ずっと片思いしていたエリート外科医の溺愛は妄想と違って淫らな模様です

二位関りをん

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第10話 勤務先へ

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 お試し契約を交わして1週間が経過した。あれから秀介は夜勤だったり夜遅くに帰宅したり多忙な日々を送っている。それでも秀介から毎日不健全な接触を受けては彼の快楽に飲まれるのが続いていた。

「っし、じゃあいってくるわ」

 いつもよりも早く起床し、ブランドものな白いトレーナーと黒いズボンを身に着けた秀介は、大きな黒いリュックサックを背負い玄関のドアを開ける。

「いってらっしゃい」
「今日、緊急オペが入らなければ20時には帰れるから。また連絡する」

 そう言って咲良の額にキスを落とす秀介は、初めて恋に落ちた時と変わらずきらきらと輝いて見えた。
 扉が閉まり、部屋に咲良だけとなると静かな空気に包まれる。

「あっ朝ご飯の残り食べないと」

 まだ自分の食事が半分ほど残っているテーブルに戻った咲良は箸を掴んでご飯をかきこんだ。
 ちなみに今朝の朝食は全て秀介が作ったもの。野菜の余りを切り刻んだ具だくさんの味噌汁と、ねぎを入れた卵焼きにご飯。そして小粒の納豆に、茹でたサケの切り身が並ぶ。
 ちなみにサケは秀介の同僚から頂いた品物で骨を全て取ってある。同僚の友人が水産加工会社を経営しており、新発売の商品なのだとか。

(こんなに先輩に作ってもらって申し訳ない……けど、サケ食べやすいな)

 食事を終えて片付けを済ませ、少し休憩したいと椅子に腰かけた時だった。靴箱の上に黒い布製の手提げ袋が置かれているのが視界に飛び込んでくる。

「あっあれ! 先輩のお弁当だ!」

 慌てて手提げ袋の中を確認すると、秀介と咲良がおかずなどを詰め込んだ弁当が入っていた。

「どうしよ、先輩の勤務先まで届けにいかないと……!」

 秀介の勤務先である大学病院の住所をスマホで調べ、経路を確認した後、着替えてナチュラルにメイクを施し、ロングヘアの髪を梳いた

「これで、大丈夫だよね?」

 見た目を洗面台でさっと確認すると、弁当と貴重品をわきに抱えて部屋を後にした。

「咲良さん、おはようございます。いかがなさいましたか?」
「あっ松原さんおはようございます! 実は、その……!」

 朗らかな笑みを見せる松原へ事の次第を伝えると、彼は冷静さを崩さずにタクシーを呼んでくれた。
 ここから大学病院まではバスか電車の公共交通機関を使用しないといけない。その手間が省ける点ではタクシーは便利と言える。

 タクシーに乗り込み大学病院に到着した咲良を待ち受けていたのは、病院らしからぬラグジュアリーなホールと、あちこち行き交うたくさんの人々だった。
 天井からは黄金色のシャンデリアが温かな輝きを放っており、咲良から見て右側にある大きな総合受付では多くの人々が列を作っている。
 左側にあるコンビニはとにかく人の出入りが激しく、全体的にちょっとした高級感のあるショッピングモールのようだ。
 
「うっ……」

 突如視界がぐにゃりと曲がるような、そんな感覚と騒がしさが脳内で共鳴する。咲良はそれらに耐え切れず座り込んでしまった。

(こういうの慣れないからか気持ち悪い……)
「いかがなさいました?」

 たまたま近くを通りがかった中年の女性看護師が声をかけてきた。
 少しだけ安堵感を覚えた咲良はほっと息を吐く。しかし話そうとすると今度は緊張感が喉奥から迫り上がってきた。

「えっと、春日……先生はどちらにいらっしゃいますでしょうか? 私は、その……」
「もしかして奥様でいらっしゃいますか!?」

 突如柔和な雰囲気が一変する。咲良はえっ!? と肩をビクつかせながら看護師を見ると、彼女は目をまん丸に見開いていた。

「すぐに春日先生お呼びします!」
(なんだか大事になってきた!?)

 しばらくして白衣に水色のスクラブ姿の秀介が、白衣にスーツ姿の男性医師達数人を引き連れて走って来た。
 と、同時に周囲にいた人達の目線が秀介へ釘付けとなる。

「咲良! どうしたんだ?!」
「あっ先輩……! ごめんなさい、えっとお弁当忘れてたから、持ってきたんですけど……」

 申し訳なさが胸いっぱいに広がる。そんな咲良が抱きかかえていた手提げ袋に秀介が触れた。

「それ、探してたんだよ! ああ、持っていくの忘れてただけかぁ……よかった~~」
「よかったです! こちらどうぞ」
「ありがとうな咲良」

 手提げ袋ごと秀介に手渡した瞬間、彼は片手で咲良を抱き寄せ、更にはちゅ、と口づけを交わしてくる。

「!」

 針にあちこち刺されるような視線を覚えたので秀介の胸に手を当てて距離を取ろうとしていたのと同時に、咲良から逃げるように秀介の唇が離れる。

「ちょっと! こ、こんな所で……!」
「いいだろ、これくらい」
「いやいや! 恥ずかしいですって!」

 周囲から黄色い歓声が沸き起こってはいるが、それも全て羞恥心によって針に変換されては咲良の身体を突き刺していく。

「ああ、紹介しよう。俺の妻だ」
「えっ」

 今度は右肩を抱き寄せられた。男性医師や看護師達は皆揃って目を満月のように開いて驚いている。

「おお~!」
「素朴でかわいらしいお方ですね」
「確か春日先生と同じ学校の方、だったんですよね?」
(ちょ、どこまで話してたの?!)

 質問攻めにされて動揺が止まらない中、秀介はちらりと視線を落としてくる。

「咲良、これから医局行かないか? 皆に君を紹介したいと思ってる」
「えっええ?! 私、ですか?!」
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