止めて、少し冷ます。麦ごはんが炊けた所で、桶にごはんを入れて団扇を仰いで冷ましながら具材と酢を入れてしゃもじでかき混ぜていく。
「良い匂いがしますねえ」
「ほんと?」
沼霧さんにそう言われて私も辺りの空気の匂いを嗅いでみる。確かにしょうゆを下地とした、香ばしい良い匂いがほのかに匂う。
「これで後はお皿に盛るだけだね」
「はい、はまぐりの砂抜きもそろそろ良い頃合いですかね」
最後にはまぐりが入ったお椀の中から水を出し、お吸い物を作る。これで夕食の準備は完成だ。
「出来た出来たっ!」
食卓を台拭きで拭いたりお皿を並べ、後は食べるだけの状態になる。だが、篝先生はまだ帰ってこない。
「篝先生、帰って来ないのかな」
「どうでしょう……篝先生の分台所に置いておきましょうか」
「そうしよっか」
篝先生の分のちらし寿司とはまぐりのお吸い物をよそい、台所に置いて食器で蓋をしておいた。
「では、いただきます!」
両手を合わせて挨拶をしてから、夕食の食べ始める。最初にはまぐりのお吸い物を1口ずずっと飲み干すと温かさとしょうゆを下地にした少し薄目の味わいが口の中に広がっていく。
「ああ、温まる……」
ちらし寿司はもちもちとした食感に、根菜類のしゃきしゃきとした歯ごたえが合わさりとても食べ応えがある。
酢の風味もしっかりと効いている。
(いつもは海鮮類もあるけど、こういう具材少なめなのもいいな)
誕生日に作るちらし寿司は、いくらといった海鮮の具材も使っていたが、今回はレンコンと干ししいたけのみ。単純明快なのも味が出て良いと、ちらし寿司を咀嚼しながら感じたのだった。
「ごちそうさまでした」
篝先生が帰宅したのは20時頃の事だった。お吸い物を温め直してちらし寿司と共に差し出すと、とても喜んで頂けのだった。
(お赤飯とお吸い物作らなきゃだ)
朝食後、母親と篝先生はいつものように外出する。母親が道中で料理に必要な食材を入手してきてくれる事になった。
「はまぐりあるかしらねえ」
「去年無かったし、あるといいけど。あとお赤飯じゃなくてちらし寿司にしようと思って」
母親からの言葉に私はてっきりお赤飯を炊くつもりだったのであれ?と答える。どうやら母親曰くぬらりひょんはちらし寿司の方が良いという考えのようだ。
(まあ、いっか)
「じゃあ、ちらし寿司作るのね?」
「そうよ。千恵子、はまぐり無かったらどうする?」
「お母さんに任せる」
という会話をして、母親は別荘から目的地へと向かっていった。
「さあ、準備進めておきますか」
ひな祭りの食事は夕食に頂く。なので先に用意出来るものは、しておきたい気分なのだ。
「沼霧さん、桶どこだっけ」
「こちらです」
戸棚の最下層に木桶がある。ちらし寿司を作る時に使う木桶を出して、軽く水洗いしておく。
今準備出来るのは……これくらいか。
その後、母親が帰宅してきた。
「ただいまぁ。千恵子、はまぐりあったわよ!」
「ほんと?!」
買い物袋の中に、はまぐりの入った袋が確かにあった。
「やった!」
「じゃあ、これでお吸い物ね」
夕食が決まった。そして昼食は余った麦ごはんをおにぎりにして、漬け物と一緒に頂く。
「むっ……千恵子姉ちゃん」
「何?」
「晩ごはんはちらし寿司だよね?」
「そうだよ。ちらし寿司。後はお吸い物!」
「楽しみだあ」
昼食後、一休みしてからいよいよひな祭りの夕食に向けての準備を進めていく事になる。
ぬらりひょんは、いつも食事を取る居間の隣の部屋に置かれた雛人形をじっと見つめたり、小物に触れたりしていた。
(気になるよね、やっぱ)
「ぬらりひょん、人形気になる?」
ぬらりひょんの手には三人官女の内の1人が持つ、金色のひしゃくが握られていた。
「これ綺麗」
「そうだね」
「ずっと持ってたい」
ぬらりひょんはそう言って、金色のひしゃくをずっと右手でつまむようにして持って眺めていたのだった。その姿に私は自身の幼少期を重ね合わせる。
(お屋敷にあった雛人形はすごかったなあ)
お屋敷に飾られた雛人形はそれはそれは豪華な者だった。お内裏様とお雛様、三人官女に五人囃子に右大臣と左大臣。とても大きくて装飾や小物も豪華なものだった。
(今でも屋敷の中にあるかなあ)
私は牛車の小物や、刀の小物が特に好きだった。右大臣や左大臣らが指している刀を抜いてじっくり刀身を眺めたりしたものだ。時々母親に見つかって早く元に戻すよう、叱られた事もあったっけ。
(また、お屋敷の雛人形も見たいなあ)
ぬらりひょんを遠くから眺め、台所に入ると既に沼霧さんが夕食の準備に入っていた。お釜の中に研いだお米を入れて炊こうとしている場面に出くわす。
「あっ、千恵子さん」
「今から炊くの?」
「はい! はまぐりは砂抜きしてて煮しめは材料を切ったので、これから炊いてもらっていいですか?」
「了解」
まな板の上には刻んだ干ししいたけとれんこんがあった。それらを鍋に入れて煮詰めていく。
味付けはしょうゆと砂糖、みりん少しだ。これらの調味料は父親が仕送りで送ってきてくれるので本当にありがたい。
「出来たかな」
程よく煮詰まった所で火を止めて、少し冷ます。麦ごはんが炊けた所で、桶にごはんを入れて団扇を仰いで冷ましながら具材と酢を入れてしゃもじでかき混ぜていく。
「良い匂いがしますねえ」
「ほんと?」
沼霧さんにそう言われて私も辺りの空気の匂いを嗅いでみる。確かにしょうゆを下地とした、香ばしい良い匂いがほのかに匂う。
「これで後はお皿に盛るだけだね」
「はい、はまぐりの砂抜きもそろそろ良い頃合いですかね」
最後にはまぐりが入ったお椀の中から水を出し、お吸い物を作る。これで夕食の準備は完成だ。
「出来た出来たっ!」
食卓を台拭きで拭いたりお皿を並べ、後は食べるだけの状態になる。だが、篝先生はまだ帰ってこない。
「篝先生、帰って来ないのかな」
「どうでしょう……篝先生の分台所に置いておきましょうか」
「そうしよっか」
篝先生の分のちらし寿司とはまぐりのお吸い物をよそい、台所に置いて食器で蓋をしておいた。
「では、いただきます!」
両手を合わせて挨拶をしてから、夕食の食べ始める。最初にはまぐりのお吸い物を1口ずずっと飲み干すと温かさとしょうゆを下地にした少し薄目の味わいが口の中に広がっていく。
「ああ、温まる……」
ちらし寿司はもちもちとした食感に、根菜類のしゃきしゃきとした歯ごたえが合わさりとても食べ応えがある。
酢の風味もしっかりと効いている。
(いつもは海鮮類もあるけど、こういう具材少なめなのもいいな)
誕生日に作るちらし寿司は、いくらといった海鮮の具材も使っていたが、今回はレンコンと干ししいたけのみ。単純明快なのも味が出て良いと、ちらし寿司を咀嚼しながら感じたのだった。
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